Sightsong

自縄自縛日記

タリバム!featuring 川島誠&KみかるMICO『Live in Japan / Cell Phone Bootleg』

2019-10-29 23:53:37 | アヴァンギャルド・ジャズ

タリバム!featuring 川島誠&KみかるMICO『Live in Japan / Cell Phone Bootleg』(2019年)。

Talibam!:
Matt Mottel (keytar)
Kevin Shea (ds)

Makoto Kawashima 川島誠 (as)
K.mical.mico KみかるMICO (voice, melodica)

今年の春にタリバム!のふたりが来日し、立川では川島誠さんと、京都ではKみかるMICOさんと共演した。そのときの記録である。(先日川島さんがNYに行ったとき、かれらが演奏を観にきて、CDが出来たと50枚渡されたとのことである。そのうちの1枚。)

タリバム!は共演者をさまざまに入れることによって異なるサウンドを創り上げるユニットなのだろう。その意味で触媒のようでもあり、溶媒のようでもある。

初対面の川島さんとの共演は、立川が遠いこともあって、観には行かなかった。このようなプレイだったならば目撃しておくべきだったかもしれない。マット・モッテルの執拗なフレーズの繰り返し、常にフルスロットルのケヴィン・シェイのドラムス。ここに川島さんのアルトが入るのだが、ソロで聴けるようなウェットで内省的な音ではなく、紙やすりのようにサウンドを粗く削りながら掘り進んでいく音である。川島さんはエレクトロニクスが好きではないと話しているが、これを聴くとまた別の可能性があるのではないかと思ってしまう。

一方KみかるMICOさんとの共演は、同様に執拗でエネルギッシュではあるものの、よりポップなサウンドである。巻き込まれて麻痺した頭は、躁的なほうへと浮上する。立ち会っていたならばいつの間にか笑って呆然としている自分がみえる。

●タリバム!
タリバム!@ケルンのGloria前とStadtgarten前(2019年)
タリバム!+今西紅雪@本八幡cooljojo(JazzTokyo)(2019年)
タリバム!&パーティーキラーズ!@幡ヶ谷forestlimit(2019年)
Talibam!『Endgame of the Anthropocene』『Hard Vibe』(JazzTokyo)(2017年)

●ケヴィン・シェイ
タリバム!@ケルンのGloria前とStadtgarten前(2019年)
タリバム!+今西紅雪@本八幡cooljojo(JazzTokyo)(2019年)
タリバム!&パーティーキラーズ!@幡ヶ谷forestlimit(2019年)
スティーヴン・ガウチ+サンディ・イーウェン+アダム・レーン+ケヴィン・シェイ『Live at the Bushwick Series』(-2019年)
MOPDtK@Cornelia Street Cafe(2017年)
Pulverize the Sound、ケヴィン・シェイ+ルーカス・ブロード@Trans-Pecos(2017年)
Bushwick improvised Music series @ Bushwick Public House(2017年)
Talibam!『Endgame of the Anthropocene』『Hard Vibe』(JazzTokyo)(2017年)
ヨニ・クレッツマー『Five』、+アジェミアン+シェイ『Until Your Throat Is Dry』(JazzTokyo)(2015-16年)
クリス・ピッツィオコス『Gordian Twine』(2015年)
PEOPLEの3枚(-2005年、-2007年、-2014年)
MOPDtK『Blue』(2014年)
MOPDtK『(live)』(2012年)
MOPDtK『The Coimbra Concert』(2010年)
ピーター・エヴァンス『Live in Lisbon』(2009年)
MOPDtK『Forty Fort』(2008-09年) 

●川島誠
徹さんとすごす会 -齋藤徹のメメント・モリ-(2019年)
マーティン・エスカランテ、川島誠、UH@千駄木Bar Isshee(2019年)
川島誠@白楽Bitches Brew(2019年)
フローリアン・ヴァルター+直江実樹+橋本孝之+川島誠@東北沢OTOOTO(2018年)
照内央晴+川島誠@山猫軒(2018年)
川島誠+齋藤徹@バーバー富士(JazzTokyo)(2018年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
川島誠@川越駅陸橋(2017年)
むらさきの色に心はあらねども深くぞ人を思ひそめつる(Albedo Gravitas、Kみかる みこ÷川島誠)@大久保ひかりのうま(2017年)
#167 【日米先鋭音楽家対談】クリス・ピッツィオコス×美川俊治×橋本孝之×川島誠(2017年)
川島誠『Dialogue』(JazzTokyo)(2017年)
Psychedelic Speed Freaks/生悦住英夫氏追悼ライヴ@スーパーデラックス(2017年)
川島誠『you also here』(2016-18年)
川島誠+西沢直人『浜千鳥』(-2016年)
川島誠『HOMOSACER』(-2015年) 

●KみかるMICO 
むらさきの色に心はあらねども深くぞ人を思ひそめつる(Albedo Gravitas、Kみかる みこ÷川島誠)@大久保ひかりのうま(2017年) 


長沢哲+かみむら泰一@東北沢OTOOTO

2019-10-29 21:49:58 | アヴァンギャルド・ジャズ

東北沢のOTOOTO(2019/10/28)。

Tetsu Nagasawa 長沢哲 (ds)
Taiichi Kamimura かみむら泰一 (ss, ts, 石、笛)

長沢哲さんの今回のツアー最終日。このふたりの共演は5年ぶりだという。

マレットで止まっては進むドラミング、間に石を吹く音。この間合いによるはじまりもいま決めたのだろう。時間は止まってまた進むが、やがてシンバルが鳴り、バスドラも追随する。そのようにして音を集める横で、かみむらさんは長い笛を吹く。

かみむらさんはソプラノに持ち替え、キーのタップをパーカッションのように扱い、音世界をシンクロさせる。そして吹く音色はアジアや中東を想像させる。長沢さんの創る残響のなかでソプラノの音は落ち着いてゆき、ここにバスドラが事件のように介入する。大きなタムをさらに事件的に連打し発展させ、かみむらさんは痙攣し、羽化し飛び立つように吹いた。

フェーズが変わる。内部で唸り反響させるテナー、ゆっくりと繰り返し事態をわからせるドラム。ふたりは収束を見据えて動いた。

セカンドセット。ガラガラキラキラとしたドラムの音に、テナーもキーのタッピングやリードを爪で弾く音でシンクロさせる。休止というものがしばしばあり、これが関係を創りだす。いつの間にか、かみむらさんは床の感覚を音に取り入れようと言わんばかりに裸足になっている。ドラムスに対して別のかたちを創出してゆく。常に眼は長沢さんの動きを見据えている(この音楽のスピードを考えれば驚くべきことだ)。

ドラムの擦り、テナーの鎖。シンバルによる仏事のような響き、笛によるやはり宗教的な感覚。かみむらさんは前に出てきて、ソプラノの音色をベンドしてよれさせた。下から響くパーカッションに対し、ソプラノはいつまでも横滑りを続ける。アフリカン・パーカッションと共演したときのミシェル・ドネダをも思わせる。長沢さんはシンバルを連打し、突然手で止めた。聴く者に大きな余韻を残した。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4、7Artisans 12mmF2.8

●長沢哲
長沢哲ソロ~齋藤徹さんに捧ぐ@本八幡cooljojo(2019年)
長沢哲+清水一登+向島ゆり子@入谷なってるハウス(2019年)
蓮見令麻+長沢哲@福岡New Combo(2019年)
長沢哲+齋藤徹@ながさき雪の浦手造りハム(2018年)
長沢哲+近藤直司+池上秀夫@OTOOTO(2018年)
齋藤徹+長沢哲+木村由@アトリエ第Q藝術(2018年)
#07 齋藤徹×長沢哲(JazzTokyo誌、2017年ベスト)
長沢哲『a fragment and beyond』(2015年)

●かみむら泰一
李世揚+瀬尾高志+かみむら泰一+田嶋真佐雄@下北沢Apollo(2019年)
かみむら泰一+永武幹子「亡き齋藤徹さんと共に」@本八幡cooljojo(2019年)
クリス・ヴィーゼンダンガー+かみむら泰一+落合康介+則武諒@中野Sweet Rain(2019年)
徹さんとすごす会 -齋藤徹のメメント・モリ-(2019年)
かみむら泰一+齋藤徹@喫茶茶会記(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
かみむら泰一session@喫茶茶会記(2017年)
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
かみむら泰一『A Girl From Mexico』(2004年)
 


