杉本苑子『竹ノ御所鞠子』
★★★☆☆3.5
【Amazonの内容紹介】
修善寺で討たれた鎌倉幕府二代将軍・源頼家の子として生まれた姫・鞠子。
人里離れた竹ノ御所で母とともに慎ましくも安らかに暮らし、
人がみとれるほどに匂やかで、涼やかな声の持ち主へと成長していく。
異母兄弟は政争に巻き込まれ、儚い命を散らすなか、
鞠子は女であるがゆえに難を逃れたと思われた。
しかし、尼御台政子から書状が届き、
北条氏らが繰り広げる非情な権力抗争の波に弄ばされる。
悲運の姫の数奇な運命を描く歴史長篇。
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えーん、最悪!!
後味が悪すぎる~!!
父を殺され、敵の嫡男の側室になった刈藻と、
その娘で同じく父を殺され、親子に近いほど歳の離れた子供と
結婚させられるために家族を惨殺される鞠子。
どこまで行っても不幸な二人。
竹ノ御所に別の夫と子供がいたというのは、この作品のオリジナル設定だが、
これが鞠子を幸せにしたのかどうか……。
政略のために、娘ざかりのときに誰にも嫁がされず、
十六歳も下の子供に嫁いで産褥死するのも哀れだが、
夫との幸せな生活をぶち壊されだけにとどまらず、
夫と子供を目の前で殺されるのが幸せだったとも思えない。
政子も三寅も嫌なやつで、救いがない。
政治的に使える鞠子が放置されるわけないと思うし、
下々の者に守秘義務という概念もなかった当時、
夫がいたら隠し通せるはずないだろうし、
「作家によって作られた悲劇」という感じはするのだが、
読んでいて打ちひしがれてしまった……。
三浦義村が娘を離縁した泰時にムカついているのと、
泰時が外面のいい冷酷な男なのは良かった。
いや、ストーリーとして酷すぎるのだが、
泰時は聖人君子であろうとしたものの
実際は邪魔なやつをどんどん消す男だったと思っているのでね……。
竹ノ御所の母は、若狭局説が有力なのだけれども、
本作では「木曾義仲女」、そして義高の母は巴という設定。