田中将大投手が、ニューヨークヤンキースと7年160億円で契約を結んだと報じられました。これまでの日本人選手の契約としては最高額で、ポスティングシステムのルール変更が選手に有利に働いた結果とも言われますが、日本人のトッププレーヤーが高く評価されたことはめでたいことです。
が、しかしです。一方で、この途方もない金額にあ然とする気持ちがないでもありません。
A.ロドリゲス選手が、かつて10年2億7500万ドル(約300億円)の契約を交わした時には、口があんぐりしてふさがりませんでしたが、マー君の契約も投手としては5番目ということで、それに匹敵するようなものです。
がんばって欲しいのはやまやまですが、この金額を冷静に考えたら、普通の人間なら空恐ろしくなるのではないかと思います。160億円をもらうということは、それ以上の金額を稼ぎ出さなければならないということです。自分が本当にそれにふさわしい選手なのか、ケガをしてシーズンを棒に振ったらどうなるのか、等々考えたら夜も眠れなくなりそうです。
私が尊敬する王貞治さんは、長嶋さんが現役時代は年棒ナンバー2で、長嶋さん引退後はナンバー1となりましたが、最後は推定8600万円でした。もちろん物価は違いますが、マー君と比べたら、何とささやかな金額かと思ってしまいます。
経済の世界は、需要と供給の関係で値段が決まります。欲しい人が多ければ値段が上がり、欲しい人がいなければ値段が下がる。
スポーツとてビジネスですから、最終的にはそういうことですが、ビジネスにならないマイナースポーツでも、4年に一度の五輪で金額でははかれない感動を与えることがあるように、スポーツが与える感動とそれに対する対価というのは、金額だけでは計れないものがあります。
高度成長期の日本を湧かせた長嶋・王の両選手の報酬に対して、与えた感動ということで言えば、完全に感動の方が上回る黒字でした。田中将大選手が、160億円という巨額年棒に対して債務超過とならないような立派な活躍をしてほしいと思います。