金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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現在、記事の整理中。

203:安田政彦『平安京のニオイ』

2020-09-12 17:18:09 | 20 本の感想
安田政彦 『平安京のニオイ
★★★☆☆3.5

【Amazonの内容紹介】

藤原道長が栄華を誇った時代。
都ではどのようなニオイがしたのか。
排泄・廃棄物・動物・死など、暮らしと切り離せない
さまざまなニオイを再現。
一方で、薫香の文化を芸術にまで昇華させた
貴族の心性を浮き彫りにする。

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まあ、風呂もときどきしか入らないし、
髪もめったに洗わないし、臭いに決まってるよね……。
香の文化が発達したのは体臭を隠すため、というのは
知っていたけれど、トイレのシステムも発達していないし、
死骸を放置しているから死臭がするし、
牛車を使っているから牛糞もあちこちに放置されていただろうし、
京自体がすさまじい悪臭に覆われていたかもしれない。
でも、それが当たり前の社会だったら、
取り立てて気にならなかったのかも。
前に別の本で読んだ、
「ノミがあちこちにいたが、当たり前すぎて
 文学作品にそれが書かれていない」
というのと同じで。

大殿油や篝火の匂いって、どんなふうだったのだろう。

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202:松薗斉『王朝日記論』

2020-09-12 17:01:45 | 20 本の感想
松薗斉 『王朝日記論
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

9世紀末から10世紀にかけて、律令時代とは異なる情報環境下に
おかれるに至った平安王朝の天皇・貴族らは、
政務や儀式を執り行う上で必要な情報を収集・蓄積するために、
日記を記し始めた。
かかる「公事情報」の装置として、やがて「家」の日記、
「日記の家」が生み出され、「家記のネットワーク」も形成される。
藤原定家『明月記』にみる公事への関心と認識、
説話作家たちによる日記の利用、
日記や文書の移動と戦火からの避難に用いられた「文車」の考察なども含め、
「情報史」の視点から、王朝日記の発生・変質・衰退の過程、
その機能と意義を追究する。

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定家の明月記に関する章を読みたくて手にとったのだけど、
他の章もおもしろかった。

「明月記」に関する章は、定家を和歌から切り離して、
祖先から伝わる「家記」がないために
それを自ら作ろうとしたひとりの貴族として取り上げる。
孤軍奮闘して子孫のためにノウハウを書き留めるも、
息子は書かれているものに関心がなく、
定家が目指したようには日記が活用されずじまい。
切ない。

醍醐天皇の日記には、世間には流布しているバージョンとは
異なるものが皆載っているバージョンがあるとして
その争奪戦が起こる……というの、
書物好きとしてはわくわくする設定だな。

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