伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

彼女

2022-07-20 22:25:10 | 趣味の本・暇つぶし本
 「美少女を描かせたら右に出る者のいないギャグマンガ家」(35ページ)と呼ばれた作者による女性のイラスト集。
 紛らわしい名前で間違えて「江口寿志」「アニメーションワークス」を読んだ/見た後、懐かしんで取り寄せました。
 私にとっては、江口寿史と言えば学生時代に読んだ「すすめ!!パイレーツ」で、当時模写が得意科目だった私は、学祭のときにサークルの模擬店の看板に泉ちゃんの絵を描きました(40数年前は著作権問題はあまり気にされてなかったもので)。ちなみに、その頃、「過激派」学生の集会に参加中、隣の席に座っていたいかにも過激派ふうのおねぇさんから、机に落書きされた「CP蜂起!」を指さして、CPって何だと思う?と聞かれ、まぁこういうところに書かれてるんだからふつう共産党(Commuists Party:日本共産党ではなく、より戦闘的な過激派学生にとってあるべき姿としての前衛党)だよなと思いつつ、当時、京都大学では障害者闘争の芽ばえのようなものもあったので、ひょっとして脳性麻痺(Cerebral Palsy)かも(障害者よ、立ち上がれ!)とも思い、しかし若輩者の1回生が先輩に教えを垂れるようなマネはできませんので、「千葉パイレーツ(Chiba Pirates)じゃないですか」と答えたら、ばかうけしておねぇさんが隣のさらに過激派ふうのおにぃさんに「この子が、CPって千葉パイレーツだって」と震えながら話しかけ、おねぇさんが「うるさい、黙ってろ」と言われていた記憶があります。
 この作品集では、大人っぽい顔立ちの絵がほとんどで、「ストップ!!ひばりくん!」の絵はあっても、「すすめ!!パイレーツ」の泉ちゃんの絵はまったくないのが残念でした。顔を大人っぽくして下着姿やパンチラを見せられても、私は興ざめしてしまいます。特定時点での経験・記憶に固執した勝手なノスタルジーですが。


江口寿史 集英社インターナショナル 2021年3月15日発行
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アニメーションワークス

2022-07-19 21:01:25 | 趣味の本・暇つぶし本
 アニメーターの著者が、自分が書いた原画類を元に、その原画で何の作業をしているかとか、どこで苦労したかなどを語る本。
 Introductionで「この本は、アニメーションがどのような手順で作られているのか?という疑問にお答えする物になります」と書いています。業界に詳しい人ならそれを読み取れるのかもしれませんが、制作の工程に沿って説明するという形を取らず、著者が担当した、著者の手持ちの原画を作品ごとに並べて思い出話的にエピソードを語っているので、どのような手順で作られていくのかを判読理解するのは難しいように思えます。
 採り上げられている作品も、著者が関与した代表的な作品という観点ではなく、たまたま手元に原画が残っていたとかいう事情で選ばれているように見えます(代表的な作品は権利者が承諾しなかったということかもしれませんが)。
 アニメーション業界ですでに36年のキャリアを持つのだそうです(222ページ)が、私は知りませんで、漫画家の江口寿史の作品集と思い込んで手に取りました。違うなぁと思ったときに、「ルパン三世」の峰不二子のイラストが目にとまり、読むことに…子どもの頃テレビアニメを見たとき(テレビシリーズ第1期のとき、私は小学6年生)から胸ときめかせた峰不二子のおっぱい丸出しのイラストが37ページに…これだけで読んで得した感(12歳児の魂62まで、です)(私は、スウェーデン美女のフルヌードよりもこっちの方が萌えます)。


江口寿志 玄光社 2022年4月28日発行
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押井守のサブぃカルチャー70年

2022-07-18 23:35:25 | エッセイ
 「攻殻機動隊」「スカイクロラ」のアニメ映画監督である著者が、テレビアニメ等について論評した本。
 子どもの頃から軍オタで、戦争大好き、軍事大好きで、「サンダーバード」は国際救助隊で助けるだけで戦わないからダメ(182~183ページ)で、日本学術会議の連中は理想の存在を信じ頭の中で救われてしまっている(34ページ)、自分は懐疑的(同)なんだそうです。
 また、モンキー・パンチが宮崎駿の「カリオストロの城」に不満を持っていて、亡くなる数年前に会ったときに「あんた『ルパン』やってよ」「今度やろうよ。何をやってもいいからさ。いまの『ルパン』はオレの『ルパン』じゃないんだよ」と言われた(73ページ)とか、山岸凉子に「日出処の天子」のアニメ化をやらせてくれと頼んだら本人も前向きだった(244~246ページ)などの自慢話っぽいたられば話も散見されます。
 そのあたりの好みで、読んだ評価もだいぶ左右されそうに思えます。
 私よりも9歳年上ということがあってか、「ルパン三世」の漫画アクション連載に関して、峰不二子には全く言及されず、中綴じのスウェーデン美女のフルヌードのグラビアだけが語られ(72~75ページ)、「ウルトラマン」では桜井浩子(フジ隊員)、「キャプテンウルトラ」では城野ゆき(アカネ隊員)、「ウルトラセブン」ではひし美ゆり子(アンヌ隊員)が語られていて、同じ時期に同じものを見ていても、年齢により関心の対象は違うのだなと実感しました。


