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わたしのレコード棚ーブルース122 Henry Townsend

2021年03月08日 | わたしのレコード棚
 ヘンリー・タウンゼント( Henry Townsend)は、1909年10月27日ミシシッピー州Shelbyに生まれ、2006年9月24日ウィスコンシン州Mequonで亡くなっている。96歳の天寿を全うした人だった。ブルースマンは、乱れた生活を送ったり、あるいは殺されたりして短い生涯を終える人も多い。が、タウンゼントのように長命を保つ人も結構いる。
 この人はヴォーカルのほか、ギターだけでなくピアノも巧みに弾き、音感に優れた人だったようだ。下のLPやヴィデオの解説などによると、幼少期にはイリノイ州カイロに引っ越し、9歳の頃にそこから家出。1921年頃にセントルイスへ出て、靴磨きなどをしていたという。セントルイスでは、そこを拠点とするヘンリー・スポルディングというピアニストからピアノを、ロニー・ジョンソンからギターを学び、ものにしていったらしい。経済恐慌の後1930年頃よりルーズベルト・サイクスやウォルター・デイヴィスなどのピアニスト達やビッグ・ジョー・ウィリアムスなどのギターリスト達と活動し録音なども残している。また、セントルイスを訪れたブルースマン達とも共演を重ね、その中にはロバート・ジョンソンもいたという。
 タウンゼント達が活躍したセントルイスも1950年代中頃にはブルースシーンは衰退し、保険の外交員などをして糊口をしのいだ時期もあったという。1960年近くになりサム・チャータースに発見されて、再び演奏を始めた。その後は、伝統的な音使いに新しい工夫を加えたオリジナリティーのあるブルーススタイルで長く活動した。キャリアは長く豊富なので、もっと評価されてもおかしくないミュージシャンの一人だ。
 


 セントルイスにあるNIGHTHAWKレーベルのLP201。1979年の録音で、ヴォーカルとピアノの演奏13曲を収録。タウンゼントに関するかなり詳しい解説と、一部の曲の歌詞カードが付いている。録音時70歳くらいだろうが、声には張りがあり、洒落たブルースピアノと相まって円熟味のある演奏が聴ける。

同LP裏面。



リットーミュージックのヴィデオGL-001『カントリー・ブルース・ギターの巨人たち』より、「カイロブルース」を演奏しているところ。オープンチューニングで、しっかりしたリズム、フィンガーピッキングによるリゾネーターギターの音と相まって、カントリーブルースマンの面目躍如といったところ。
 最初に、この「カイロブルース」を聴いたときは、エジプトに旅行にでも行った時に作った歌なのかと思った。しかし、ここで歌う「カイロ」はイリノイ州の幼少期を過ごした所だろう。アメリカの地名には、ヨーロッパからの入植した人達にちなんでイギリスやフランスの地名にnewを付けたものや、エジプトの地名を使っているものも多く、紛らわしい。例えば、ニューヨークはイングランドのヨークにちなみ、ルイジアナ州は元フランスの植民地でその名はルイ14世にちなみ、ニューオリンズはフランスのオルレアンからとっている。そして、カイロやメンフィスはエジプトの地名そのままだ。

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