牛込・神楽坂 酒問屋 升本総本店の別館「涵清閣」 主人が語る

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ワインをめぐる小さな冒険(新潮新書)

2008-02-06 09:55:55 | 酒の本棚(書評?)
柴田光滋(2008):ワインをめぐる小さな冒険(新潮新書239)、新潮社、206p.

毎日新聞の書評につられて購入しました。
内容は、19のテーマが雑誌のエッセイ風(実際にいくつかはエッセイとして掲載されていたということです)に綴られています。
テーマの大半はワインの属性で、ぶどうの品種だったり、産地だったり種類だったり国だったり。
こんな感じです。
1 トンカツとの果てしなき闘い
2 時にはブルゴーニュの白で贅沢を
3 スーパー・トスカーナと騒ぐ前に
4 ロゼに栄光の日をふたたび
5 世界最優秀ソムリエを前にワインを選ぶ
6 コルドバの夜はふけて
7 イタリアの白もここまできたか
8 武門の誉れシャトーヌフ・デュ・パプ
9 シェリーは吉田健一に学ぶべし
10 オーストラリア熱は居酒屋がきっかけ
11 わが偏愛のサヴィニ・レ・ボーヌ
12 ピエモンテには龍もいれば虎もいる
13 強肩ボルドーからいかにして盗塁を奪うか
14 ジンファンデルで焼鳥を
15 シャンパーニュのジレンマ
16 地下蔵の隅にその古いポートの黒い瓶はあった
17 まだまだあるぞ、あの長靴の国のすごい赤
18 廉価ピノ・ノワール世界選手権大会
19 甘露の雫ソーテルヌ

それぞれ、著者の経験の中でワインを語り、時には、薀蓄を語ります。
例えば、、、
ボルドーは廉価なクラスと高価な大物という両極端を避け、次の3つに手を出す。
①やや地味なシャトーの当たり年をねらう。
②向上が伝えられるシャトー、新星と話題のシャトーを早い時期に購入する。
③良質なシャトーで納得のいく値段のオールド・ヴィンテージを根気よく待つ。


これも含め、この本はワイン好きの方にとっては、同意できるもの、できないものそれぞれあるにせよ、「あ、こんなような経験あったよね、こう思ったことあるよね」という、追体験というか、自分の体験と照らし合わせながら読めることでしょう。また、「ふーん、今度これ飲んでみよう」という気にもなるでしょう。

一方、たまにはワイン、という方にとっては、ワインの魅力の一つである、その背景にある(あるいは生まれる)物語の拡がりを感じとれる本として面白いのではないでしょうか。ただし、記されている個々のワインは、特に体系的でも統一的でもないので、注意したほうが良いですね。

著者は永らく編集者をされていたということで、文章は読みやすく、また、各章末の注釈は田中康夫の「なんとなくクリスタル」を髣髴とさせるそれだけで読み物となる、「上手な」作り方がされています。
逆に上手が前面に出すぎていて、著者が何度か触れている吉田健一のような、著者のキャラクターを感じさせる読み物にはなっていない気もします(「上手」「すごくまじめ」というキャラクターといえばそうですが)。

タイトル「ワインをめぐる小さな冒険」。19の小さな冒険談を聞きながら、自分の冒険を思い出し、将来の冒険に思いをはせる。このタイトルは本当に秀逸だと思います。

しかし、この本の編集者、大変だったろうな、、、、。

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コメント (1)
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