フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

8月15日(木) 晴れ

2024-08-16 13:08:10 | Weblog

7時45分、起床。

今日は終戦記念日。負け戦であれ、戦争が終わったことに多くの国民が安堵した日である。それから79年が経った。そのときの安堵感を覚えている人は少なくなった。伝えていくべきは、戦争の悲惨さだけではなく、終戦の安堵感、そして未来への希望であろう。

加藤周一は東大医学部の内科教室の疎開先である信州上田の結核療養所で医局員として勤務しているときに終戦の報を知った。

「八月一五日の正午に、院長は、医者も、看護婦も、患者も―病院中を食堂に集めた。集まった一同は、かたずをのんで、あの聞き取りにくい「玉音放送」を聞いた。放送の後、大きな息を一つして、「これはどういうことですか」と事務長が、院長の方を向いていった。「戦争が終わったということだ」と院長は短く答えた。数十人の看護婦たちは―みんな土地の若い娘であった―何ごともなかったかのように、いつもの昼食の後と少しも変わらず、賑やかに笑い声をたてながら、忽ち病院の方へ散っていった。戦争は遂に―どんな教育にも拘わらず、まだどんな宣伝にも拘わらず、娘たちの世界のなかまでは浸みこんでゆかなかったのである。事務長をはじめ、職員や、疎開の医局員の多くは、沈痛な表情をしていた。しかし涙を流した者はひとりもいなかった。私は院長室にひきあげると、院長とそれぞれの思いに浸りながら、黙って院長が入れた緑茶をすすった。今や私の世界は明るく光にみちていた。夏の雲も、白樺の葉も、山も、町も、すべてはよろこびにあふれ、希望に輝いていた。私はそのときが来るのをながい間のぞんでいた、しかしまさかそのときが来ようとは信じていなかった。すべての美しいものを踏みにじった軍靴、すべての理性を愚弄した権力、すべての自由を圧殺した軍国主義は、突然、悪夢のように消え、崩れ去ってしまった―とそのときの私は思った。これから私は生きはじめるだろう、もし生きるよころびがあるとすれば、これからそれを知るだろう。私は歌い出したかった。」(加藤周一『羊の歌』より)

チーズトースト、目玉焼き、ソーセージ、サラダ、牛乳、珈琲の朝食。

朝刊の一面は終戦記念日のことではなく、昨日の夕刊の一面と同じ、岸田首相退陣表明の記事だった。

昨日のブログを書いてアップする。

軽めの原稿を書く。分量はそれなりにあるのだが、エッセー的な文章なので、ブログの続きのような感じで書けるので、ブログと昼食の間の時間を使って書くことにしている。

明日は台風が接近して関東地方は大雨になるとテレビで盛んに言っている。

息子は昼前に名古屋に帰っていった。

「新幹線には座れたかしら?」(座れたそうです)

1時半頃、昼食を食べに出る。

「きりん珈琲」に行く。珈琲豆がそろそろなくなるので、家を出る前に焙煎をお願いしたおいた。

カウンター席に座り、オレンジジュースを注文。

うどんポロネーゼ。

パッションフルーツとサワークリームのプリン、珈琲はマンデリン。

店を出るときにきりんブレンドの豆を受け取る。180グラムである。珈琲一杯の豆の量は10グラム程度といわれているので、18日分ということになるが、実際はそんなにはもたない。せいぜい2週間くらいである(私は珈琲は朝食のときにしか淹れない)。一杯に15グラム程度使っているということか。

店主さん情報。「今度の土曜日の朝、9時25分からの『ぶらり途中下車の旅』(日テレ)に「きりん珈琲」が登場します。旅人は舞の海さんです」。

帰宅して、妻と『海のはじまり』第7話(録画)を観る。今回は闘病中の水季と図書館の同僚だった津野を中心とした物語だった。水季が海を連れて夏のアパートの下まで行ったとき(道順を海に教えるため)、ちょうど部屋から出てくる夏と弥生の姿を見て、あわてて海の手を引いてその場を離れたというエピソードを津野は弥生に話した。話す必要のないエピソードである。それを話したのは、そのエピソードを自分は水季から聞いたということ、そういうエピソードを水季は自分に話してくれたということ、要するに、夏と弥生の知らない水季の一面、水季の気持ちを自分は知っているということのアピールである。そういうアピール(いま風に言えばマウントをとるということだろうか)をしながら、そういうことをしている自分自身に津野は嫌悪を感じていた。でも、言わずにはいられなかった。言う必要のないこと、言ってはいけないこと、それを言ってしまう場面がこのドラマには多い。普通のドラマでもそうい場面はもちろんあるが、このドラマの特徴は、「酒に酔った勢いで」とか「ついカッとなって」とかではなく、平時の語りの中でそれがさらりと、あるいはぽろりと口に出るという点にある。身構えていないときにふいにぐさりと刺されるような怖さがある。

夕食まで原稿(論文)書き。

夕食は照り焼き地鶏丼、笹かまぼこ、味噌汁。

食事をしながら『プレバト』を追っかけ再生で観る。地震関連のニュースで途中で休止となった先週分の再放送。

原稿(論文)書き。今日はあまり捗らなかった。ジンメルの『社会学の根本問題』に言及する箇所で一時停止を余儀なくされた。若い頃に書いた論文で『社会学の根本問題』に言及したことがあるので、それを参照すればよいかと思ったのだが、読み返してみると理解が浅い点が気になった。自分が理解できる範囲内で書いている感じで、ジンメルの深みのある思想を十分に理解できていないと。ジンメルはなかなか手強い。

風呂から出て、今日の日記を付ける。

2時、就寝。