猫とマンガとゴルフの日々

好きな物を題名に↑ 最近はゴルフとグルメお出かけ主体に。以前は1960年~70代マンガを紹介していました。ネタバレ有り。

西谷 祥子 「飛んでゆく雲」

2007年06月04日 13時24分30秒 | マンガ家名 な行
             写真は夜さんからお借りしている西谷コミックスの中から表紙


 近頃季節が良くなったので、晴耕 (ゴルフ) 雨読 (マンガ) の生活の中で晴耕 (芝刈りとも言いますなー) ばかり熱心に出かけており、雨読がおろそかになっています
 やっと一つ読み終えたのがこれ。1巻ですが、内容濃かったのでじっくり読みました。
 
 初出は  前編 別冊セブンティーン 昭和46年 (1971)2月号 
        後編 別冊セブンティーン 昭和46年 (1971)3月号 

 時代は、そもそも源平がいがみ合うキッカケになった保元・平治の乱の頃。先日読み終えた 萩尾 望都氏の 「あぶない丘の家」 第3話 「あぶない壇ノ浦」 の義経・頼朝兄弟のお父さん、伯父さんたちと兄弟、いとこ達のお話。萩尾さん、この話もきっと読んでいたことでしょうね。

 義経達の父親 源 義朝(よしとも) は、平 清盛に平治の乱で破れ斬首、長男の通称 悪源太(鎌倉源太とも) 源 義平(よしひら) も一時は落ち延びますが、平 清盛 の暗殺を謀って失敗し捕まって斬首されます。この人、頼朝の同母の一番上のお兄さんです。(違うと言う説も有り)
 平治の乱では、13歳の頼朝も初陣で出陣し、負けて捕らえられたものの、平 清盛の継母 池禅尼(いけのぜんに) の命乞いで伊豆の蛭ヶ小島 (ひるがこじま) に流され、命は助けられたのです。清盛の子供達は後々、この時殺しておけばと後悔したでしょうね~。
 2005年NHK大河ドラマの時には、頼朝が池禅尼の早世した息子(平 家盛)に似ていたから池禅尼は必死で助けたとか言う話になってました。
 
 ところで、この 悪源太 源氏の嫡男にふさわしく幼少より気性荒く、叔父の 源 義賢(木曽 義仲の父) を滅ぼして、付いたあだ名が 悪源太 と言うのですから、20歳で殺されなければどんな活躍をして後世に名を残したものでしょう。残念ですが、もっともこれは鎌倉時代前期に成立した軍記物語 「平治物語」 に拠りますから、頼朝かもしくは幕府お抱え編集者が頼朝の憧れのお兄ちゃん、源氏の頭領 源 義平 を強くかっこよく書かせた、とも考えられます。いつも歴史書は勝者のものですから。

 これはいづれ 竹宮 惠子氏の 「吾妻鏡」 (鎌倉幕府の歴史書が原作) も読んでみたくなりました。

 このマンガも大体大筋はこの 「平治物語」 と 「吾妻鏡」 をそのままマンガにしたようなところが有りますが、中盤から悪源太の子、天寿丸 の話は後世の小説を原作としているか、西谷氏の創作が入っていると思われます。
 現実にいた土豪の名前や歴史書に出てくる事件などもちゃんと描かれていてまったくの創作とは思えませんが、悪源太の子が生きていて歴史に現れたという記述は、現在多少なりと認められている歴史書にはないと思って、誰かの小説だと思い検索しましたが良く分かりませんでした。原作があって、知っている方教えてください。
 歴史の隙間を埋めた創作でしょう。歴史小説やマンガはそこが面白いのですが。


 あらすじ 

 悪源太が捕らえられ、斬首されたとき天寿丸はまだ母、真芝姫のお腹の中にいました。悪源太が駆け落ちして妻とした真柴姫は朝敵となった夫の忘れ形見が殺されるのを恐れ、悪源太の家来 山木 通泰(みちやす) に天寿丸を託しますが、天寿丸の生死も分からなくなります。自分は尼になって夫と天寿丸の菩提を弔う覚悟で尼寺に入りました。
 何とか追っ手の目を逃れ、元藤原氏ゆかりの侍の住職 道心 に2歳まで育てられた天寿丸は武士の子らしく元服をさせたいと思う住職によって土豪 落合綱行  に預けられます。遅く出来た自分の子として 綱行 に可愛がられ育った天寿丸。5歳で早めの元服をし、綱盛 と名乗り義理の兄の子、楚々とした 美稲 (うましね) 姫と男勝りで自分から 鬼姫 と名乗る 紅子 (こうこ) とともに文武両道に秀で育ちます。

 一方、悪源太の家来で何度も死にそうな目に遭いながらも天寿丸を寺に預けた  山木 通泰 はその後も苦労しながら 天寿丸 を見守り、いつの日にか源氏の旗を挙げる日を夢見ています。自分の妻も殺され、なんとか一人息子の 梧桐丸 (ごどうまる) を鍛えてその日に備えます。なにしろ、天寿丸 (綱盛) は源氏の頭領の息子なのです。各地に散らばってその日を待っている源氏一党が決起したときには必ずやそのとなって活躍するはずの人なのですから。
 
 紅子と梧桐丸はともに技を磨きあい、天寿丸は美稲と愛を育み育って行きます。しかし美稲に横恋慕した平氏の御曹司のために美稲は京に召され、やっと源氏の嫡流と知らされた天寿丸は時すでに遅く、平氏に味方する落合一族として滅び行く平氏の軍勢の中にありました。

 源氏でもなく、平氏でもないと悩む天寿丸は一の谷、生田の森、屋島、壇ノ浦と死に場所を探して戦うが死に切れず、最後に子供の時預けられた僧 道心 に出会い出家します。母が天寿を全うするようにと願ってつけた天寿丸という名の通り何の欲心もなく生きるつもりでした。先に美稲も壇ノ浦で平氏の女として海に消えていたのです。
 同じ頃、梧桐丸と紅子もともに手を取り身分を捨てて新しい人生をと壇ノ浦に花投げて四国に漕ぎ出しておりました。

         雲は人の歴史を知らぬげに飛んで行くばかりであった。

 あらすじだけでも長くなりましたが、もっといっぱい細かいエピソードがあって歴史好きの私は堪能致しました。
 濃い内容を少ないページに入れたためか、文章で説明するコマや絵物語調になるのが多いのはしょうがないところ、よく前後編にまとめていらっしゃいます。今は絶版で読めないのは大変残念ですね。
コメント (10)
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