監督:『Hotel Mumbai』
監督:アンソニー・マラス
脚本:アンソニー・マラス/ジョン・コリー
撮影:ニック・レミー・マシューズ
出演:デーヴ・パテール/アーミー・ハマー/ナザニン・ボニアディ/アヌパム・カー
2018年/オーストラリア・インド・アメリカ
「挫折」したテロリストについて
2008年に起こったムンバイ同時多発テロを基に制作された本作はなかなかのエンターテインメント性を発揮しており、最後まで緊張感が途切れることがない佳作である。
主人公の靴の話が興味深い。主人公でタージマハル・ホテルのウェイターを務めているアルジュンは子供が生まれたばかりで気を取られてしまい、カバンから片方の靴が落ちてしまい、ホテルに着いてから靴がないことに気がつく。
サンダルを履いて誤魔化そうとするのだがチーフシェフのヘルマント・オベロイは「お客様は神様です」がモットーの厳格な上司でミーティングでアルジュンの靴を見逃さず、アルジュンに帰るように促すのだが、子供が生まれたばかりということで予備の靴をはいて仕事に就くことになる。
そこに4人のテロリストは侵入してきて、銃弾や手榴弾を放ち次々と殺していく。アルジュンが冷静な判断でゲストを安全な場所に導くのはオベロイのゲストに対する姿勢を見習ったものであり、防犯カメラの映像が見れる監視室で窮屈だった靴を脱いで裸足になった後は「成長」したアルジュンが活躍することになるのである。
テロリストの一人であるイムランがザハラを殺せなかった理由は、アラーを信仰している女性は殺せなかったからなのだが、ザハラがまだ赤ん坊の息子のキャメロンと再会し、家に帰ったアルジュンが赤ん坊の娘と再会するシーンと対照させる演出も効果的だった。
ところで4人のテロリストの最期は『俺たちに明日はない』(アーサー・ペン監督 1967年)のラストを想起させた。テロリストではあっても彼らはまだ未成年で報酬として家族にお金が支払われる代わりにテロを起こしたのであり、結果的に「ボス」に裏切られて殺され挫折したからである。