Sightsong

自縄自縛日記

忍澤勉『終わりなきタルコフスキー』、アンドレイ・タルコフスキー『映像のポエジア』

2022-08-14 15:57:47 | アート・映画

忍澤勉『終わりなきタルコフスキー』(寿郎社、2022年)が驚くほど実証的でおもしろい。とくに『ソラリス』や『ノスタルジア』において、最後に主人公はどこに辿り着いたのだろうかということが、感覚的な衝撃とは対照的に不明確で気になっていた。つまりクリスは惑星ソラリスから地球に戻らずソラリスの一部とさえ化しているのだし、ゴルチャコフもロシアには戻らず死に向かう。この「故郷に戻らない」ということによって、胸が張り裂けそうなほどの哀切な感情を掻き立てられたのだった。

さらに、未読のままだった『映像のポエジア』が文庫で再刊された(ちくま学芸文庫、原著1988年)。芸術家は自分自身の内的なイメージを提示すべきだということ、それもタルコフスキーの映画に対してあれはなんだったのだろうとずっと考えたあとであれば納得できる。また、『ソラリス』原作を書いたスタニスワフ・レムは未知から人間が得るもの、タルコフスキーは内的世界との往還を大事にしていたと見立てるなら、ふたりの対立もまた不可避であっただろうとも思える。

●参照
マルク・ペストラク『ピルクスの審問』、スタニスワフ・レム『宇宙飛行士ピルクス物語』