「どうして僕らは人の記憶を疑うのに、自分の記憶を疑おうとしないのだろう」と主人公スティーヴン・エリオット(ジェームズ・フランコ)は呟く。
この映画は、父と子の不仲がテーマだが、その原因にお互いの記憶の違いに求めている。父ニール・エリオット(エド・ハリス)と子スティーヴンには、二つの忌まわしい記憶がある。
一つはスティーヴンの髪の毛を剃ったこと。二つ目は、手錠をかけたこと。子から見れば人格の全否定にほかならない。父を憎むのも無理もない。
後にダメ親父の告白によれば「髪の毛を剃ったことについては、お前が空き家になった家で勝手に暮らしていた頃、俺は金に困っていた。ようやく買い手を見つけて契約前に家を見せる日に、お前は家をメチャクチャにした。何千ドルも損をした。頭に来てお前の髪を剃ったんだ。最悪の出来事だった。
そして手錠だ。お前が路上生活をしていて見つけて声をかけたら”これから自殺する”と言った。空き家につれて帰ると、お前は暴れて手首を切ろうとしたから、暖房のパイプに手錠でつないだ。30分後様子を見ると意識を失っていた。手錠を外して好きに生きろと言った」さらに「何度か謝ろうとしたが、いつも失敗した」
昔の出来事から30年は経っているのだろう。作家になったスティーヴンは、読書会で自分の生い立ちを語った。亡き父のことも含めて。
ところが死んだはずの父が現れて「お前は嘘つきだ」と罵倒する。これでは和解なんて出来るはずもない。
映画は都合よく出来ていて最後の告白以来やっと世間一般の父と子に戻る。考えてみれば記憶の違いなんてざらにあることで、いわゆる見解の相違は日常茶飯事だ。それをテーマに持ってきた割に訴えるものがない。劇場未公開も頷ける。
こういう映画でも出演している俳優を見ているとプロだというのがわかる。エド・ハリスの告白の場面では、涙ぐむシーンがあるが、あれなんか何かを想像しないと出来ない気がする。悲しい事件を思い浮かべるとか。もし、身内に不幸があったのならそれを思い出すとか。いずれにしてもそういうテクニックは心得ているのだろう。
監督
パメラ・ロマノウスキー出自不詳
キャスト
ジェームズ・フランコ1978年9月カリフォルニア州生まれ。
エド・ハリス1950年11月ニュージャージー州生まれ。
アンバー・ハード1986年4月テキサス州オースティン生まれ。
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