散策路はほとんど遮るものもないササ原の中を歩くのですが、ところどころ小沢が流れている場所を横切る辺りが林になっていたり深くえぐれて岩場になっていたりでこの散策路のアクセントになっています。そんな小さな岩場にタケシマランが赤い実をつけていました。タケシマランは亜高山帯に見られる種の一つで花は目立たないのですが夏から秋は赤い美しい実をつけ楽しませてくれます。
タケシマランが生育する同じ岩場にオオタケシマランも見られました。両種を見るのに良い観察場所ですが、少し近づきがたい地形で写真を撮って拡大しての観察です。葉は茎を抱き分かりづらいのですがオオタケシマランの花茎は途中で屈折します。
低山帯でも見られるタニソバがすでに色づきながら花を見せています。花先が少し色づいています。小さいため開花しているのかいないのかはっきりしません。山野に普通に見られる種とも言われますが、ミゾソバと違い奥山に見られる種の印象があります。そのためかタニソバが出てくると里山を歩く感覚と異なり少しハイな気持ちで散策している自分がいます。
新潟県内ではオオカニコウモリが普通でカニコウモリを見かけないのですが、野反湖にはカニコウモリが自生していました。湖畔をめぐる小さな林の中にある散策路脇にひっそりと花を咲かせていました。カニコウモリは花が長い穂状に付きますが、オオカニコウモリは花は上部にまとまって付くので一見して分かります。
コバギボウシも里山にも普通に見られる種ですが野反湖周辺にも見られます。湿った場所が好きで湿地周辺に多く見られますが必ずしも水際というわけでもなく日陰の敵湿な場所でも生育しています。夏の花で花の少ない季節の里山を彩る花。青くすがすがしい花でこの季節には無くてはならない種の一つです。
高原の秋の花にワレモコウがあります。野反湖は夏の盛りでしたがもうワレモコウは花盛りでした。決してあでやかな花ではありませんが人気が高い花でこの花を見ると心が和むと話される方が多くいます。赤い花が並ぶ中で、「吾もまた紅なり」とワレモコウ自身が唱えたことが名の由来であるという説があります。面白い説ですが、薬草になることから平安時代には「割れ木爪(われもこう)」と言われていたとのこと。「木爪」は「木香」のことででキク科の線香にもなる種だそうです。
ワレモコウ属はバラ科に位置付けられますが多くのバラ科の種とは異質な花の形質をしています。両性花ですが花弁はなくがくとめしべとおしべからなる多数の花が集まった花序を作ります。咲き方も種によって下から咲くものと上から咲くものがあります。ワレモコウは上から咲くグループです。
野反湖の海抜はおよそ1500m。いままでミソガワソウに出会ったのは2000mを超す高山帯ですから少し意外でした。県内では出会ったことはありませんがこの様子だと深山の渓谷沿いなどに自生している可能性があるかもしれませんね。