ジャズ・ピアニスト、オスカー・ピーターソンさんが亡くなった。82歳。
早くして世を去るジャズマンが多い中で、彼は家族に囲まれ、恵まれたかたちで天寿を全うした。
ピーターソンのアルバムで最もよく聴いたのが、「ウェスト・サイド物語」だ。「トゥナイト」も「マリア」もこのアルバムでメロディを覚えたほどだっだ。
彼の演奏には「テクニック過剰だ」という「通」ぶった批判も多く、ジャズ喫茶などで彼のアルバムをリクエストするのは、何となく勇気の要ることだった。
ジャズもかつてのような力を失い、細々と続いている印象を受ける。ピーターソンの死が、こういう傾向をさらに加速させるのかも知れない。
【12月25日 AFP】世界的なジャズ・ピアニストで作曲家のオスカー・ピーターソン(Oscar Peterson)氏が23日、腎不全のためトロント(Toronto)近郊ミシサーガ(Mississauga)の自宅で死亡した。カナダ放送協会(CBC)とラジオ・カナダ局(Radio-Canada)が24日、報じた。享年82歳。
20世紀音楽界で最も偉大な巨匠の1人だった。約60年におよぶ演奏生活で数多くの巨匠と共演。チャーリー・パーカー(Charlie Parker)、エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)、ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)、ルイ・アームストロング(Louis Armstrong)、デューク・エリントン(Duke Ellington)、カウント・ベイシー(Count Basie)、ナット・キング・コール(Nat King Cole)、スタン・ゲッツ(Stan Getz)など、そうそうたる名前が並ぶ。
ブギウギからストライド、ビバップに至るまで、ピアノ演奏スタイルは多岐にわたり、生涯でレコーディングしたアルバムは200枚近く。その中で最も有名なものは、1964年の『カナダ組曲(Canadiana Suite)』だろう。収録された8曲すべてが、故郷への思いから作られたものだ。グラミー賞を個人で7回受賞、1997年には生涯功労賞も授与された。
即興の天才でもあるピーターソン氏は2005年、観客の前で自由なスタイルでジャズを演奏するときの情熱が「素晴らしい美の瞬間」を与えてくれると語っていた。
ピーターソン氏は晩年、関節炎や健康状態の悪化と闘っていた。1993年にはニューヨーク(New York)のブルーノート(Blue Note)での公演中に脳溢血で倒れ、左手が不自由になったが、その後もレコーディングを続けた。ジャズ番組の司会などを務めたロス・ポーター(Ross Porter)氏は、右手だけでもピーターソン氏は「他の誰よりもはるか先を進んでいた」と語った。 「わたしの考え方には、年齢はそんなに影響しないと思う。楽器や仲間に対する愛情がわたしを若返らせてくれる」と、ピーターソン氏は2001年のインタビューで語っている。