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観る方も憂鬱になる「テイエリー・トグルドーの憂鬱」2015年制作 2016年8月熱帯美術館で公開

2017-02-27 15:54:26 | 映画

              
 熱帯美術館ってなんだろう? 調べてみるとテレビやPCに動画配信のようだ。こういう映画をよく作ったなあと思わずにいられないが、カンヌ国際映画祭で主演のヴァンサン・ランドンが男優賞を受賞している。

 従順な妻(カリーヌ・ドゥ・ミルベック)と自閉症の息子(マチュー・シャレール)を抱えて50歳を過ぎた失業中のテイエリー・トグルドー(ヴァンサン・ランドン)の就職と退職を描く。

 そこにはフランスというよりも世界中の人々に見られる苦悩を描出している。ここに表れる事柄は、まるで日本でもある。フランスの職安なのだろう、クレーン操縦士の職業訓練を受けたが実際は経験者を雇用側は求める。そういう事情を知っていながら、この訓練を受けさせるのは可笑しいのではないか? とトグルドーは文句たらたら。

 ここでこの映画の特異性がある。それは、文句を言うトグルドーにぴたりと焦点を合わせ、職安職員はちょこっと写るだけ。こういうカメラ・ワークは一貫している。

 食事風景はあるが夫婦の会話はない。その食事風景もトグルドーをアップにして食べ物を口に運ぶ、その向こうに妻がいるというショットだ。

 ようやく就職できた。本来なら夫婦が喜ぶシーンがあるが、この映画にはない。鏡に向かってネクタイを締めるトグルドー。シーンが変わるとそこはスーパーマーケットの店内。スーパーマーケットを表す外観のショットがない。とにかく余計なものはすべてそぎ落としたという感じ。

 トグルドーは、スーパーマーケットの保安要員として働き始める。万引きの監視だ。モニター画面を見たり、店内を巡回したりするのが仕事だ。若者も高齢者も万引きをする。みんな口に出すのは一様に「思わず手が出てしまった。ごめん」初犯は代金を払えば無罪放免。

 それに加え、従業員の不正も見逃すことが出来ない。 客からの割引クーポン券不正取得、ポイント稼ぎなどだ。不思議なのは割引クーポンの場合、その従業員はくず籠に捨てたいう。調べてみるとクーポンはない、追求するとボケットからクーポンを出した。

 捨てるというのも変だし、レジは精算する筈。客に渡すレシートと同じもので売上表があるはず、クーポンも精算時に添付すれば不正取得は出来ない。くず籠に捨てたと言い逃れをするのはどうも管理体制が不備のせいもあるかもしれない。なんて思ったりする。

 毎日毎日こういう万引きや不正を暴き続けるのが嫌になったのか、ある日突然トグルドーは仕事を辞める。「おいおい、もう50を過ぎているし、家族もいるんだぞ!」と駐車場を出て行くトグルドーに言ってやりたくなった。

 映画から見るフランスといえば大げさかもしれないが、スーパーマーケットは、まさにコストコ方式。長いカウンターに商品を置きレジが済んだ商品をカウンターに置いて客が袋に入れる。いつも行くイオンとはまるで違う。イオンはバカ丁寧といってもいい。

 トグルドーはキャビンを売りに出した。案内してキッチンを見せる。このキッチンがかつての公団住宅とそっくり。ベニヤ板の戸がついているのもそっくり。フランスも国土がそう広くないし、こじんまりとした街路が多いのは日本と同じとも言える。それでもこの国の誰かに言われなかったか「ウサギ小屋」の日本と……
 
監督
ステファヌ・ブリゼ1966年10月フランス生まれ。

キャスト
ヴァンサン・ランドン1959年7月フランス生まれ。
カリーヌ・ドゥ・ミルベック出自不詳。
マチュー・シャレール出自不詳。

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