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【Amazonの内容紹介】
京の権力を前に圧迫され続けてきた東国に、ひとつの灯がともった。
源頼朝の挙兵に始まる歴史のうねりは、
またたくうちに関東の野をおおいはじめた。
鎌倉幕府の成立、武士と呼ばれる者たちの台頭――
その裏には、彼らの死にもの狂いの情熱と野望が激しく燃えさかっていた。
鎌倉武士たちの生きざまを見事に浮き彫りにした
傑作歴史小説にして第52回直木賞受賞作!
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二十余年ぶりに再読。
たぶん、わたしが初めておこづかいで買った一般小説って、
これの文庫版だったんじゃないかな。
・阿野全成(頼朝の異母弟で、義経の同母兄)
・梶原景時
・阿波局(政子の妹で、全成の妻。実朝の乳母)
・北条義時
という主役級ではない「周辺」の人々の視点で
鎌倉幕府の成立前から執権政治の成立までを描いている。
頼朝や義経を冷静に見つめる全成の目、
そして気づかれずに彼を見ていた頼家の目。
全成や保子に芽生える野心、
親兄弟・夫婦であっても裏切り、奪い合う
したたかな北条家の人々が印象的。
義経関連の本から入ったから、梶原景時は
どうしたって悪者のイメージがついてしまっていたのだけども、
彼の視点での物語は、やはり従来のイメージとは異なった色で展開する。
最終話、京の官吏として幕府を支えてきた大江広元や三善善信が
よぼよぼのおじいちゃんとして出てきて
「後鳥羽院、討つべし」の意見を表明するところでなんだか泣けてしまう。
院政の始まりの時期からその流れはあったのだろうけれども、
幕府を作るってそれまでにない大事業だったのだなあ、と思って。
同じ著者の『絵巻』を読むついでに再読したのだけども、
やっぱりおもしろい。