山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

吹き溜まりの中の美しい心たちは人々に勇気を与える

2019-11-15 09:16:11 | アート・文化

 帚木蓬生(ハハキギホウセイ)の小説「閉鎖病棟」が映画化(監督・平山秀幸)された。たまたま原作を読んでいたので、タイトルが暗いのがもったいないなーと思っていた。作者は精神科医でもあったので、登場人物の患者の多くはモデルがいるという。「事情をかかえていない人間なんていない」現実の閉塞した管理社会は、閉鎖病棟そのものだ。それを感じさせない仕組み・世論づくりにマスコミも行政も汲々としている。原作を解説した作家・逢坂剛の指摘はそのことだった。

  

 原作では幻聴に悩む青年のピュアな目線から見た病棟だが、映画ではやむおえず殺人を犯してしまった秀丸さん(笑福亭鶴瓶)が主人公だ。彼は病棟内ではみんなから信頼厚い存在だった。人望集めていたその彼が病院内で起こした事件とは、映画を観るか原作を読むしか感動はない。映画のパンフレットに載っていた「居場所をなくした人々が、ここで出会い、ここで癒され、ここからまた自らの人生へ旅立っていく」というのが、テーマに違いない。

 

 

 医師の鎌田實さんは「<それぞれの朝>という副題が生きている。閉鎖病棟の中で生活する患者たちに、それぞれの朝があるだけでなく、息苦しく呪縛された世界で、今を生きているぼくたちすべてに、それぞれの朝があることに気がつく」という珠玉のコメントを寄せているがこれはさすが鎌田ロマンだ。

 最終シーンで車いす生活を長く続けてきた主人公(死刑確実か?)が、自分の足で立ち上がろうと必死にもがく場面があった。そのシーンこそ閉塞した社会に生きる私たちへ伝えたかった希望のメッセージに違いない。(2015.3.12マイブログ参照)

  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする