MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『マイティ・ソー バトルロイヤル』

2017-11-20 00:46:42 | goo映画レビュー

原題:『Thor: Ragnarok 』
監督:タイカ・ワイティティ
脚本:エリック・ピアソン
撮影:ハビエル・アギーレサロベ
出演:クリス・ヘムズワース/ケイト・ブランシェット/トム・ヒドルストン/マーク・ラファロ
2017年/アメリカ

「ノアの箱舟」の物語とロックの関係について

 雷神のソーの前に表れたのは死の女神でソーの実の姉のヘラだった。驚くべきことにヘラは無敵の武器だったソーのムジョルニアを粉々にぶち壊してしまい、どさくさに紛れてアスガルドに乗り込むと征服を目論見る。
 その後の目まぐるしいストーリー展開は敢えて端折るが、それにしてもいままで頼っていたムジョルニアを破壊されてしまってはソーはその存在意義さえ危うくなる。いよいよヘラにアスガルドを奪われようとした時、ソーの取った行動は奇策と言ってもいいだろう。ソーはムスペルヘイムにいた巨人のスルトに力の源となっていた王冠を返すことでスルトを復活させて「ラグナロク(世界の終わり)」を起こさせる間に、住民たちとグランドマスターの宇宙船に避難して、ヘラと共に母星のアスガルドが滅ぶ様子を目撃する。レッドツェッペリン(Led Zeppelin)の「移民の歌(Immigrant Song)」がテーマソングとして流れている理由がそこにある。

Led Zeppelin - Immigrant Song (Live Video)


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『50年後のボクたちは』

2017-11-19 00:44:05 | goo映画レビュー

原題:『Tschick』
監督:ファティ・アキン
脚本:ラース・フーブリヒ
撮影:ライナー・クラウスマン
出演:トリスタン・ゲーベル/アナンド・バトビレグ・チョローンバータル/メルセデス・ミュラー
2016年/ドイツ

「イージー・ライダー」たちの成長物語について

 本作を『スタンド・バイ・ミー』(ロブ・ライナー監督 1986年)と比較する論調が目立つのだが、寧ろハーレーダビッドソンをラーダ・ニーヴァに変えた中学生版の『イージー・ライダー』(デニス・ホッパー監督 1969年)のように見える。だからといっていわゆるアメリカンニューシネマのような挫折の物語ではない。確かに主人公で2002年5月14日生まれのマイク・クリンゲンベルクはクラスの人気者のタチアナの精密な似顔絵を描いていたにも関わらずフラれるという挫折は味わっているが、転校生でユダヤ系ロマのアンドレイ・チチャチョフとの旅は、途中でイザ・シュミットとの出会いを経て、クライマックスで『イージー・ライダー』のラストのようなシーンを迎える。ところがマイクとチックは相手のトラック運転手の「自滅」により難を逃れる。
 そこで2人は別れ、夏休みを終えて一皮むけたマイクはタチアナの心を掴むのであるが、14歳で「裁き」を経て既に大人になっていたマイクはチックとイザと50年後の7月28日の「約束の地(Promised Land)」を胸に生きていくのである。
 本作のテーマ曲として流れるリチャード・クレイダーマン(Richard Clayderman)の「渚のアデリーヌ(Ballade pour Adeline)」はたまたまディーゼル車に残されていたカセットテープに収録されていたものだが、後にチックの性癖を暗示させ、さらにエンドロールでステレオラブ(Stereolab)の「フレンチ・ディスコ(French Disko)」のカヴァーヴァージョンを流す監督のセンスの良さを感じさせる。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』

2017-11-18 00:39:14 | goo映画レビュー

原題:『It』
監督:アンディ・ムスキエティ
脚本:チェイス・パーマー/キャリー・フクナガ/ゲイリー・ドーベルマン
撮影:チョン・ジョンフン
出演:ジェイデン・リーバハー/ビル・スカルスガルド/フィン・ウルフハード/ソフィア・リリス
2017年/アメリカ

