前回の始皇帝の功労に話には、日本の方々はなかなかピンとこないのではないかと思います。
それは中国が特殊だからではない。
日本という国の国民の方が地政学上、まれに見るほどに特異だからです。
<そんなものが功績?>
日本は周囲を海の壁で囲まれています。この壁は万里の長城よりもはるかに高く厚く強固な海水の壁。
建築費、維持費ゼロの自然の壁です。
異民族がこれを超えて侵入するのは容易ではなかった。
船は造らねばならず、その船で海岸を取り囲んでも、予期せざる暴風雨(台風も)がやってくる。
早く上陸攻撃しないと、嵐が船を沈めてしまう。攻めにくいことこの上ないです。
日本列島に形成される統治空間は、いったん確立すると対外的にはそれほどに安定したものとなります。
統治者は、人民に「ここは一つの国だ、我々はその国民だ」という国家意識を
植え付ける努力ががきわめて少なくてすむ。
我々はそういう統治空間にすんでいますので、秦の始皇帝がなした功労が追体験できないのです。
中国大陸では異民族が陸続きで隣接しています。
境界線だってはっきりしていない。
国々は互いに隣国を収奪しようと目を光らせている。
現にチベットだって中国に併合されてなかなか解放してもらえないじゃないですか。
それがどうしてもわからないから「春平太さん、なにいうてはんの?
国なんてどこでも同じじゃないの! あんた英雄崇拝者か?」となるのです。
<英国とは根底的に違う>
海に囲まれた島国というと英国だって同じじゃないか、とお思いの方もでるでしょう。
たしかに英国も島国です。四面海で囲まれている。
だが、地政学的な性格は日本と全く異質です。
欧州大陸からこの島国に船でいくにはドーバー海峡を渡ります。
だがこの海峡と言ったら、日本での本州と四国、本州と九州、
本州と北海道との間の海峡のようなものです。
簡単に往来できる。
欧州大陸と英国島とは地政学的には地続きのようなものなのです。
英国は昔から政治的には隣国とほぼ接していた。
これが統治にもたらす特質は、日本から見たら画期的です。
<民心分裂の危険が常在>
まず人心が統治者を離れ、国が分裂する可能性が、英国では断然高くなります。
国家に不満なことが多いと、人民は隣国に逃げ込むのが容易です。
人民がそういう状態にあると、隣国もまた英国民に政治的工作が仕掛けやすい。
思想的影響を与え、英国内にひそかにもう一つのアングラ政府をつくらせることも容易になります。
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最近になって、「沖縄は中国にとられるかも知れない」という話題が日本に出てきました。
どうやって取るか?
ビジネス、観光国際化の時代です。中国も工作員をビジネスマン、観光客として沖縄に滞在させて、
県内に不満分子をつくり、彼らに独立政府形成の準備させます。
それが一定の確立をみたら、独立政府宣言をさせて中国軍に保護を要請させます。
すると中国は合法的な形で、沖縄を軍事占拠することができます。
そのうえで反対分子を粛正すれば、沖縄を独立国家にしてしまうことが出来るのです。
もちろん日本には自衛隊もあるし、同盟国の米国軍もあります。
だから沖縄奪取はそう容易ではありませんが、大事なことは、
沖縄にはそういう危険があるということです。
こういう話は日本では通常現実味を帯びない話です。
だが、隣国と陸続きの国には(英国にも)その危険は常時現実的なのです。
国民も、それが常態だと意識しています。
そうやって暮らしていますし、現に、他国の工作員がいるなど当たり前のこととなっています。
それが日本で沖縄での話になると、突然降って湧いた脅しの話、となります。
「びっくりさせるなよ」「楽しくやってたのにそんな怖いこと言わないで。無粋だなあ・・・」
「変なこと言うから眠れなくなっちゃった・・・」となります。
これほど違います。
日本が特殊なのです。
<中国の南北分裂可能性は小さい>
中国で民主化運動が起きるごとに、外部者は
「この国はいずれ二つに分かれるのではないか」と思ったりします。
日本でもそういう期待混じりの見解がマスコミに流れたりしました。
中国はいずれ北と南に別れるだろう。
広大な国土です。別れたって各々大きい国だ。
いずれそうなるだろう、と。
だが、その可能性は実際には小さいです。
その分裂を防いでいるのが、同一の文字「漢字」を使っているという状況です。
南北の人民は、互いに、漢字でもって意思疎通が出来る。
記録文書も共有できる。
それが「我々は一つ」の感覚を安定的に形成しているのです。
その常態を作り上げたのが秦の始皇帝です。
始皇帝の功績は巨大だったのです。