原題:『今夜、世界からこの恋が消えても』
監督:三木孝浩
脚本:月川翔/松本花奈
撮影:柳田裕男
出演:道枝駿佑/福本莉子/古川琴音/前田航基/西垣匠/松本穂香/水野真紀/萩原聖人
2022年/日本
小説と日記の「塩梅」について
作品冒頭で主人公の高校生の日野真織が目覚めた朝は2022年某日。どうやら真織は自分が患っていた症状が改善していることを実感している。
真織が人を助けようとした代わりに交通事故に遭い、前向性健忘症を患い、一度寝てしまうとその日のことを忘れてしまうという症状に悩まされるようになったのは2019年4月27日。それから間もなくして5月から日記をつけることで記憶を補うことを始める。そんな時に学校の大講堂で声をかけてきたのが神谷透で、二人は恋人の「フリ」をして交際することになるのである。
真織と透の構成は紆余曲折しながらも順調に進んでおり、8月の花火大会の夜に二人はキスをすることになるのであるが、ここで誰もが違和感を抱かざるを得ない。何故ならば真織にとって透は毎朝目覚めた時には赤の他人であり、例え、日記を通じて透の情報を頭に叩き込んだとしても気持ちは追いつかないはずなのである。
だから詳細は避けるが後半の二人の親密さは透の姉で芥川賞作家の西川文乃が真織の日記に書いたフィクションだと思ったのだが、「神谷透くんのことを忘れないで」と書かれたメモが存在するということは二人がキスをした事実は存在したということなのである。
このように原作のメインテーマである小説と日記の違いとそれぞれの可能性の追求の描写に粗はあるものの、よくできた青春映画だと思う。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/moviewalker/entertainment/moviewalker-1095641