日本天狗党、After It's Gone、隣人@近江八幡・酒游館

2019-10-29 20:25:40 | アヴァンギャルド・ジャズ

近江八幡市の酒游館(2019/10/27)。

日本天狗党:
Tobio Akagi 赤木飛夫 (as)
Houhi Suzuki 鈴木放屁 (ts)
Kenichi Akagi 赤木憲一 (ds)

After It's Gone:
Homei Yanagawa 柳川芳命 (as)
Meg Mazaki (ds)
Kazunori Inoue 井上和徳 (ts)

隣人(Ring-Jing):
Raguno Miyabe 宮部らぐの (g)
Barabara Komatsu 小松バラバラ (咆哮)
Meg Mazaki (ds)

セッション: 以下のふたりが加わる
Toshihiro Yokoi 横井俊浩 (as)
Nozomu Matsubara 松原臨 (as)

近江八幡の駅近くで昼食を取り、そこからしぶい街をしぶいしぶいと呟きながら歩いているとあっという間に酒游館。赤木飛夫さんに出くわして安心した。Megさんはえっ歩いてきたんですかと笑っていた。腰の具合はだいぶ良くなったということだった。

はじめは「After It's Gone」。柳川芳命さんとMegさんは「Hyper Fuetaico」や「Heal Roughly」でデュオシリーズを展開してきた。今回は「After It's Gone」にテナーの井上和徳さんを加えた形である。はじめて聴く井上さんは低音も活かしつつ、その音色からは陽の部分を感じる。柳川さんは小刻みな音も流れるような音も吹く。決して表面的に過激でもエキセントリックでもなく、むしろ抑制されたところも大きいのだが、常に柳川さんのアルトは底からの恐ろしさを覚える。以前はアジアのブルースだと思っていた。その印象は変わらないが、それはことさらに感情を暴発させるブルースではない。対面して話すときに、穏やかなのに威圧される感覚と同じである。

Megさんはバスドラやハットを連打し、タイコを叩くときも両手で力をその瞬間に集中させる。それを左右に振らせまくる。以前はフリーフォールのようなドラムスだなと思っていたのだが、今回は円環を感じた。腰を痛めたこともあるのかと訊いてみたが、ほとんど治り椅子を高くしたくらいだ、という。

二番手は隣人。ひとりサン・ラのようなバラバラさんの挙動が気になって仕方がない(なぜか下は脛を出してスクールシューズを履いているのだが、あとで訊くと予算不足だと答えた)。それはともかく、バラバラさんの咆哮は奇妙に肉感的で、それゆえに逃げ場がない感覚で、眼だけでなく耳も貼りついてしまう。Megさんのドラムスは先とはちょっと違ってカラフルな要素もあり、それはサックスのブロウに拮抗しないからでもあった。そして宮部さんのギターは、重力を感じさせ、ドラムス的でもあった。Megさんは前に出てきてシンバルを床に叩きつけ、この奇妙な渦を裂いた。

三番手は日本天狗党。まずは鈴木放屁さんのテナーぶっ放しにのけぞる。わかってはいてものけぞる。そのあとも巨大なナタを振り回すがごとき危険極まりないテナーである。赤木飛夫さんのアルトは実に圧が強く、実に艶やかである。赤木憲一さんはバスドラを連打し、この強力なふたりに立ち向かう。三者によるエネルギーとしか言いようのない音楽。それがずっと続けられ、気がつくと頭が朦朧として異世界を旅している。脳内の何かが一掃されているような錯覚を覚える。

続いてジャムセッション。

1. 宮部+柳川
2. 井上+横井+赤木憲一
3. 鈴木+バラバラ
4. 赤木飛夫+松原+Meg

それぞれに見ごたえがあった。横井さんは端正にフレーズを吹き濁流の中に入っていく感覚。松原さんは艶々したアルトで自分の周りに力技で時空間を拓く感覚。

終わってから、うまい酒と食べ物。琵琶湖のわかさぎ、鮎、赤蒟蒻、冬瓜、いちいちうまい。日本酒は翌朝頭痛になるので抑えめにしようと思っていたが、愉しくてやはり飲み過ぎた。しかし川島誠さんもMegさんも言ったとおり、まったく翌朝残っていなかった。

