「危ない事をする奴だ!」と思ったのは、ミカンの天辺で瞑想しているバッタの事だ。いくら保護色とは言え、周囲360度丸見えの場所は、捕食者からも同じのはずである。
小鳥の中には梢の天辺でさえずるオスが最も「かっこいい」もてるタイプなのだそうだが、まだ成体になるには数回の脱皮を必要とするこの個体には、そんな危険を冒すだけのメリットは何も無い。
有るとすれば「我思う。故に我あり」なんて精神世界からの必要性だけか…。それとも「私は何処から来て、何処へ行くのか?」だろうか。小生的には「オイオイ、そんな事では餌になる!」と言いたいのだが、邪魔はしなかった。達観したような微動だにしない姿は美しくもうらやましい。
初氷の便りも聞かれる霜降だと言うのに、「さあ、どうぞ!」とも取れる、なんとも大物バッタだった。昔々、火の中に身を投じた兎がいたとか、そんな逸話を思い出したバッタだった。バッタでさえバタバタしないのに、国の頂点は毎度のバッタバッタだ。