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トヨタのリーン生産も35年で転換か:生まれたのは経営層と現場の乖離の組織問題など

2024-02-09 02:39:26 | マクロ経済

 リーン生産はTPS( Toyota Production System )に代表されるが、現在デメリットも指摘されている( https://www.smartmat.io/column/production_management/8168 )

その主なものはレジリエントの欠落だ。つまりは、平常時は良いが、

①サプライヤーの被害で生産が止まる:地震でのなど半導体

②ロジスティクスや下請けに時間待ちや在庫を強いる:遅れると生産が流れない

③社内のカイゼンなど現場・経営一体が変質化

 ここで①と②を考えると、不確定性のある時代にこの前提は疑問視されている。適正在庫や調達先の分散などコストを支払っても、生産損失(販売の機会損失につながる)を、マクロ的に考える時代だ。つまりは、リーン生産は製造元の利益拡大というモデルであり、下請けは損をするというゲームだったが、不確定性が大きい時代には、逆に製造元の販売損失(生産遅れ)となる。つまりは、このリーン方式は「世の中平安、下請けはいうことを聞く」が前提だった。

 1903年のフォード、1930年代のGM Sloan(MIT Sloanは関連)、第二次世界大戦を超えて、80年代後半からのJapan as No.1などのトヨタ式TPSのカイゼンとJust in Time:JIT と時代別の変遷があった。35年程経過しTPSも見直しの時期を迎えたと考えるのがマクロ的だろう。(  https://www.chukiken.or.jp/wp-content/uploads/2023/12/137.pdf )

 さらに、リーン方式は社内の無駄を省き、開発期間の縮小を狙った。これも弊害が生まれた。③について:TPSは昔、ブルーカラーもホワイトカラー(社長含む)もものづくりが好きなため同じ食堂で和気あいあいに食べると評判だった。(アメリカは区分、大体経営管理職が生産現場にいない、食堂は当然別)

しかし、時代の変化により役員と現場の距離拡大が麻薬となり経営層は開発期間の短縮を指示するように変化した。というのも、現場を締め付けて利益を出し自分の評価につなげようという役員が出てきたからだ。これは、役員のプロフェッショナル化(MBA取得者など)につながる。会社の長期的利益より、短期的利益の追求だ。となると、現場は旧来の長期的利益日本型であるのに、役員は短期的利益欧米型で、しかも、「ごむたいな」ご指示で工場長も相談する役員もいないとなる。となると、「結果を出せ」と大本営的な指示により第二次世界大戦の「失敗の本質」と同じになる。

 この現場押し付けは、東芝が有名だが、その後雨後の筍のように見られる。経営層が、新たな事業で失敗は避けたいが、社内のタオルを絞りたいという保身でうまみのある方向に変わった。トヨタでも現会長の評価を恐れた管理職が忖度したとの情報もある。また、豊田会長の記者会見での対応策を述べる言葉の軽さも気になった。

 これでは生産性が上がるはずがない、GDPがバブル後成長しなかったのは役員が原因と言っても良い。

 さらにその頃、こっそりと給与の資格給、職能給、社歴のマトリクス(これは複雑で人事の秘密だった)が改変され、給与、賞与、退職金・年金は下がった。そのため、給与水準の低下となった。しかも御用組合が多く(委員長は会社の役員コースだった)これを呑んだ。

 これにより、正社員の給与は下がり、ゼネラリスト志向が蔓延した。(元日本生命の出口さんの事例が有名だ)給与の低下とやりがいの喪失によりスペシャリストの多い不動産で有能な人材はほぼ転職した。いまのJob制と真逆だった。

 かくして、給与は下がり、生産性は低下し、新分野の投資は無く、役員の給与だけ上がった

 思い返すに、今回のトヨタグループ問題は、30余年秘められた経営層だけの欧米化と保身、そして現場指示だったと実感する

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