押井守 東京ニュース通信社 2022年4月28日発行
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本気で考える火星の住み方

2022-07-17 21:17:56 | 自然科学・工学系
 火星探査・調査のこれまでを振り返り、火星の地下に水がある(岩盤下の地下水状態か、岩盤内で水酸化物状態か)という見通しからこれを利用した人類の火星での居住に向けての技術開発や法的整備などを論じた本。
 水や薄い大気層があっても、大気が薄いため小石ほどの隕石でも減速されずに落ちてくること、大気が薄い上に強い磁場がないために放射線・太陽風がストレートに襲ってくること、砂嵐が頻繁に生じていることなどから、地上での生活や地上の施設、特に太陽光発電パネルの維持には厳しい環境であることが指摘され、宇宙環境の峻厳さと地球環境のありがたみを改めて感じます。また現況では、民間の富裕層/企業への主体の移転・移譲が進む中、限られた資源を早い者勝ちで先占して行くことが予想され、それをうまく協調し制御できるかが論じられ/危ぶまれているのも、なるほどと思いました。
 ことがらの性質上、図版、写真が多用されていますが、モノクロのどちらかといえば安めの紙の新書なのが少し哀しい。興味があるならNASAやESAのサイトで見ろということなんでしょうけど。


齋藤潤、監修渡部潤一 ワニブックスPLUS新書 2022年2月25日発行
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老いの正体 認知症と友だち

2022-07-15 00:01:53 | エッセイ
 認知症になった89歳の著者が、老いに向き合い、老いても夢を持ち好奇心を持ち志を持って生きていこうと語る本。
 人生・生活の中での時間の過ごし方について、「濃密な時間」として、青春時代に山登りに夢中になっていた頃、新聞の届かない穂高中腹の涸沢テント村から「朝日新聞」連載の「氷壁」を早く読みたいがために毎朝朝食後に2時間かけて麓まで降りて「氷壁」を読み4時間かけてテント村に戻ってくる友人がいたことを紹介して、こうした時間は濃密であると述べています(160~161ページ)。80前後の頃は「昭和」的な喫茶店で過ごす時間が濃密と感じられたとも(161~162ページ)。なるほどと思いますが、他方で、著者は「もっとも時間を薄く感じやすいのは『待ち時間』ではないかと思う」(162ページ)としています。積極的に味わいに行くということでないにしても、降って湧いた待ち時間も、使いよう、気持ちの持ちようでは、濃密な時間にできるかもしれません。著者の言う「効率のいい時間」とは別種の「濃密な時間」を大切にしたいという心持ちは、これから意識していたいなと思います。


森村誠一 角川文化振興財団 2022年3月23日発行
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踊るハシビロコウ 衝撃の巨鳥 こんな姿、見たことない!!

2022-07-14 00:03:48 | 趣味の本・暇つぶし本
 動かない鳥として知られるハシビロコウが、羽を広げたり飛んだりしている写真を掲載して解説した本。
 長男が子どもの頃、鳥が好きで、とりわけこのでかい面(鳥にしてはという点でも、体の割にはという点でも、顔が大きいんです)の鳥とにらめっこするのが気に入って、上野動物園に連れて行くたびにハシビロコウの檻(その頃はまだ1羽だけで小さな檻だった記憶です)の前で長い時間動かずに2人の世界(1人と1羽の世界)に入り込んでいたので、私もよく見ていたのですが、基本的には動かずじっとしている時間が長いですが、ずっと見ていると歩きますし、時には羽を広げます。それほど珍しいわけでもないんですが(もっとも上野動物園の檻は以前はかなり狭かったし、今はなんと4羽も飼育していますが、それでも広いのは1つの檻だけで残り3つの檻はかなり狭く、飛ぶのはまぁ無理でしょうけどね)。
 日本全国で、現在7箇所で合計12羽のハシビロコウが飼育・展示されているそうです。この本では、羽を広げたり飛んだりの写真はほぼ上野動物園以外(67ページのハトゥーウェが飛んでいる写真が唯一の例外)で、やはり今でも上野動物園の檻ではハシビロコウが飛ぶ気にはなれないということなんでしょうね(単に著者に対して上野動物園があまり協力してくれなかったのかもしれませんが)。


