さて一昨日に続きForest覚書第二弾だよと。
読み返してみると、本編の演出意図を理解するために元ネタになった作品やらメタフィクション、あるいは認識のレイヤーについて言及する作品群を上げているが、なんか雑然としていておもしろくも何ともないね。これだったら、元ネタがどのように改変されているのか?そしてその受け取られ方は?といった視点で書いた方が広がりがあると思うのだが(例えば『三国志』と『三国志演義』のように)。
また、前回も言及したように、様々な視点とそれゆえオムニバスのように進む話はベンヤミンの「砕け散った瓦礫」を思わせて・・・とかモナド化した現代社会を象徴・・・とかそれっぽいことを言ってみることもできるが、まあはっきり言って牽強付会やね。最後に灰流の話に収斂するところからして、「ひぐらしのなく頃に」や「YU-NO」のごとく、その断片化された描写そのものに重大な主張(あるいはフィロソフィー)が込められているわけではないし、また意図せざる効果というのも大してあるようには思われないので。よって探求しても「ゆめにっき」的に深読みホイホイの効果を果たすだけだろう。
っつーわけで、キャラをいじって新しい「リドル」作りに勤しんだ方が実りがありそうな感じがするねワシは。原文はのっけから謎の状況説明というか言い訳から入っている(笑)が、とりあえずやる気があるのかないのか今ひとつよくわからない覚書であることだけは確かだ。
[原文]
※あー頭いて。ウイスキーとマッコルリとカルーアをちゃんぽんしたせいで頭がガンガンするわ。つーわけで文が乱れてるかもしれんが勘弁しておくれやす。
クリアした…まあメタフィクションというのは理解できた。あと時間軸のねじれとか(それはつまり話がフラグメントであることに起因しているのだが)。重要な点として、話が「思い出す」ものであること、「はじまりの物語」、時計塔、を指摘しておきゃー枠組みとしては理解できるんじゃねーかと思ふ。
さて、メタフィクション自体はもはや手垢が付いてしまい、しかも読者の高度な理解を要求しがちなので最近は敬遠されている部分もあるが、そんな中でよくもエロゲーでやるもんだと妙に感心した。ドラマツルギーとか記号論とか好きな人にはおそらく堪らない作品だろう。それぞれが何のメタファーなのか解釈を重ねていくだけで真面目に論文が書けるだろうね。読んでないので偉そうなことは言えないが、『ユリシーズ』とかは確かこんな感じじゃなかったけか。日常の神話化みたいな。もっとも、Forestの場合は日常の物語化といった感じだが。
また、よく読んでる筒井小説で言うと『夢の木坂分岐点』が近いかな。内世界と外世界、フラグメントとしての物語、(この話でそう言っていいのか疑問だが)時間軸の錯綜といった共通要素がある。また、個々のフラグメントが全体を構成しているという点、てゆうと当たり前すぎるが、うーーん、人は「かけら」より成り立ってるとでも言えばいいんかねえ。あと人によっては『虚構船団』の「神話」を思い起こす人もいるかも。部分的に似てるって意味では『虚人たち』、『脱走と追跡のサンバ』も挙げられるなあ。ところで筒井小説に詳しい人は、それらが読者を悩ませてきた作品群であることがわかると思う。つまり、Forestもその類だってことですw
何でこんな類型的な小説を挙げてんのかってゆーと、内容をそのまま説明しても理解されないと思うからだ。あと、かなり肝心な点について。本作は童話によって構成されている部分がかなりあるが、それが本質と思ったら見誤る。興味を持って童話に手を出すのはいいが、それは章ごとの葉(すなわちフラグメント)をバラバラに見るのと同じで、本質から遠ざかる危険性をはらんでいる。個々の話の展開の面白さを知るためには原典を読むのはいいことだと思うけど、それは話の構造を逆に見えにくくすることもある、と指摘しておきたい(つってもForestをきっちり消化できたプレーヤーにこんな指摘は蛇足だし、まるっきり理解できなかったプレーヤーにはそもそもこの記事の始まりから理解されているか怪しいのだが…)。
あー、でも『不思議の国のアリス』は読んでおいたがいい鴨。特に『詳注 不思議の国のアリス』か『新注 不思議の~』がオススメ。というのも、Forestの物語が紡ぎ出されていく過程は、アリス・リドルと先生のルイス・キャロルが二人で「アリスの物語」を作り上げていったのと同じだから。これは(おそらく)物語上二番目に重要な要素なので、知らないとわけわかんざきになるだろう(一応作中でも共通性が指摘されてはいるけどね)。「コーカス・レース」や言葉遊びなど、かなり借用されている要素が多いので、これを読んでおくだけでもだいぶ違うんでねーかと思う。それ以外の出典、例えば『ナルニア国物語』とかについてはこのページを参照しておくんなまし。
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