金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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214:塚本邦雄 『菊帝悲歌―後鳥羽院』

2020-10-10 22:14:50 | 20 本の感想
塚本邦雄 『菊帝悲歌―後鳥羽院 (1978年)
★★★★☆

塚本邦雄全集第5巻より。

こっちもたいそう重かった。

後鳥羽院、定家のことは最初に会ったときから
「歌は良いし評価しているが、人間性は嫌い」
と感じているんだけど、嫌いなら遠ざければいいのに、
事あるごとに呼んで嫌な思いをさせようとしたり
恥をかかせようとしたりするのね。
定家が実朝の歌の師になったら、
実朝を呪詛するための最勝四天王院に入れる
障子絵を定家に作らせ、
実朝に守られた定家の所領を取り上げて寵愛の童にあげちゃう。
それで自分の憎悪も煽っている。
嫌いな相手のことって、
放っておいたほうが自分の精神衛生上もよいのに、
放っておけずについ見たり接触したりしてしまうんだな。
二度と目通りは許さんと言ったくせに
「消息一通、遠島見舞の品一つ届けぬのは
 彼女らと定家くらゐであろう」
って、そりゃそうやろ……。
しかし、定家もおよそ人に好かれないであろう性格で不遜が過ぎ
(このあたりはすべて創作というわけではなく、
 明月記からもひしひしと感じる)、
ムカついて足蹴にしたい院の気持ちもわかるのであった。

『火宅玲瓏』と同じ世界観なのかなあと思っていたのだけど、
宮内卿のこと、『菊帝』では「窈窕として煙るような美少女」と書かれているのに、
『火宅』では「美しくはなかつた」なんだな。

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213:岡本綺堂『玉藻の前』

2020-10-10 21:52:57 | 20 本の感想
岡本綺堂『玉藻の前
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

明治から昭和初期の劇作家・小説家である岡本綺堂の戯曲。
初出は「婦人公論」[1917(大正6)年]。
昔から祟りがあると言い伝えのある古塚の森に迷い込んだ
幼なじみの美少女、藻を救い出した少年、千枝松。
しかし、その日を境に、素直だった藻は人が変わったように
冷淡となり、彼女は千枝松を捨てて、
関白、藤原忠通の侍女になってしまう。
藻と千枝松の美しく切ない悲恋物語。

**********************************

ずいぶん前に読んだのだけど、記録するのを忘れていた。

以前読んだ漫画版、原作は岡本綺堂だったんだな。
玉藻の前伝説にオリジナル要素を付け加えて
悲しくも美しい、切ない物語に仕立てている。
文章も全く古びておらず、流麗。
玉藻と、忠通・頼長・信西をからませて、
保元の乱へ至るストーリーになっているのにも無理がない。
この保元の乱との絡みは、
岡本綺堂のオリジナルなのかと思ったけれど、
そうではなくて結構昔からある話なのね。

玉藻の前
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