昨年評判だった「ブラック・スワン」やロングテール理論で述べられている「べき乗則」の啓蒙書(と解説にある)。正規分布(偏差値などの基本概念)に対し、べき乗則の分布はピークが尖がり、裾野が長い特徴がある。正規分布の親戚を基にしたオプション理論では、経済の大きい変動をつかみきれないというので注目されている。<o:p></o:p>
べき乗則の内容は、地震が起こる確率は、その大きさが十倍になると(マグニチュードが1つ大きくなると)、発生は(たとえば)1/4になるという、「自己相似性」があり、フラクタルと同じ概念となる。( http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%AA%E4%B9%97%E5%89%87 ) とかくと難しいが LogY=KLogx+Cであり、なかなか起こらない事象と発生の頻度が両対数グラフで直線(右下り)になるということだ。<o:p></o:p>
面白いのは、進化のなかで「死の谷」という低い適応度をくぐる必要があるというグラフで、これは芸術などで新しい様式への変革と同じだ。つまりは一度受け入れられない過程を通り抜けて、より高みに辿り着くというものだ。(P204)この、変化にもべき乗則が生態系の進化として関与しているとある。<o:p></o:p>
金融市場の変化も「太い尻尾」を持った、べき乗則で分析される。その仕組みは、互いに影響を及ぼす集団心理は「気分」により「臨界状態」になるゲーム理論で説明できるとある。最近、経済学の前提である「合理性」や「完全情報」はない、行動経済学こそが正しいという「流行」のひとつの根拠だ。<o:p></o:p>
都市計画で面白いのは、都市の規模もべき乗則だとあるが、当たり前な気がする。それは大きい都市を大都市と規程するからではないのか。(都市の領域や規程は人為的な側面が多い)社会学と自然科学がごちゃ混ぜになっている感じがする。金持ち(一人勝ち)理論も本当かなと思っている。<o:p></o:p>
ともあれ、平均とは何か、偏りは無いのかとか山火事は適当に発生させた方がよいとか面白く楽しめる本だ。<o:p></o:p>