南幅俊輔 ライブ・パブリッシング 2022年5月29日発行
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水に溺れて夢を見る 美和野らぐ作品集

2022-07-13 23:34:41 | 趣味の本・暇つぶし本
 セクシー系の美少女のイラストを中心とした著者の作品集。
 前半は災害で海中に沈んだ都市の上に人類が水上都市を築いて生き延びているという設定の作品に合わせたイラストなので水辺が多く、後半のイラストでも雨、露、飛沫、汗など水もしたたる…というものが多く、水や水面・水滴に反射する光が意識される絵が多くなっています。
 脚や腕、体のひねりなど、無理なものも散見されますが、そこは美観優先で割り切っているのでしょう。
 大腿と上腕に、ハイライトが入るのは理解できるのですが、電車の窓のような四角・台形を列状に連ねたものが、機械的に近く入れられているのは、私はやめた方がいいんじゃないかと思いました。脚にこれが入っていると、ストッキングが伝線したのかなと思えてしまいます。


美和野らぐ 株式会社KADOKAWA 2022年3月28日発行
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ミス・パーフェクトが行く!

2022-07-12 19:02:43 | 小説
 端整な顔立ちで主婦層の支持をつかみ8年間総理大臣の地位にある栗林智樹の隠し子で東大卒29歳の厚労省キャリア官僚真波莉子が、次々と押し寄せる難題を、頭の切れと度胸と人脈で処理して行くお仕事小説。
 能力があって人脈に恵まれた者は、どういう立場におかれ、何にぶち当たっても、なんとかするもんだなという、ある意味では爽快な、ある意味では実感を持てない別世界のことに思える作品です。
 現役の与党幹事長が銃撃されて倒れ(防弾チョッキを着ていたので全治2か月の怪我ですんだが)、一番近くにいたが一歩も動けなかったことをいまだに忘れられない当時の警護担当者がサブキャラで、その事件の背景にはいろいろな思惑もあり…という作品。
 借りた当時には予想だにしていませんでしたが、安倍元総理銃撃事件直後に読むことになり、いろいろに感慨深いものがありました。


横関大 幻冬舎 2021年12月10日発行
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初恋さがし

2022-07-11 21:53:45 | 小説
 50代の山之内光子が経営するミツコ調査事務所を訪れた依頼者、事務員などの関係者にまつわる事件を描いたミステリー短編連作。
 タイトルの「初恋さがし」は、光子が調査事務所のサービスとして企画したヒット商品名(10~11ページ)と、それを求めた依頼の1編(263~322ページ)から。全体を通じて悪意と比較的あっさりと実行される殺人に満ちていて、タイトルのイメージとはかなり異なる読後感です。
 舞台となるミツコ調査事務所は、「JR高田馬場駅から歩いて五分。早稲田通り沿いの雑居ビル、四階」という設定です。私がサイトで書いている小説「その解雇、無効です!」シリーズの玉澤達也法律事務所の新宿区大久保4丁目の雑居ビル4階(「その解雇、無効です!2 ミステリーでわかる解雇事件」プロローグからその設定が登場)と場所・環境の設定や、小規模の濃密な人間関係などが似ている点にも興味を持って読みましたが、事務所内の人間関係は、だいぶ違う(ちょっと怖い)感じでした。


真梨幸子 新潮文庫 2022年3月1日発行(単行本は2019年5月)
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顔 FACE [新装版]

2022-07-10 21:43:44 | 小説
 D県警鑑識課機動鑑識班で目撃者の話から犯人の似顔絵を描く担当者だったが、逮捕された者がまったく似顔絵と似ていなかったため似顔絵捜査でお手柄という記者会見前に描き直しを命じられたことから自己嫌悪に陥って失踪・休職した過去があり、現在は別の部署に配属されている婦警平野瑞穂が、似顔絵を描く能力やさまざまな観察力を活かして奮闘する様子を描く短編連作。
 まだ若い一婦警の悩み、男社会の警察の中で低く見られる婦警/女警の意地と向上心が大きなテーマとなっていますが、時に女の敵は女的な場面が登場する際、それを男性作家がいうことへの疑問をどう捌くか、たぶん悩ましいところでしょうね。
 観察力を駆使して真相に迫るストーリーを展開するのに、秀でた主人公ではなく挫折の経験がある/なおそれを引きずっている人物にしているところに味があり、またお手柄が前に出ずに、結局専門の部署の他の警察官も自力でたどり着いて主人公は引いていくというところに現実の苦さが感じられます。


横山秀夫 徳間文庫 2022年3月15日(旧版は2005年4月)
「問題小説」連載
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