君が望む永遠:速瀬水月についての疑問

2006-03-07 01:44:01 | 君が望む永遠
これまで、君望をプレイするにあたって最低限必要な理解の枠組みを提示してきた。そこでは「鳴海孝之の文脈」、言いかえれば主人公との付き合い方が問題になったわけだが、今回は一歩踏み込んでヒロインの速瀬水月のとらえ方について書いてみたい。そこで、私の浅い読みを叩き台にしながら、水月の孝之に対する感情を中心とした疑問・結論を提示することにしよう。


私が去年二回目のコンプリートをした時、より多くのことが見えるようになっていたけれども、とうぜん疑問がないわけではなかった。その中でとりわけ大きなのは、水月があれほどまでに孝之を愛するのはなぜか?というものだった(メインヒロイン三人以外は「何で孝之が好きになるんだ」と疑問に思わないでもなかったが、そもそもシナリオに無茶な部分があるのでそこまで大きなものにはならなかった)。遥ならまだわかる。目覚めて間もない彼女にとって、第二章の三年後は昨日のことと言ってもいいし、また認識がはっきりした後でも、病人としての心細さや行動範囲の狭さから、孝之以外に頼る(もっと言えば好きになる)異性が出てこないのはうなずける。つまり、孝之のみに目を向け続ける強い必然性があるのだ。

一方水月はどうだろうか?彼女は会社勤めをしているし、また以前ほどではないにせよ社交的な性格である。異性と出会ったり声をかけられる機会は少なくないと思われる。さて問題は、そういった状況にあるにもかかわらず、なぜ彼女が他の男とくっつくという展開がないのか、ということである。第三者的に見れば、あれだけの修羅場を味わっているし、孝之はいつも揺れ動いているのだから、彼女がとっとと孝之に見切りをつけて別れるなり、他の男を見つけるなりしてもまったく不思議ではない(苦悩を共にする遥との関係はまだしも、他のキャラについては揺れる孝之が理解できないとして切り捨ててもおかしくない)。ならば、彼女をそこまで孝之に縛り付けるのはいったい何なのだろうか(なお、この時は思いつかなかったが、第一章で、彼女が水泳関係の人間と何となく付き合い、すぐに別れてしまったというエピソードも、多少は彼女の行動原理に影響を与えているのかもしれない)?

当然、「単に出来がわるいだけ」という可能性も考慮していたが、それを確定させることはどうしてもできずにいた。というのも、遥ルート終盤における「私には孝之しかいない」というセリフが引っかかっていたからだ。この強烈な主張ゆえに、ご都合的な展開・設定と断定することはためらわれたのだ。結局、本編をプレイするうちは答えを出せずにいた。だが君望のアニメ版を見たことで、その疑問は一気に氷解することとなった。(続)

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