来日中の李登輝氏が靖国神社を参拝した。
靖国神社の問題については、もう37年も前に「現代国家における宗教と政治」(相沢久著 頸草書房)という本に触れ、理論的な問題は承知していたつもりだった。
常識で考えても、キリスト教などの宗教を信仰していた戦没者の遺族にとっては、勝手に靖国神社にまつられるという事態には承伏できなかったに違いない。彼らの反政府感情を煽ったことは疑いないだろう。こういう一般的な感情が中国や韓国にも伝わり、「靖国神社問題」として国際化したという事情もあると思われる。
だが、李登輝氏の参拝の理由は、日本の兵士として戦死した実兄がそこに祀られていることだ。
靖国神社問題をめぐって、ある種の歴史学者や評論家は、「日本軍国主義」「天皇制国家」がすべての元凶であると批判してきた。台湾出身の兵士はまさにその犠牲者なので、靖国神社に祀られること自体が問題だとしてきた。なるほど彼らの「社会科学的」分析によればそうなるのか…。だが私には、それは人間の自然な感情のひとかけらもない、冷たい理屈だと思えてならなかった。(マルクス主義者に共通する非人間的な側面である。)
李登輝氏自身によれば、今回の参拝は「肉親の情」に基づくのであり、他意はないとしている。彼の言動は、「肉親の情」という感情が自然の情理であり、不毛な理論よりも遙かに崇高で、我々の心をうつということを教えてくれた。いまなお、日本と日本人に暖かいまなざしを向けてくれる李登輝氏に心から感謝したい。
靖国神社の問題については、もう37年も前に「現代国家における宗教と政治」(相沢久著 頸草書房)という本に触れ、理論的な問題は承知していたつもりだった。
常識で考えても、キリスト教などの宗教を信仰していた戦没者の遺族にとっては、勝手に靖国神社にまつられるという事態には承伏できなかったに違いない。彼らの反政府感情を煽ったことは疑いないだろう。こういう一般的な感情が中国や韓国にも伝わり、「靖国神社問題」として国際化したという事情もあると思われる。
だが、李登輝氏の参拝の理由は、日本の兵士として戦死した実兄がそこに祀られていることだ。
靖国神社問題をめぐって、ある種の歴史学者や評論家は、「日本軍国主義」「天皇制国家」がすべての元凶であると批判してきた。台湾出身の兵士はまさにその犠牲者なので、靖国神社に祀られること自体が問題だとしてきた。なるほど彼らの「社会科学的」分析によればそうなるのか…。だが私には、それは人間の自然な感情のひとかけらもない、冷たい理屈だと思えてならなかった。(マルクス主義者に共通する非人間的な側面である。)
李登輝氏自身によれば、今回の参拝は「肉親の情」に基づくのであり、他意はないとしている。彼の言動は、「肉親の情」という感情が自然の情理であり、不毛な理論よりも遙かに崇高で、我々の心をうつということを教えてくれた。いまなお、日本と日本人に暖かいまなざしを向けてくれる李登輝氏に心から感謝したい。