原題:『海の沈黙』
監督:若松節朗
脚本:倉本聰
撮影:蔦井考洋
出演:本木雅弘/小泉今日子/仲村トオル/清水美砂/中井貴一/萩原聖人/村田雄浩/佐野史郎/田中建/津嘉山正種/石坂浩二
2024年/日本
中途半端な「贋作」について
思っていたのと違う! 主にテレビドラマの脚本を執筆していた倉本聰のシナリオだから「物語」が語られるのかと思いきや、主人公の津山竜次が登場すると妙に話が「美とは何か?」と抽象的になってしまった。その上、津山は絵画のみならず刺青も手掛けており、そうなると「筆」だけの問題ではなく、「キャンバス」や必ず衰える「肌」の問題にもなってしまうからさらにややこしい。
例えば、絵画の価値というものが作家の知名度や批評家の評価から外れた場所にあるとして、津山が作品の制作に苦悩してしまう理由は何なのだろうか? それはもちろん津山が自分の思いのままに作品を描いているのではなく、「他人の目」を気にして描いているからではないのだろうか? 津山はそのことに気づいておらず苦悩が空回りしているのである。気の毒で見ていられなかった。
因みに本作における「贋作」とは日本を代表する画家の田村修三の「落日」という作品に津山が「描き加えた」というものである。津山はゴッホやモネやダ・ヴィンチを目指しているようなのだが、ゴッホとモネは印象派で抽象的な津山の作風と似ているものの、ダ・ヴィンチはルネサンス期の古典派だから作風が違うのである。ここに本作の中途半端さが凝縮されているように思われてならない。
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