フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

11月20日(火) 晴れ

2007-11-21 02:15:06 | Weblog
  昨夜、私にしては珍しく0時をちょっと過ぎた辺りで就寝したせいで、今朝は6時に目が覚め、そのまま起きる。小林聡美が映画『かもめ食堂』の舞台となったフィンランドの食堂でロケをした食パンのCMがいま流れているけれども、あの自家製のコロッケパンはとても美味しそうだ。その真似をして自家製コロッケパン(トーストにキャベツの千切りをたっぷり敷いて、とんかつソースとマオネーズをかけ、その上にトースターで暖めたコロッケを丸ごと一個のせ、とんかつソースをかけて出来上がり)と紅茶の朝食。美味い。1つでは物足らず、もう1つ作って食べてしまった。朝からお腹一杯。
  午前中は明日の授業(ライフストーリーの社会学)の準備。昼から大学へ。教務委員会の後、教授会。少しばかり風邪気味なのか、くしゃみと鼻水が出る。まだ今週は始まったばかり。ここで無理をしてはいけないと自主的に判断し、今日は早々に失礼をする。あゆみブックスで『ユリイカ』11月号を購入。特集がいま流行の「ドストエフスキー」だったからだが、電車の中で、沼野充義と柴田元幸の対談を読む。のっけから驚かされる。

  柴田 僕らが学生の頃は、「文学とは要するにドストエフスキーのことだ」というのに近い状況があって、だから、ドストエフスキーを読んでいないと恥ずかしいというような空気がありました。僕も大学院生の時に岩波文庫に入っているものは全部読みました。・・・・

  ほ、ほんと? 柴田と私は同い年の生まれだから、「僕らが学生の頃」というのは1973年からの数年間を指すことになるが、当時の早稲田大学文学部のキャンパスには「ドストエフスキーを読んでいないと恥ずかしい」なんて空気があったようには思えないのだが、私が覚えていない(それ以前に認識していなかった)だけだろうか。当時、われわれ早稲田大学文学部の学生の間で「読んでいないと恥ずかしい」本といえば、庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』だったように思う。

  ところでミシュランガイドの東京版が発行されて星印レストラン150店が発表されたが、私が行ったことがあるのは小笠原伯爵邸(★1つ)だけであった(去年、卒業生のSさんの結婚披露宴がここであったのだ)。東京在住の身ではあるが、こちらもまた違う世界の話ですね。

11月19日(月) 曇り

2007-11-20 07:56:11 | Weblog
  午前中、自宅で特定課題研究助成の申請書類の最後の仕上げ。その作業の合間に、現代人間論系の助手のAさんから主任の増山先生のお母様が亡くなられたという連絡が入る。対応について相談されたのでいくつか指示を出す。昔、私が社会学専修の助手をしていたときも、葬儀関連の事柄は助手の重要な仕事のひとつだった。気の張る仕事ですが、よろしくお願いします。私が編集委員長をしている『社会学年誌』の特集のコーディネーターをお願いしているI先生から、まだ何本か出ていない原稿があるという連絡を受ける。原稿の遅れという事態はわれわれの世界では日常茶飯のことであるが、立場上、「はいはい、かまいませんよ」というわけにはいかず、今後の段取りについていくらか緊迫感の漂う相談をする。どうぞよろしくお願いします。
  午後から大学へ。家を出るとき、ばたばたしていたのと、寒かったのとで、何も考えずにセーターに革のジャンバーをひっかけて出てきたのだが、これは失敗した。今日は坪内逍遥大賞の授賞式があり、出席する予定でいたのだが、そのことを失念していた。村上春樹氏がTシャツとジーパンでいらっしゃるとは思えず、この格好ではいくらなんでも失礼であろう。残念だが、授賞式への出席は取りやめざるをえない。コンビニで昼食用のおにぎりと暖かいお茶を購入し、研究室で食べる。特定課題研究助成の申請書類を事務所に提出してから、あれこれの仕事。夕方、本来であれば授賞式で村上春樹氏のスピーチを拝聴していたはずの時間帯、「銀だこ」で買い求めたたこ焼きを持って現代人間論系室を訪ね、助手のAさんにお香典を託して、しばし雑談。午後6時半から『社会学年誌』の編集委員会。投稿論文の採否の最終審査を行なう。山場の議題を終えてから「たかはし」のお弁当を食べる。今回出るのが49号なので、必然的にその次は50号である。節目の数字であるから、それなりの特集を組むことになるだろう。お弁当を食べながらその相談。会議は8時半頃に終わり、研究室で急ぎのメールを一通書いてから、大学を出る。気づかなかったが、いくらか雨が降ったようで、アスファルトが濡れていた。