ところで、この12月下旬に、日本天狗党の赤木飛夫さんと鈴木放屁さん、それから赤木憲一さんが不都合なのでMegさんが入って東京でライヴを演るそうである。思いついたので「日本天Meg党」が良いと進言した。実現するかな。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4、7Artisans 12mmF2.8

●日本天狗党
Sono oto dokokara kuruno?@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)
第三回天下一Buzz音会 -披露”演”- @大久保ひかりのうま(2017年)

●柳川芳命、Meg
柳川芳命+Meg Mazaki『Heal Roughly Alive』(2018年)
柳川芳命+Meg『Hyper Fuetaico Live 2017』(JazzTokyo)
(2017年)
Sono oto dokokara kuruno?@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)
柳川芳命『YANAGAWA HOMEI 2016』(2016年)
柳川芳命+ヒゴヒロシ+大門力也+坂井啓伸@七針(2015年)
柳川芳命『邪神不死』(1996-97年)
柳川芳命『地と図 '91』(1991年)


長沢哲ソロ~齋藤徹さんに捧ぐ@本八幡cooljojo

2019-10-29 07:32:43 | アヴァンギャルド・ジャズ

本八幡のcooljojo(2019/10/26)。

Tetsu Nagasawa 長沢哲 (ds)

演奏前に、長沢哲さんからことし亡くなった齋藤徹さんへの思いが述べられた。徹さんの気配を感じながら演奏します、鳴らす音のすべてを徹さんに捧げます、と。

長沢哲さんと齋藤徹さんとの初共演はすばらしいもので、立ち会うことができたのは幸運だった。その前に、徹さんが哲さんのCDを聴き、連絡したというのだった。未知の自分より若い音楽家との共演に意欲があった。なんどか共演もして、病気療養のときには徹さんは長崎に滞在し、そのときプライヴェートライヴもあった。

はじめはシンバルと鐘が徹さんを悼むように静かに鳴らされた。タムの響きはひとつひとつが静かに減衰し、哲さんはそれを確かめているようにみえた。やがてハットを含め音が複合的なものになり、少しずつバスドラも足されてきた。右手で木魚のごとき音、それを軸にして他の要素が加えられ発展する。その軸は左右の手の2本分となり、微妙な周波数のずれや時間のずれが、小さなうねりと大きなうねりとを創り出した。

突然不定形の大きな音が鳴らされ、続いて、鎮魂の歌のような流れがある。ドラムスで歌うことができるのかと感嘆する。大きなタムに集中するとそれは和太鼓のように聴こえ、さまざまな組み合わせの音は韓国音楽のように聴こえる。演奏はゼロへと収束する。

セカンドセットは横に置かれた小さいヴァイブを鳴らすところからはじまった(今回のツアーでも、メロディ楽器との共演のときは使わず、この日はじめての登場となったという)。石のような硬い響きであり、それまでが重力を感じさせないものであっただけに異質な響きである。またファーストセットと同様に、音を跳ねさせることによって、徹さんに呼びかけているように感じられた。

静寂を経て哲さんはブラシを取る。余計な念を棄て、叩くということに専念しているようにみえる。そしてスティックでハットを横から叩き、そのまま音を周囲から集め激しくしてゆく。横の動きも激しいものとなる。

ふたたびマレットで再始動し、バスドラを含め、下から音を揺り動かす。出来てきたのは音のプラトーのごときものであり、その上での激しい舞いを幻視する。やがてヴァイブに戻った。演奏のはじまりよりは音が堅くない。その残響が、記憶に直結するものであるように思えた。

終わってから、哲さんは、徹底的に自身の音楽を演ることで徹さんへのご恩返しとしたいと話した。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4、7Artisans 12mmF2.8

●長沢哲
長沢哲+清水一登+向島ゆり子@入谷なってるハウス(2019年)
蓮見令麻+長沢哲@福岡New Combo(2019年)
長沢哲+齋藤徹@ながさき雪の浦手造りハム(2018年)
長沢哲+近藤直司+池上秀夫@OTOOTO(2018年)
齋藤徹+長沢哲+木村由@アトリエ第Q藝術(2018年)
#07 齋藤徹×長沢哲(JazzTokyo誌、2017年ベスト)
長沢哲『a fragment and beyond』(2015年)