フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

4月15日(木) 晴れ

2021-04-16 13:03:12 | Weblog

8時、起床。

ロールパン、ウィンナー&エッグ、サラダ、牛乳、紅茶の朝食。

本日の『おちょやん』。満州から寛治が戻って来た。寛治は満州でヨシヲに会っていた。そして、そうか、ヨシヲは満州で死んだのか。

昨日のブログをアップしてから、昼前に家を出る。

近所の桜並木はツツジ通りになっている。

ホームで電車を待ちながら。「何もしない、だから美味しい」。「だから」の使用法にはいささか疑問があるが、ガッキーのポートレイトが添えられていると、「それも一つの考え方」として容認してしまう。

早稲田に着いて、授業の前に「たかはし」で昼食をとる。

お刺身定食は鰹のタタキ。この時期の鰹、秋の秋刀魚(刺身)はメニューに出ていればたいてい注文する。

脂ののった戻り鰹より、さっぱりとした初鰹が好み。

腹ごしらえができたところで、3限の大学院の演習に臨む。

院生に聞くと、いくつかのゼミはオンラインでやっているそうだ。私の演習は受講生2名。オンラインでも十分やれるが、いけるところまで研究室でやろう。今日は演習の基本テーマ(近現代日本における人生の物語の生成と変容)についての私の文献を読んできてもらってディスカッション。

演習を終え、「ミルクホール」にお八つを買いに行く。

あんドーナツと紅茶。

自宅の書庫から持ってきた志賀直哉の短編小説集。

高校2年生の9月頃に読んだ本だ。

「城崎にて」「小僧の神様」「真鶴」といったよく知られた作品の間に「流行感冒」という作品が入っている。大正8年3月に執筆され4月に『白樺』に掲載された作品だ。当時、日本はスペイン風邪の渦中にあった。いまなら注目して読む作品だが、高校2年生だった私はさらりと読み流した。いや、読んだことさえよく覚えていなかった。しかし、読んだことは間違いない。いまでもそうだが、全部のページに目を通した本にしか「17才初秋」と記すことはないからだ。拾い読みの本にはそういうことはしない。

「流行性の感冒が我孫子の町にもやって来た。私はそれをどうかして自家(うち)に入れないようにしたいと考えた。その前、町の医者が、近く催される小学校の運動会に佐枝子(註:直哉のまだ小さな娘)を連れて来る事を妻に勧めていた。然しその頃は感冒がはやり出していたから、私は運動会へは誰もやらぬ事にした。実際運動会で大分病人が多くなったと云う噂を聞いた。私はそれでも時々東京に出た。そして可恐々々(こわごわ)自動電話(註:公衆電話の旧称)をかけたりした。然し幸いに自家の者は誰も冒されなかった。隣まで来ていて何事もなかった。女中を町へ使にやるような場合にも私達は愚図々々店先で話し込んだりせぬようと喧しくいった。女中たちも衛生思想からではなしに、我々の騒ぎ方に釣り込まれて、恐ろしがっている風だった。とにかく可恐がっていてくれれば私は満足だ。」

直哉は最初の子を亡くしていた(乳幼児死亡率の高かった時代である)。また、直哉の三つ上の兄も直哉が生まれる半年前に亡くなっている。そういう背景もあって、直哉は娘が流行性の感冒にかかることをひどく恐れていた。女中の一人が嘘をついて芝居見物にいったことがわかり、暇を出すという話になるのだが、直哉が家に呼んだ植木屋から彼自身と妻が感冒にかかってしまい、その女中が献身的に娘の世話をしてくれて助かった。その女中は、その後、直哉一家が東京に引っ越すまで直哉の家に留まった。そういう話だ。「家族と使用人」をめぐる心理劇で、読んだ当時は、流行性の感冒自体は小道具のように捉えていたのだと思う。今日改めて「流行性の感冒」にフォーカスして読んだ。当時の他の作家たちのスペイン風邪をモチーフにした作品も読んでみたいと思う。

現代人間論系室に電話をして、書架に私のゼミのゼミ論集がそろっているかどうを助手さんに調べてもらったところ、1号から5号までしか並んでいないことがわかったので、6号から(最新の)11号を補充しに論系室に行く。

現代人間論系室2(カンファレンスルーム)は33号館の7階にある。論系の会議(最近はオンラインだが)やゼミに使われたりしている。

大久保ゼミのゼミ論集(11冊)がそろった。カンファレンスルームは昼休みの時間は開放されているので、ここに来れば読むことができる(貸出はしていないが、コピーするのはかまわない)。

隣接する現代人間論系室1(事務室)にはスタッフが常駐している(平日の12時から18時まで)ので、お願いすれば、昼休み以外でもカンファレンスルームを開けてもらえる。

助手の一人、安野直さん。この4月から助手になられた。専門はロシア文学。ほぼ初対面だが、彼女は私のブログをご覧になっていて、初対面という感じがしないようである。近々引っ越しを考えているという話をされて、「先生のおススメの街はありますか?」と聞かれる。不動産屋の主人か。「駅前の商店街に活気のある街がいいですね」と答える。商店街は人と街の社交のインターフェースですから。美味しい定食屋と寛げるカフェは絶対にあった方がいい。朝食がパン派であるなら、美味しいパン屋さんも絶対条件です。家族経営の魚屋もあった方がいい(魚をさばいてくれたり調理法を教えてくれる)。和菓子屋と古本屋と自転車屋もあるといいですね。肩こり症なら整骨院もね。要はあなたのライフスタイルが維持される街に住むということです。よい物件に出会いますように。論系の学生をよろしくお願いします。

夕方に大学を出る。

大井町で途中下車して「ポットリー」に顔を出す。

先月、開店32周年のときに来て撮ったマダムの写真をプリントアウトしてお渡しする。「祝開店32周年(令和3年3月23日)と印字しておいた。喜んでいただけてよかった。

こちらが注文を言う前に「ロイヤルミルクティーかしら?」と聞かれる。「はい、それでお願いします」

月曜日から「まん延防止等順天措置」が始まって、客足がガタンと減ったそうだ。ため息がでますね。

ある時期からこの店では珈琲よりもロイヤルミルクティーを注文することが増えた。珈琲よりも柔らかい。

一人いた先客が店を出て、ほかに客はいなくなった。そろそろ閉店の時刻でもある。「マダムのポートレイトを撮らせていただけますか?」と聞いてみる。「遺影に使えるようなやつね」とマダムは答えた。「スリック」のマダムも同じようなことを言う。一種の照れ隠しなのであろう。

はい、よく撮れましたよ。「遺影」に使えそうです(笑)。

今度来るときにプリントして持ってきますね。閉店時間(午後6時半)になったので店を出る。

大井町駅前の横断歩道で信号の変わるのを待つ人たち。

7時に帰宅。

夕食は青椒肉絲(風)、椎茸のツナ詰め、サラダ、ワカメスープ、ごはん。

肉は豚。だから青椒肉絲(風)。

大きくて肉厚の干し椎茸(どんこ)が手に入ったので、よくある肉詰めではなく、ツナとネギを詰めて焼いた。醤油を少しかけて食べるとツナによく合う。美味しい。

デザートはデコポン。

食事をしながら『プレバト』を観る。

本日提出されたレビューシートは46枚とそれほど多くないが、一枚の分量が長めのものが多いので、読むにはそれなりの時間を要する。たまたま夜になって雨が降ったので、ウォーキング&ジョギングの時間をそれに振り向ける。

風呂から出て、『トーキョー・スピークイージー』(本日の対談は矢口真理と峰岸みなみ)を聴きながら。今日の日記を付ける。

2時半、就寝。