11月18日(日) 晴れ

2007-11-19 01:45:17 | Weblog
  8時起床。すぐに書斎のパソコンの前に座って、明日が締め切りの特定課題研究助成費(特定課題A)の申請書類の作成に取り掛かる。これは学内の研究助成費で、科研費とは違う研究課題で別途に申請でき、40万円から100万円の助成を受けることができる。早稲田大学の教員の個人研究費(年間)は40万円ときわめて貧しい。だから学内外の研究助成費を獲得できるかどうかが大変重要になってくるのだが、昨年度と今年度、私は科研費を申請して幸い採択されたので(基盤研究B「清水幾太郎と彼らの時代」)、この2年間は研究費で困ることはなかった。それも今年で終わりだ。新規で科研費をまた申請することも考えないではなかったが、科研費はライフワークである清水幾太郎研究のためにとっておきたいので、来年度は別の研究課題で特定課題助成に応募することにしたのである。その研究課題とは「ポピュラーカルチャーにみる人生の物語」である。小説・映画・TVドラマ・コミックといったポピュラーカルチャーの中の登場人物の人生の物語(ライフストーリー)を分析するわけで、「ライフフストーリーの社会学」や「社会と文化」といった担当科目の中でこれまでやってきたことなのだが、いつも問題なのは、その都度TSUTAYTAで必要な素材をレンタルしてやりくりしていることで、できれば主要な素材については購入していつでも利用できる状態にしておきたい。しかしそのためにはお金がいる。小説やコミックは比較的安価だが、映画やTVドラマのDVD、とくに連続TVドラマのDVD-BOXは2万円前後する。本を購入するような感覚であれもこれもと購入していたら、たちまちスカンピンになってしまう。それゆえの今回の申請である。特定課題助成の申請書類は科研費と形式がほぼ同じである。つまりやたらとページ数が多い。なんと10ページもある。それほど時間のかからないページもあるが、たっぷり文章をかかないとならないページも多い。なかなかの重労働で、当然、一日仕事になることは覚悟しなければならない。研究助成をいただくというのは楽な話ではないのである。それに申請額から考えて、それを申請書類の作成に要する時間で割ったら、時給うん万円の作業になるはずである。そう考えて頑張った。夜、9割方完成。残りの1割(1ページ)は、高名の木登りではないけれど、慎重を期して明日の午前中の作業として今日はこの辺で眠ることにしよう。

11月17日(土) 晴れたり曇ったり

2007-11-18 03:16:58 | Weblog
  今日も冷え込んだ。昨日よりもさらに冷え込んだようである。一日家にいたが、床暖房のレベルをこれまでより上げないとならなかった。
  昼、妻が居間のTVで『ALWAYS 三丁目の夕日』のDVDを観ていた。妻は、近々、友人と一緒に『ALWAYS 続・三丁目の夕日』を観に行く予定なので、その前に前作を観ておこうというわけだ。私もなんとなくつきあいで観ることになった。これで何度目だろう。一種の古典落語のようなもので、何度観ても楽しめる。妻は前作は観ていないはずなのだが(自分でそう言っていた)、途中で何度か「この場面は知っている」という。最初は映画の宣伝で観た映像なんじゃないかと言っていたが、あまりにそれが何箇所もあり、しかも予告編でそんなネタバレみたいな部分までやるわけがないじゃないかという箇所があり、実は一度全編を観ていたんじゃないか、でも、何かの片手間で観ていたために、そのことを忘れてしまったのではないか、という結論になった。やれやれ。
  映画を観終えてから、インスタント・ラーメンで昼食。途端に眠くなり、夕方まで昼寝をする。やはり土曜日というのは一週間の疲れが出る感じだ。夕食の前に、二文生のHさんの卒論の草稿に目を通してアドバイスをメールで送る。この時期、もう大きな変更を求めるようなアドバイスはできない。あたらしい要素を求めることは最小限に抑えて、既存の要素を取捨選択し、どう配列すればスッキリと話の筋が通るかということである。話の筋が見えにくいのは、多くの場合、手持ちの素材をすべて盛り込もうとするためである。たぶんそこには4万字(400字詰原稿用紙換算で100枚)という量についての脅威がある。だから収集したデータや文献からの抜書きを総動員してしまうのである。しかし、そうすると、情報量こそ多いものの、素材同士がしっくりなじんでいない、未完成のスープのような卒論になってしまう。いくつかの素材については、「これは使わない」ときっぱりと捨てることである。
  夕食(秋刀魚の塩焼き)の後、WOWOWで玉木宏・宮崎おあい主演の映画『ただ、君を愛してる』(2006年)を観た。ずいぶんとベタなタイトルだが、これは大塚愛が歌う主題歌「恋愛写真」のサビのフレーズをそのままタイトルに転用したのである(原案は『天国の森で君を想う』だったそうだ。どっちもどっちだが)。死んだ母親からの遺伝性の病気を抱えた女の子が、病気の発症を抑えるために恋愛感情をもたないようにしてきたのだが(女性ホルモンの分泌を抑制するためという意味か?)、大学の入学式の日に自分に声をかけてくれた男子学生に恋をして、まさに命を懸けた恋になってしまうという話。絵空事といってしまえばそれだけの映画なのだが、観終わった後に、すがすがしい感じを残す映画であった。映画館では観ないだろうし、DVDを借りて観ることもない、私にはあまり縁のないジャンルの映画だが、WOWOWだったので観てみようという気持ちになったのである。「ただ、君を愛してる」か・・・。一途な言葉だ。ところで、この「ただ」は「ひたすら」の意味だよね?「ただし」の意味じゃなくて。だったら、「ただ」の後の「、」はいらないんじゃないか。別にいちゃもんをつけるわけじゃないんだけどね。ただ、言ってみただけ。
  深夜、「ライフストーリーの社会学」の授業で使う予定のビデオのチェック。3時を回った。もう寝なくちゃ。 

