高山植物の定番チングルマです。花の早い種ですが、残雪が遅くまであった場所はまだ花盛り。夏山に登って花がいっぱいある光景はそれほど経験したことがなく、結構新鮮な感じがします。草本のように見えますがれっきとした落葉低木です。雪消えと同時に葉を展開し花を咲かせます。個人的にはこの種がダイコンソウ属に分類されているのがいまだにしっくりこないでいます。不勉強のせいですね。
早めに咲き出した花はすでに散って実の時期を迎えているものもあります。チングルマはこの実の林立し風になびく姿の方が印象的で名前の由来にもなっています。そういう姿が恋しくてまた今年も高山に足を運んでしまうのです。しかし、この実もそう長くあるわけでもなく、10日もすれば熟して風で飛んで行ってしまいます。
8合目からの登山でしたからナナカマドには会えませんでしたが、高山種の一つウラジロナナカマドに会いました。花穂は上向きで花が咲いています。これだけでタカネナナカマドと区別ができて便利です。この種は花の付け方には分かるような適応変化はしていないようですが見えないところで高山に適応しているのでしょう。
ナナカマドの仲間も面白いものが出てきます。普段見慣れたナナカマドとは異なりみんな灌木状態。花穂が垂れ下がるのが特徴とされるタカネナナカマドです。その他の種はいずれも上を向いて花を咲かせます。どうしてこういう性質を身に着けたのでしょうか。高山と垂れ下がる性質とは関係あると考えるのが自然ですが、高山種でも上を向いて咲く種もありますから適応にもいろいろな作戦があるのでしょう。
9合目あたりでしょうか岩場の低木帯にミヤマハンノキに出会いました。先ほどのヤハズハンノキとの比較ができていいタイミングでした。葉は先端はとがり基部が浅い心形になりますから、ヤハズハンノキとの違いは明らかです。
雄花もついていました。開花最中で花粉がこれから飛ぼうというところでしょうか。もう少し日差しがあり乾燥すればはじけることでしょう。尾状花序といってもせいぜい3cmくらいで、あまり長くありません。生育環境が影響しているようです。
深山から高山に生える種で結構高木になるのですが、灌木状態の個体ですから花などを観察するには格好の材料です。雌花があるのですから、雄花もと探したところ一見昨年の古い果実かとも思えたのですがよく見るとこれが雄花の枯れたもののようです。何とか落ちずに枝先にとどまっていてくれました。ハンノキの雄花は落ちやすいという印象なのですが、この種は比較的枝先にとどまる性質があるようです。