アイナー・ヴェイナーの体の中で女の部分が蠢動しはじめる。そのきっかけは、妻ゲルダ(アリシア・ヴィカンダー)が描く絵の足のモデルになった時からだった。
本当はアイナー(エディ・レッドメイン)に言わせれば遠い過去からだと言う。今までそれを封印していた。いずれにしてもアイナーが女装するのは夫婦のゲームとなった。
そのときのアイナーは、リリーに変身する。すべての男の目がリリーに集中する。それほど妖しい魅力がリリーにはあった。なぜそれほどまでに男の目を引きついるのだろうか。
ちょっと考えてみた。男の立場から女を見る機会があったアイナーにとって、女の魅力とはどういうものか、またどんな女に男は惹かれるのかがよく分かっていたからだと思う。意外に女自身は自らの魅力を充分に認識していないのではないかとも言える。
そのリリーに言い寄ったのは若いハンサムな男だった。その二人がキスをする場面を見たゲルダの驚き。夫婦の間に冷たい風が吹き込んでくる。
しかし、ゲルダは包容力のある女性だった。リリーに耽溺するアイナー。男を捨てて女になりたい。アイナーは自らの裸を鏡に映しながら女性的所作を繰り返す。
その中の一場面は、今まで観たどの映画にもなかった描写だった。息を呑むというのはこういう場面かと思わせた。言葉で表すのは、猥褻すぎる。ただ、女性への熱望を表現するには的確だと思う。
アイナーは悩むが、ゲルダは本当の愛をアイナーに持っていたんだろう。その実現に協力する。
実在した人物リリー・エルベは、1931年5回目の子宮移植手術により念願の母性を持つことになったが、3ヵ月後拒絶反応により孤独の中で死去する。映画ではゲルダに見守られながら息を引き取る。
この夫婦の愛の物語をデンマークで撮影され、オスカー俳優のエディ・レッドメインと新進のアリシア・ヴィカンダーの熱演によって美しく描かれることになった。
幾多の賞にノミネートされているが、アカデミー賞には助演女優賞(アリシア・ヴィカンダー)、主演男優賞(エディ・レッドメイン)、衣装デザイン賞、美術賞がノミネートされたが、アリシア・ヴィカンダーが助演女優賞に輝いた。
10年前、この原作にニコール・キッドマンが惚れ込み映画化を望み、自らプロデューサーとして名乗りを上げたが実現しなかったという。2014年にトム・フーバーを監督に起用して映画化が決定した。キャストにはニコール・キッドマンの名前はなかったとウィキペディアにある。
しかし、キッドマンはこの映画の完成を喜んだと伝えられる。あの美人のキッドマンがどうしてキャスティングされなかったのか。彼女の唯一の問題点身長にあるのではないか。エディ・レッドメイン身長184センチ。ニコール・キッドマン180センチ。キッドマンにハイヒールは履かせられない。残念! それに年齢も関係するかもしれない。2014年キッドマン47歳。
蛇足ながらもう一つ気づいたのは、スーツの形だ。レッドメインが着るスーツは、スリーピースで体にぴったりとフィットしていて、ズボンも細身になっている。184センチの彼が着るとかなり格好がいい。
現在、巷で見かけるスーツも細身で、映画で描かれる時代が1920年代から30年代となっていることから歴史は繰り返すというべきか。
監督
トム・フーバー1972年10月イギリス、ロンドン生まれ。2010年「英国王のスピーチ」でアカデミー賞監督賞を受賞。
キャスト
エディ・レッドメイン1982年1月イギリス、ロンドン生まれ。2014年「博士と彼女のセオリー」でアカデミー賞主演男優賞受賞。
アリシア・ヴィカンダー1988年10月スェーデン生まれ。
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