語りを文章にまとめたもの。人生の色気とは、「差異」が「エロス」になる、つまりは違ったもの同士が反発しながら惹かれあうとある。また土地や界隈の持つ歴史や複雑さ、職業の多様さも差異と色気を生んでいた根源であると指摘している。<o:p></o:p>
最近は、世間が平均化し、感情が平板化し、相互の関心が薄れているとある。これでは小説となりにくいというのが見解だ。<o:p></o:p>
日本で、密室への憧れ、「情事」につながる欲求と盛り上がりも面白い指摘だ。常に人目や耳を意識する、感覚を研ぎ澄ませていたと、「ムラ」のような時代を、現代と対比している。<o:p></o:p>
更に、「後始末的な職務」が増え、上も下も無責任になってきた、歳をとっても未熟な男が増えた。ようは、書き栄えのしない状況を嘆いている。<o:p></o:p>
最後に、自分の好きなことを貫くには、「仲良し」では駄目で、「鬱」での溜め込み、つまりは「面白い」ためには「面白くない」のに耐えるのが必要という知見がある。好きな人間がいるとより耐えられるとある。さらに、差異と多様性のある出会いの地域、教育を提言している。<o:p></o:p>
都市の匿名性、サラリーマン化が、地縁や多様化に転換しつつあるなか、このような文学からの観点は面白い。<o:p></o:p>