モクレンの仲間で遅い花はホウノキです。5月下旬から6月上旬に花が見られました。高木であるため花を間近で観察することはなかなかできませんが、偶然手ごろな花に出会いました。里山フィr-ルドミュージアムには異常なほど個体密度が多い場所でこのエリアの一つの特徴になっています。ホウノキの多さは里山の手入れの無さの一つの指標になってはいないかなどと考えているのでしょうが、果たしてどうでしょうか。ところでホウノキの花の香りは好みもあるでしょうが比較的いい香りでこの時は他の人には味わえないちょっとした至福の時間を得ることができました。
ホウノキの花のアップです。赤いものが雌しべで、柱頭がくちばし状に湾曲しています。下部の黄色のものは若い葯でまだ花粉は出していないようです。この花はもう香りを出していましたからポリネーター(花粉媒介者)の昆虫はやってくることでしょう。花を見る限り雌性先熟でしょうか。
5月下旬八木鼻に行った時に山道脇に見かけない植物がありました。カナウツギというバラ科の小低木で、なかなか珍しい種です。県内ではこの地域でしか見られないという話です。しかし、太平洋側には結構普通にみられる種だそうです。なぜ県内では中越のこの狭い地域にしか分布していないのか?合理的な説明ができない種ですね。こういう分布を「隔離分布「といいます。
このツツジ科の種も地味ですね。花が咲いているのかどうか、そもそも存在しているかどうかが見過ごされがちです。やや奥山に行くと個体数が多いのですが浅い里山は数は少ないからなおさらのこと。有毒植物でこの葉などを乾燥粉末にして水に溶かして殺虫剤に利用するのだそうですが、その粉が鼻に入るとくしゃみが止まらないとか。名前の由来とは面白いですね。
山菜として有名なコシアブラの近縁種でタカノツメがあります。コシアブラが5枚の小葉があるのに対してタカノツメは3枚です。これは下田の山で見かけたものですが、コシアブラに比べ幾分深山に自生しています。こちらも大きな樹になりますが山菜としての話はとんと聞きませんね。味に違いがあるのでしょうか?性質はよく似ているように見えるのですが・・・。
里山には結構多くある花ですが、この季節にはあまり山の中に入らなくなってくる季節なのでしょうか、話題に上がりません。ヤマツツジ以外に林の中は色づくものがないせいか見過ごされがちです。しかし、よく観察すると様々な造形の持ち主が精いっぱいのパホーマンスで訴えているのですが・・・。ウラジロヨウラクもぼんやりとはしていますが紫色の可愛い花を結構たくさん咲かせているのですが・・。
確かに葉が展開していないかしはじめた季節に比べると6月の林の中は色彩に欠けます。もう少しはっきりとした色彩の持ち主ならもっと人気が出そうな花だと思いませんか?がくが異様に長いのが特徴で「ガク」ウラジロヨウラクとなります。そういえばツツジの仲間が里山にはいろいろあるのですがこの季節次々に花を見せてくれます。あまり派手さはありませんが・・・。
里山の登山道わきにツクバネウツギの花が見られます。以前取り上げたことがある種ですが、ウツギは「空木」で茎が中空だから、ツクバネはがくが羽根つきの羽を連想することから来ています。日本海側の種で葉が大きく花も大型です。日本海側にある種は太平洋側の近縁種に比べ大きくなるのが一つの共通点のようです。
花は薄い黄色。クリーム色といえばいいのでしょうか?まれに桃色がかった花があるのだそうです。一度見てみたいと思います。そういえば、太平洋側の種でツクバネウツギというこの種の近縁種がありますが、福島でこの種の桃色の花を見たことがあります。これもまれに出現するという話ですから幸運な機会にめぐり合わせたということですが、ウゴツクバネウツギもきっとあるはずですから桃色の花に出会えることを期待しています。
木陰に清楚な花が咲いています。長岡では2ケ所自生している場所を把握していますがいずれも個体数は少なく貴重な植物ですね。県内の分布も村上地域や糸魚川地域で報告がありますが幾分海岸に近い地域に点在している種のように見えます。人里近いところの個体は持ち去られてしまってなくなったのも多いのでしょう。綺麗な花がどんどん自生地から消えていく現実は本当に大きな問題です。持ち帰っても育てられないのがほとんどですから、きれいなものほどそっとしておいてあげてほしいものです。花を見たかったら「自生地まで行く」という姿勢が大切ですね。
山地の適湿地に自生するアヤメ科の種。県内の山地に見られます。といっても見るのはいつも魚沼地域で正確な分布状態は把握していません。今回は下田の袴岳の稜線。2年前の大雨で登山道が崩れ、崩壊地を巻くように新しく整備してある場所がヒメシャガの自生地で何株かのヒメシャガが踏まれていたり、どうやら削り取られた可能性があるのがなんともやるせない思いでした。ちょうど目線に良い株があるので写真を取るには好都合ですが、いずれ誰かに持ち去られるような気がしました。
可愛い花ですから人気のある山野草で市販されているほどです。花は色彩を除けば帰化植物のシャガのを小型にしたもの。花の色々な付属物ももっています。シャガは3倍体種子ができませんがヒメシャガは種子を形成します。葉の質感はかなり差がありますね。厚手で光沢のあるシャガに比べ、ヒメシャガは薄く草質。
クマヤナギに比べ小型で花や実の付き方が細長く見えるホナガクマヤナギ。久しぶりの確認です。丘陵公園の里山フィールドミュージアムの江里奈にはクマヤナギが沢山あってそれも大型の蔓の個体もありました。過去形なのは蔓処理の整備と称して切られてしまったためです。目印の赤テープを巻いてい置いたのに・・・。それはそうと、クマヤナギは全県的に広く分布しているのにホナガクマヤナギは信濃川のを境に北側に分布しているのに西側のエリア糸魚川の姫川までの間は空白地域で確認されていないという変わった存在なのです。どうしてこういう分布をするのかの一つの考え方にフォッサマグナの存在がある可能性があります(西側の境界は姫川東側の境界は信濃川に沿ったもの)。いろいろな角度から調べなければならない問題ですが、この種の生き様とフォッサマグナが関係しているかもしれないと思うとロマンを掻き立てられますね。