11月16日(金) 晴れ

2007-11-17 02:28:59 | Weblog
  ここ数日続いた小春日和だったが、今日は少々冷え込んだ。電車に乗っていると足元がスースーする感じがした。夕方から市谷の私学会館で開かれる中学生作文コンクール(生命保険文化センター主催)の表彰式に出席。審査委員を代表して講評を述べる。今回(第45回)の全国賞入賞者は以下の通り。

  文部科学大臣奨励賞
   岩間優(桜陰中学校1年)
  全日本中学校長会賞
   古賀朋代(北九州市立田原中学校1年)
   牧原凛子(宮崎県立宮崎西高等学校付属中学校1年)
  生命保険文化センター賞
   尾上琳慧(函館市立北中学校3年)
   城内香葉(静岡県立清水第三中学校1年)
   青木昌子(京都女子中学校1年)
   西脇改(鳥取大学付属中学校1年)
   半藤偲季(熊本大学教育学部付属中学校2年)

  応募総数17,808のうちの上位8名である。8名のうち女子が多数(7名)を占めたことは例年通りだが、1年生が多数を占めたのが今回の特徴だった。目の前に並んで座っている一人一人に話しかけるように講評を述べたが、なんともかわいらしかった。しかし作文の内容はどれも実にしっかりしている。
  文部科学大臣奨励賞の岩間優さんの作品「母の生命保険」は、彼女の母親が主役である。自称「お母さんの着ぐるみを着たお父さん」である。この作品で印象的だったのは次の下りである。
  「母は仕事をし続ける限り、自分で生命保険料を払い続けることができることが自分の甲斐性だ、ときっぱり言う。当然、父も私と母のために生命保険に入っているわけで、なにも母まで入らなくてもいいのではないかと、私はつい思ってしまうのだが、そういう問題ではないらしい。」
  「生命保険は自分のためではなく、家族のために入るもの」というのはよく聞く語りである。ただし、父親の語りとして。それをここでは母親が語っている。それも母子家庭の母親ではなく、両親共働きの母親が語っているところが新鮮である。ひところ流行った「ダブルインカム・ノーキッズ」をもじって言えば、「ダブルインカム・ダブルライフインシュランス」である(これ、生命保険の新しいキャッチフレーズになりませんかね?)。この母親の語りに娘も共感して、「母の生命保険に対する覚悟の気持ちは、母の生き方そのものであるかもしれない。潔い気持ちの表れだ」と書いている。生命保険と働く女性のアイデンティティを結びつけて書かれた新鮮で、感動的な作文であった。会場には優さんのお母様も出席されていたが、美しい着ぐるみを着た方であった。後のパーティーのときにお仕事についてうかがったところ、出版社にお勤めの「働きマン」であった。
  
  夜、今日が締め切りだった論系進級希望届の最終集計の結果が学部のHPにアップされていた。

  多元文化論系         82
  複合文化論系        149
  表象・メディア論系      208
  文芸・ジャーナリズム論系 178
  現代人間論系        152
  社会構築論系        134

  わが現代人間論系は一次集計のときより15人増えて152人である。これは論系定員とほぼ同数であるから、学年末試験で進級に必要な単位をきちんと取れば、希望は叶うであろう。取りこぼしのないように頑張ってほしい。