ペーター・ブロッツマンのシカゴ・テンテットによるライヴDVD『Concert for Fukushima Wels 2011』(Trost、2011年)を観る。タイトルの通り、東日本大震災のあと、オーストリアにおいて、チャリティー目的で開催されたコンサートである。
Peter Brötzmann (reeds)
Ken Vandermark (reeds)
Mats Gustafsson (sax)
Joe McPhee (tp)
Johannes Bauer (tb)
Jeb Bishop (tb)
Per-Åke Holmlander (tuba)
Fred Lonberg-Holm (cello, el-g)
Kent Kessler (b)
Paal Nilssen-Love (ds)
Michael Zerang (ds)
Guests:
近藤等則 (el-tp)
八木美知依 (17 & 21 string koto)
大友良英 (el-g)
坂田明 (reeds)
このきら星のごとく並ぶメンバーを見よ。ひとり、ふたり来日するだけでも駆け付けていくほどの、一騎当千の面々である。よほどの企画がなければ、日本でこのコンサートを開くのはまず難しいだろう。
演奏は、日本側のゲストをひとりずつ迎える形で行われている。つまり、4曲である。
近藤等則はエレクトリック・トランペットを吹く。かすれたような音色とエコー。ジョー・マクフィーのポケット・トランペットの鮮やかな音色と、明らかに対照的に響くのが面白い。ヨハネス・バウアーは、相変わらず、踊るようにトロンボーンを吹く。
八木美知依は大音響での集団即興に負けじと加わるというより、静かな中で、一音一音を大事にする箏の音色を響かせる時間を、存分に持たされる。轟音との対比がとても効果的で、また、フレッド・ロンバーグ・ホルムのチェロやエレキギターとのコラボレーションが、意外なほど美しい。
大友良英はエレキギターだけでの勝負。もはや、彼の音色を皆が固唾を呑んで見守る印象がある。
トリの坂田明は貫禄そのもの。唐突に鈴を鳴らし、物凄い勢いでアルトサックスを吹きはじめる。ペーター・ブロッツマンとのアルト・ブラザーズ対決には笑ってしまった。マッツ・グスタフソンも俺が俺がと主張する。
ただひたすらに愉快な105分。演奏者たちがお互いの演奏を観てにやりとする、エクスタシーの時空間でもある。
●参照
○ペーター・ブロッツマンの映像『Soldier of the Road』
○ペーター・ブロッツマン@新宿ピットイン(ニルセン・ラヴ、ロンバーグ・ホルム、八木美知依参加)
○ペーター・ブロッツマン+佐藤允彦+森山威男『YATAGARASU』
○ペーター・ブロッツマン
○エバ・ヤーン『Rising Tones Cross』(ブロッツマン参加)
○セシル・テイラーのブラックセイントとソウルノートの5枚組ボックスセット(ブロッツマン参加)
○ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(ブロッツマン、坂田明参加)
○ハン・ベニンク『Hazentijd』(ブロッツマン参加)
○ジョー・マクフィー+ポール・ニルセン・ラヴ@稲毛Candy
○ジョー・マクフィー『Sonic Elements』
○『Tribute to Albert Ayler / Live at the Dynamo』
○ウィリアム・パーカー+オルイェミ・トーマス+リサ・ソコロフ+ジョー・マクフィー+ジェフ・シュランガー『Spiritworld』
○ジョー・マクフィーの映像『列車と河:音楽の旅』
○ジョー・マクフィーとポール・ニルセン・ラヴとのデュオ、『明日が今日来た』
○ザ・シング@稲毛Candy(マッツ・グスタフソン、ニルセン・ラヴ)
○マッツ・グスタフソンのエリントン集
○大友良英+尾関幹人+マッツ・グスタフソン 『ENSEMBLES 09 休符だらけの音楽装置展 「with records」』
○ポール・ニルセン・ラヴ+ケン・ヴァンダーマーク@新宿ピットイン(坂田明、八木美知依参加)
○4 Corners『Alive in Lisbon』(ヴァンダーマーク、ニルセン・ラヴ参加)
○スクール・デイズ『In Our Times』(ヴァンダーマーク、ニルセン・ラヴ参加)
○浅川マキ『幻の男たち』 1984年の映像(近藤等則参加)
○浅川マキ『ふと、或る夜、生き物みたいに歩いているので、演奏者たちのOKをもらった』(坂田明参加)
○嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』(近藤等則参加)
○坂田明『ひまわり』
○大森一樹『風の歌を聴け』(坂田明出演)
○ジャン・ユンカーマン『老人と海』(坂田明参加)
○ジョン・ブッチャー+大友良英、2010年2月、マドリッド
○井上剛『その街のこども 劇場版』(大友良英参加)
○テレビドラマ版『その街のこども』(大友良英参加)
○テレビ版『クライマーズ・ハイ』(大友良英+サインホ)
○サインホ・ナムチラックの映像(大友良英参加)
○『鬼太郎が見た玉砕』(大友良英参加)