思春期という微妙な年代に入った13歳のブライオニー(シアーシャ・ローナン)の大人になりきれない少女の思考は、一人の男の人生を残酷にも破壊する。
ブライオニーが密かに心を寄せる使用人のロビー(ジェームズ・マカヴォイ)は、姉のセシーリア(キーラ・ナイトレイ)にご執心で、ブライオニーは図書室で二人のあられもない男と女の姿態を見てしまう。ロビーに対して複雑な感情、恋情と憎しみが同居し始める。
いとこのローラ(ジュノー・テンプル)がレイプされたとき、犯人は「ロビーだ」というブライオニーの証言が彼を刑務所へ送った。1939年9月ナチス・ドイツのポーランド侵攻に対してイギリス・フランスが戦線布告、第二次世界大戦が始まった。ロビーは刑務所から一兵卒として出征した。
セシーリアとは、頻繁に手紙のやり取りをして、海辺の青い窓枠の家に一緒に住むことを夢見ていた。
1940年5月ナチス・ドイツ軍の機動部隊にイギリス・フランス軍は、ドーバー海峡のダンケルクに追い詰められた。当時の首相チャーチルが約35万人の兵士を撤退させることにした。ロビーはそのダンケルクにたどり着き救出の機会を待った。
テレビ画面では、作家となっている年老いたブライオニー(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)がインタビューを受けていた。
「この小説は、私の最後の21作目です。脳血管性認知症で言語能力や記憶の喪失、作家としては致命的です。だから完成させました。書かねばならない本を遺作として。おかしなことに私の処女作とも言える作品です。
真実を語ろうと前から決めていました。現実ではロビーは、ダンケルクで敗血症のために死んでいます。姉のセシーリアは、地下鉄駅の配管が空襲で破壊され流れ込んだ水によって溺死しています。最後まで姉とは仲直りできませんでした。だから結末は創作です。せめて作品の中ででも、二人が幸せになって欲しいと思ったからです」
思春期の少女がちょっとした嫉妬や嫌悪で二人の人生の破壊をつぐなうにはあまりにも重い。しかし、どんな方法があるというのか。結局、その人の出来ることしか出来ないだろう。たった一言「私は見た」言葉の恐ろしさに戦慄を覚える。なお、本作は’07アカデミー作品賞とシアーシャ・ローナンの助演女優賞にノミネートされた。
監督
ジョー・ライト1972年ロンドン生まれ。
キャスト
キーラ・ナイトレイ1985年3月イギリス、ミドルセックス生まれ。
ジェームズ・マカヴォイ1979年4月イギリス、スコットランドグラスゴー生まれ。
シアーシャ・ローナン1994年4月ニューヨーク州ニューヨーク生まれ。
ロモーナ・ガライ1982年8月ロンドン生まれ。
ヴァネッサ・レッドグレーヴ1937年1月ロンドン生まれ。
ジュノー・テンプル1989年6月イギリス生まれ。