 「それ」の正体がなかなか明らかにならない理由について

 スティーヴン・キングの原作である本作は当然のことながらホラー作品ではあるものの、例えば主人公のビル・デンブロウをはじめとする少年たちの「冒険譚」は『スタンド・バイ・ミー』(ロブ・ライナー監督 1986年)を、シンクから噴き出る血で浴室と共に血まみれになる少女のベバリー・マーシュのシーンは『キャリー』(ブライアン・デ・パルマ監督 1976年)を想起させるように、本作はスティーヴン・キングの小説の集大成となる作品になると思われるのだが、本作は最後に「Chapter 1」として終わってしまい、ペニーワイズの正体は再来年に公開される続篇を観なければ分からないままである。イギリスのロックバンドXTCの「ディア・ゴッド(Dear God)」の使い方は秀逸だった。
 それにしても原題である「It」を「それ」と訳する習慣はいつからついたのだろうか。辞書にも載っているように「It」は鬼ごっこの「鬼」という意味があり、実際にペニーワイズ は子供たちにつきまとって鬼のように振る舞っているのだが、字幕でも「それ」と訳してしまっており、個人的にはとても違和感を感じる。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『リンキング・ラブ』

2017-11-17 00:34:59 | goo映画レビュー

原題:『リンキング・ラブ』
監督:金子修介
脚本:金子修介/長谷川隆
撮影:釘宮慎治
出演:田野優花/石橋杏奈/白洲迅/中尾明慶/西村まさ彦/渡辺徹/浅田美代子
2017年/日本

二次元アニメと生身のアイドルの「リンキング」について

 本作は監督の金子修介の「アイドル論」であるらしい。そうなると興味深いのは主人公の真塩美唯の父親の真塩健一郎が夢中になっているアイドルグループの「CoCoRibbon」という名前である。「CoCoRibbon」とは1990年前後に活躍したアイドルグループの「CoCo」と「ribbon」から取られていることは容易に分かる。興味深いのは「CoCo」も「ribbon」も秋元康が関わっていないアイドルグループだということである。
 この「CoCoRibbon」のスタイルの「古さ」がやがて26年後の両親の離婚につながったと感じた美唯が再びタイムスリップして「AKB商法」を伝授することになるのであるが、よく分からないのは、美唯のスマートフォンでAKB48の存在を知った牛尾貴文がすぐに「USО48」なるグループを立ち上げてしまい、美唯が2017年に戻るとアイドルの「暗黒時代」になっていたというストーリーの流れなのだが、美唯の部屋にはAKB48のCDやグッズの代わりに「USО48」のCDやグッズが揃っており売れているのではあり、再び1991年に戻る時に美唯は「USО48」のCDでASG16の基本を形作るのである。
 最終的に「恋のフォーチュンクッキー」を歌って踊る由美子に感銘した健一郎がプロポーズすることになり大団円を迎えることになるのだが、何故「CoCoRibbon」でダメだったものがAKB48では上手くいくことになるのか、健一郎の内面では「二次元アニメ」とAKB48がつながったのかもしれないが、傍目からはよく分からない。例えば、集団の中でセンターに立っていると良く見えるものが、一人になると「普通」の人になってしまうということは卒業したメンバーのその後の活動を見ていれば分かることで、「アイドル論」というよりもただ単に秋元康への礼賛でしかないように見えてしまう。しかし例えば、週刊明星の1991年10月28日号の表紙に尾崎豊と斉藤由貴の不倫の見出しを放り込んでくるような攻めのギャグに関しては悪くはない。
 真塩美唯を演じた田野優花の狂言回しの熱演は十分評価するに値するが、本作が製作された一番の目的は今最も美しい女優の一人である石橋杏奈を本当の意味で「踊らせる」ことだったと思う。それが本作や『ケータイ刑事 銭形シリーズ』の製作に携わっているBS-TBSの「作風」なのである。個人的にはこのような作風は嫌いではないけれど。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ケータイ刑事 THE MOVIE バベルの塔の秘密 銭形姉妹への挑戦状』

