Nature of Kagoshimaが発行され、項目を見るとその中にミナベヒメジという聞いた事の無い魚種名が載っていた。また初記録のヒメジが記載されたのかと思い読んでみる。すると標本の採集者には私の名が載っている。標本写真を見て、やっとあの種に標準和名が付いたのかと思う。報告書を読むとこの論文で和名提唱されたのではなく、今年発行された図鑑「南日本太平洋沿岸の魚類」に記載され、そこで標準和名が提唱されたそうである。この魚、以前から近似種のホウライヒメジとは違う事が指摘されており、標準和名の無いまま別種扱いされてきた。なかなか論文が出ない為、何かと面倒な種なのかと思っていた。結局は論文が雑誌に投稿されるのではなく図鑑に記載することで和名提唱された形となる。以前にも図鑑「黒潮の魚」でイブリカマスが記載され標準和名提唱された事があり、これと同じ形での和名提唱である。まぁこれでこの魚を標準和名で呼ぶ事が出来るようになったので一件落着である。
もう3年以上前の話である。定置網漁を終え帰港すると活魚のコーナーに見慣れない魚が泳いでいた。漁協の職員に聞くと、うちの定置網の隣の網で獲れた魚で珍しいので水族館用に生かしてあるとの事。魚種名を聞かれるが私も見覚えはあるが種名までは分からない。だが、市場の事務所に張ってある魚図鑑のポスターの中に同じ魚があり、ユウダチスダレダイだと分かる。ユウダチスダレダイを調べると国内に分布はしているものの珍しい事が分かる。魚ボラの標本用に欲しいところではあるが、既に水族館に連絡済みである。急いで魚ボラの先生に連絡し対応してもらう。だが、水族館での飼育記録の無い魚であるらしく、そこは水族館も譲らず、結局は水族館である程度飼育展示してから標本を譲ってもらうように話がつく。その後、国内産の標本を調べると所蔵されている博物館で行方不明となっており、結局この個体が標本に基づくユウダチスダレダイの初記録となる。さらにこの1週間後に市場で水揚げ作業をしていると、お隣の定置網の漁獲物の中にユウダチスダレダイを1個体見つけ、こちらは直ぐに確保する。ブログネタとして直ぐに報告したかったが、魚ボラの先生から論文が公表されるまで載せないでほしいと口止めされていた。今回Nature of Kagoshimaが発行され、そこにユウダチスダレダイの標本に基づく初記録の報告が載り、これでようやく公表となる。
Nature of Kagoshima(vol.41)が今日家に郵送で届く。今回も46項目のうち30項目が魚関係と魚類雑誌に更に近づいている感じである。また、ページ数も年々増え、今回は昨年よりも更に30ページ増である。これでも年会費が最初から変わらないのが信じられない。というか予算的に大丈夫なのだろうかと私でさえ心配してしまう。今回の発行により、魚ボラの先生に口止めされていたユウダチスダレダイの記録を公表できるようになる。だが採集後、かごしま水族館で飼育展示され、水族館により既に公表済みではある。さらに今回ミナベヒメジという聞きなれない魚種の投稿もある。何だろうかと報告書を読むと採集者が私になっている。標本写真を見てあの魚が解決したのかと気付く次第である。来年号はどのようになるのか更に楽しみである。