2017-11-16 00:16:32 | goo映画レビュー

原題:『ケータイ刑事 THE MOVIE バベルの塔の秘密 銭形姉妹への挑戦状』
監督:佐々木浩久
脚本:林誠人
撮影:近江正彦
出演:黒川芽以/堀北真希/夏帆/草刈正雄/山下真司/金剛地武志/矢部美穂/宍戸錠
2006年/日本

「女優」に踊らせる意義について

 主演を演じた黒川芽以は当時18歳、堀北真希は17歳、夏帆は14歳で今では3人とも「女優」であるが本作にはアイドルのような雰囲気が残っている。ファンにとっては観る価値はあるだろうが、ファン以外に本作を勧めるとするならば、アイリッシュやベリーやサンバのダンスに本気で臨む堀北のダンスシーンくらいであろう。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

嘘つきに「嘘つき」という意味

2017-11-15 00:16:16 | Weblog

 上の記事は2017年11月8日の毎日新聞のものである。いつものように安倍晋三首相が衆議院選挙で力説していた公約を翻したとして批判しているのであるが、安倍首相が笑顔で嘘をつけるクズであることは周知の事実であり、その上で多くの日本国民は自民党に票を投じたのであるから批判するなとは言わないが、嘘つきに「嘘つき」と言って批判することに意味があるとは思えない。今回の選挙でも「死に票」が多数でたことで台風の中、わざわざ投票に出かけた少なからずの有権者が絶望したことで次回の選挙の投票率も下がり、野党はバラバラのままだから組織票を持っている党が今後も勝ち続けるだろうからもう政治に過度な期待をしない方が精神的には良いと思う。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「If I Could」 David Essex 和訳

2017-11-14 00:47:47 | 洋楽歌詞和訳

David Essex - If I Could (The Secret Tour Live, 2009)

 NHK-BSプレミアムの『笑う洋楽展』ではデビッド・エセックスの「君を愛したい」も

流れていた。和訳を見ながら観客の反応を楽しむのもいいと思う。

「If I Could」 David Essex 日本語訳

もしも僕が永遠に君を愛せるならば
もしも僕が毎日君を愛せるならば
もしも僕が君の手をとれるならば
君は分かってくれるだろうか
僕に君を導かせて欲しい

もしも僕たちが永遠にこのダンスを踊れるならば
もしも僕たちが誰もいなくても笑い合えるならば
もしも僕が君に僕の人生を捧げるならば
君は僕の妻になってくれるだろうか?
それともあまりにもバカバカしい話だろうか?

でも僕たちは公園にピクニックに行って
はしゃいでいられる
土曜の夜にもしも君の気分が良ければ
暗くなってから映画を観に行こう

もしも僕が配管工ならば
君は僕を愛してくれるだろうか?
もしも君がウエイトレスでも
僕は君を愛するよ
君は9番のバスでキャニング・タウンに向かう僕たちを想像できる?
僕と君だけで

でも僕たちは公園にピクニックに行って
はしゃいでいられる
土曜の夜にもしも君の気分が良ければ
暗くなってから映画を観に行こう

僕たちは一緒に散歩に行けるし
あるいは家族を築くこともできる
僕は仕事から帰ると
シャツを着替えて
お茶を飲みに炉辺に座るんだ
君と僕だけで


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「I Started a Joke」 The Bee Gees 和訳

2017-11-13 00:51:58 | 洋楽歌詞和訳

Bee Gees - I Started A Joke (Live in Las Vegas, 1997 - One Night Only)

 NHK-BSプレミアムの『笑う洋楽展』でビー・ジーズの「ジョーク」が流れていた。

MCの二人が歌詞の意味を知りたがっていたようなので以下、和訳しておく。

「I Started a Joke」 The Bee Gees 日本語訳

僕が冗談を言い始めると
世の中が泣き始めたけれど
僕は自分の方が笑われることになるなんて
分からなかったんだ

僕が泣きだすと
世の中が笑いだした
自分の方が笑われることになることを
分かってさえいればよかったのに

僕は目に手をかざして空を見上げたから
ベッドから落ちてしまった
自分が冗談で言ったことをしたから頭を打ってしまった

ついに僕が死んだ時
世の中は生き生きとし始めた
自分の方が笑われることになることを
分かってさえいればよかったのに

僕は目に手をかざして空を見上げたから
ベッドから落ちてしまった
自分が冗談で言ったことをしたから頭を打ってしまった

ついに僕が死んだ時
世の中は生き生きとし始めた
だから自分の方が笑われることになることを
分かってさえいればよかったんだ


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ルパン三世 荒野に散ったコンバット・マグナム』

2017-11-12 00:49:55 | goo映画レビュー

原題:『ルパン三世 荒野に散ったコンバット・マグナム』
監督:吉田しげつぐ
脚本:大和屋竺
出演:山田康雄/小林清志/増山江威子/井上真樹夫/納谷悟朗
1979年/日本

まさか調べられるとは思わなかったであろうフランス語について

 日本テレビで毎週深夜に「ルパン三世 ベストセレクション」を放送しており、第6位にセカンドシリーズの「荒野に散ったコンバット・マグナム」が選ばれていた。しかしここでは内容に踏み込まず、カルタゴの英雄であるハンニバルがピレネー山脈を越える時、ブランコ公国に残した世界に一枚の金貨を盗む際にルパン三世が総統の部屋の壁に貼りつけた張り紙のフランス語を精査しておきたい。

 一応間違いと思われる部分を修正しながら原文を書き起こしてみると「Oiseau au quantieme de certification Hannibal. Le pesage dépêche miel. Je ne vous dis pas!! Lupin Ⅲ」となる。この貼紙を見た総統は「ハンニバルの黄金、確かにちょうだいした」と読解するのであるが、文法的には滅茶苦茶なこの文章を無理やり読むとするならば「ハンニバルの証明の日付の鳥。この計量が蜂蜜を急送する。俺はお前たちには言わないぞ!! ルパン三世」となる。ここでは間違いを論うつもりはなく、逆にどのようにしたらこのような間違ったフランス語の文章が書けるのか興味が尽きないのである。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』

2017-11-11 20:35:20 | goo映画レビュー

原題:『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』
監督:石井裕也
脚本:石井裕也
撮影:鎌苅洋一
出演:池松壮亮/石橋静河/佐藤玲/三浦貴大/ポール・マグサリン/田中哲司/松田龍平
2017年/日本

「奇跡」にしかすがれない人々について

 都会の「負」の部分にスポットを当てた本作は、例えば、主人公の美香は病院で看護婦として毎日にように亡くなった人を見送り、看護婦だけでは生活できないために夜はガールズバーで働いており、もう一人の主人公である慎二は建設現場で働く日雇い労働者であり、同僚の岩下は体を酷使したために満足に働けなくなっており、元気だった智之は突然若年性脳梗塞で倒れてそのまま亡くなってしまう。同僚のみならず慎二が住むアパートの部屋の隣に住む老人とはゴミを出してあげたり本を借りたりする間柄だったのだが、老人が既に部屋で亡くなっていたことに近所の住人たちに教えられるまで慎二は気が付かなかったし、ましてや同僚のアンドレスの部屋で騒いでいる間に隣の部屋で仕事をしている人が騒音で迷惑がっていることなど気づきもしないのである。
 学校の同級生だった女性によるならば慎二は成績が良かったようなのだが、左目の視力を失ったためなのか、他人とのコミュニケーションが上手くとれず、読書に没頭するか意味のないことを喋り続けるかするのである。
 では本作には希望がないのかといえばそういうことはない。「がんばれ」と路上で歌を歌っていたRyokoがラストでメジャーデビューをしたり、作品冒頭で美香が見つけた飛行船を、ラストで美香と目の不自由な慎二が一緒に見つめたりするのではあるが、それはあくまでも奇跡である。滅多に起こることがない奇跡などに期待してしまっていいのかどうか疑問は残るのだが、それ以外に何があるのかとなると答えに窮してしまう。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする