575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

菊の香や活けるそばから部屋満たし  晴代

2024年09月20日 | Weblog

古来より菊には清浄な力が宿っているとされ、高貴な姿と優雅な香りが邪気を払うと信じられてきました。

薬草としても用いられ、重陽の節句には健康や不老長寿を願って菊の花を浮かべた菊酒をいただいたり、花びらを浮かべた湯船に入ったりといった風習もあるようです。寄せられた句の中にあって菊の香りを一番感じられる秀句だと思いました。

 麗子さん:菊の香りは強くて部屋をあっと言う間に満たします。「活けるそばから」という中七がいい。

 泉さん:菊の香りは強い。部屋が菊の匂いでいっぱいになる

竹葉さん、能登さん、童子さんも採っておられます。まさに共感、菊の香に包まれて静謐な空間に座っているかのようです。

  香りに温度があるのなら、菊の香はひんやりしていると思います。鼻に抜けていく感じはユーカリやローズマリーのようなハーブ系の清涼感があり、感覚が研ぎすまされ覚醒していくようです。姿勢も正され、仏花はもちろんセレモニーには欠かせない花というのもわかります。

  

麗子さんに続き私も母を亡くしました。奇しくも告別式は敬老の日で、母は孫やひ孫に囲まれて幸せそうな笑みを浮かべていました。

祭壇の菊の香りに包まれていると心が透き通って穏やかな気持ちになりよいお別れができました。 郁子

 

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菊を置く桐箪笥消ゆ母の部屋  童子

2024年09月19日 | Weblog

菊句会いかがでしたでしょうか?お通夜、葬儀など悲しみの場で目にする菊ですが、介護の場面、菊料理、菊を育てる楽しみ、そして香りなどが詠まれました。

そんな中見事トップ賞に輝いたのは童子さんのこの秀句でした。

作者の童子さん。「リフォームせずにそのままにしてあった両親の部屋から、最後の荷物、母の桐箪笥を出しました。」とありました。

実家の片付け。母の部屋から重量のある立派な桐箪笥が運び出され、何とも言えない寂寥感に包まれたことでしょう。桐箪笥がなくなって広くなった部屋。そこに菊の花を飾る作者の気持ちを思うとせつないです。「桐箪笥消ゆ」という表現はなかなかできないと思いました。

 

皆さんのコメントです。

竹葉さん:お母さんが逝って寂しいとの言葉はなくて、すべてを語っているのがとても上手いと思います。

能登さん:飾る人が居なくなったのか。箪笥が消えたのか。何かが足りない寂寥感。

千香子さん:⑪,⑫と迷いましたが、

泉さん:いろいろ解釈に迷いました。 菊をお母さんの箪笥の上におくと菊の香りでいっぱいになってお母さん香りが消されたような気がした。

亜子さん:桐箪笥が運び出されて消えたというのはお母さまが亡くなったのか。。母を偲ぶ気持ちで菊を活けたのでしょう。心打たれた句。

      ★★★

今回亜子さんから私の無得点の句にアドバイスをいただきました。

    白菊や残されし文字そのままに

何が残されているのかわからない。一読してわかるように、作ったあとにもう一度今度は鑑賞する立場になってチェックすること。もう一人の自分が必要だということを教えてくださいました。

実は8月末に義母が亡くなって荷物の整理をしていたら、ハンドバックから手帳が出て来ました。そこには私たち夫婦に対しての感謝の言葉がつづられていました。その思いに引きずられて、日記のような私だけがわかる俳句となってしまいました。「もう一人の自分」は全くいませんでした。反省。精進します。麗子

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9月句会「菊」 結果発表!

2024年09月18日 | Weblog

2024年9月兼題「菊」

  1. 白菊のごとし介護の手をのばす  (遅足) 麗子・容子
  2. 白菊や咲きて寂しき庭となり(竹葉) 遅足・能登・容子・千香子・亜子・郁子
  3. 白菊やうねり祭壇飾る通夜 (須美) 晴代・童子・容子
  4. 白菊や残されし文字そのままに (麗子)
  5. 菊の墓「翼忘れじ」刻まれて  (亜子) 佐保子
  6. 菊日和早く来い来い菊日和 (佐保子) 泉
  7. 菊を摘む手際良きアジアの娘(むすめ)らは (容子)
  8. 菊食めば母の手料理弥彦山 (泉) 竹葉・晴代・佐保子・童子・千香子
  9. 菊の香や活けるそばから部屋満たし (晴代) 郁子・竹葉・麗子・能登・童子・泉
  10. 菊の香や万歩計つれ天守閣 (千香子) 須美
  11. 菊大輪翁は笑みてセピア色 (郁子) 晴代・須美・亜子
  12. 母晩年生きるよすがの福助菊 (能登) 郁子・遅足・佐保子・須美
  13. 菊を置く桐箪笥消ゆ母の部屋 (童子) 竹葉・麗子・遅足・能登・千香子・亜子・泉

 

自由題

  1. 狭き庭花野となりぬ日暮れ時 (佐保子) 郁子・童子・容子・須美
  2. 秋の児や一姫二太郎三茄子 (遅足) 麗子・佐保子
  3. 宝箱無事米になれ稔り田  (須美) 泉
  4. 届くのは勝手口から今年米 (童子) 郁子・佐保子・須美・亜子
  5. 何かせむ我生まれし日は獺祭忌 (容子) 麗子・能登・千香子
  6. 衰えぬ火勢さながら残暑かな (亜子) 竹葉・晴代・泉
  7. 葡萄食むXYの数はなに (晴代) 千香子
  8. 台風や心乱されふらふらと (泉) 竹葉・晴代
  9. 薬売り通ひし街や柿たわわ (千香子) 遅足・能登・童子
  10. 高架下の壁打ちの音夕茜 (郁子) 麗子・遅足・容子
  11. 逝き際の静かな化粧櫨(はぜ)紅葉 (竹葉) 郁子・遅足・能登・容子・千香子・須美・泉
  12. 吾亦紅せめてもの紅母遺影 (能登) 竹葉・童子・亜子
  13. 秋暑し遺品整理の手が止まり (麗子) 晴代・佐保子・亜子

 

 

 トップ賞は

  兼題「菊」  童子さん

  自由題   竹葉さん  

 おめでとうございます!! 

 

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菊句会の投句が揃いました。

2024年09月17日 | Weblog

猛暑衰えぬ中投句が揃いました。明日の結果をお楽しみに!!

2024年9月兼題「菊」

①      白菊のごとし介護の手をのばす  

②      白菊や咲きて寂しき庭となり 

③      白菊やうねり祭壇飾る通夜 

④      白菊や残されし文字そのままに 

⑤      菊の墓「翼忘れじ」刻まれて  

⑥      菊日和早く来い来い菊日和 

⑦      菊を摘む手際良きアジアの娘(むすめ)らは 

⑧      菊食めば母の手料理弥彦山 

⑨      菊の香や活けるそばから部屋満たし 

⑩      菊の香や万歩計つれ天守閣 

⑪      菊大輪翁は笑みてセピア色 

⑫      母晩年生きるよすがの福助菊 

⑬      菊を置く桐箪笥消ゆ母の部屋 

自由題

①      狭き庭花野となりぬ日暮れ時 

②      秋の児や一姫二太郎三茄子 

③      宝箱無事米になれ稔り田  

④      届くのは勝手口から今年米 

⑤      何かせむ我生まれし日は獺祭忌 

⑥      衰へぬ火勢さながら残暑かな 

⑦      葡萄食むXYの数はなに 

⑧      台風や心乱されふらふらと 

⑨      薬売り通ひし街や柿たわわ 

⑩      高架下の壁打ちの音夕茜 

⑪      逝き際の静かな化粧櫨(はぜ)紅葉 

⑫      吾亦紅せめてもの紅母遺影 

⑬      秋暑し遺品整理の手が止まり 

 

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平和とは何と聞きし子原爆忌  容子

2024年09月13日 | Weblog

575の会では8月の投句に必ず戦争の句があがります。決して風化させてはいけないという思い、平和への誓いをあらたにする機会になります。

ところがここ近年の惨状はどうでしょう。

ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとハマスの戦い・・終わりの見えない惨状を見るにつけ、いつまで愚かなことを繰り返すのかと歯噛みしたくなります。何も生まない戦争を、なぜやめられぬ?なぜ突き進む?   未来に負の遺産しか残せないのでしょうか。

選者のコメントです。

麗子さん:原爆のことを子供たちに知って欲しい。平和を尊ぶ作者の願いが感じられます。

千香子さん:平和の名のもとに逆のことがおこなわれていたり、平和とは何でしょう

晴代さん:どうお答えになったのでしょうか。

 

 見ましたか人影の石夏の雲  千香子

須美さん:「見ましたか」がぐっときた。

亜子さん:原爆が落とされる前には確かにそこに人が存在したという影。「見ましたか」と問いかけがあるところに衝撃を受けました。問わずにはいられない気持ち。

泉さん:お盆らしさがでている。

郁子:原爆朗読劇「夏の雲は忘れない」 語り継がなくてはと思います。

 

 壕の中帰らぬ人に終戦忌  亜子

千香子さん:8月には詠みたい俳句です

 

 

とりわけ暑い夏でした。皆、自分の身を保つだけでいっぱいだったかもしれません。ただ大切な分岐点に

あきらめるということが取り返しのつかない道の選択にならないようもう一度気を引き締めなくてはなりません。   郁子

 

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茄子の馬父颯爽と帰り来ん  麗子

2024年09月12日 | Weblog

この夏は父の初盆でした。生前、父はお盆の準備として茄子や瓜に足をつけて精霊迎えをしていました。初盆の句を作りたいと思った時、歳時記に「茄子の馬」という季語を見つけました。傍題に「茄子の牛」「瓜の馬」「瓜の牛」という季語もありました。一説にはあの世から来る時は、馬に乗って少しでも早く、帰る時はゆっくりと牛でという思いがあるそうです。子供の頃からお盆には必ずこの精霊馬が仏壇の前にあったので、ご先祖様が帰って来ると言われ、玄関先で迎え火も炊いていました。

かたくなにそういう風習を大切にする父だったので、茄子の馬に乗って一目散に家に帰って来そうな気がしました。そういう思いで作りました。

晴代さん:颯爽と騎乗よりの笑顔が想像できます。

郁子さん:亡くなった方があの世とこの世を行き来するお盆の茄子ときゅうりの馬。お父さまの紳士ぶりとそのキャラを愛す作者の気持ちが「颯爽と帰り来ん」にこめられている。

亜子さん:お盆に亡きお父さんが茄子の馬に乗って帰って来る。こういう心境で父をしのぶ気持ちがうらやましい。

 

もう一句お盆の句です。

    鬼灯の燃える朱色や君を呼ぶ  竹葉

二年前にお連れ合いを亡くされた竹葉さんのコメントです。

「1年に1度だけ、立派な実をいっぱい付けた鬼灯がお店で見るととてもほしくてたまらなくなるのですが、今年はもうすぐ3回忌なのでやっと大きくて25個も実を付けた木を買ってお供え出来ました。高い果物よりも存在感があるのはその朱色ですね。」

容子さん:どなたの句か分かる気がしますが、よくはずれます。若々しい思いが伝わります。

須美さん:亡くなってしまった君にお盆に帰ってきて欲しい強い気持ちが伝わる。燃える朱色が好き。

泉さん:なんだかぞくぞくする。

 

           ★★★

お盆には朱色の鬼灯を灯りと思って、その灯りを目指して亡き人が帰って来ると聞いたことがあります。

いずれにしても亡き人がお盆に帰って来ると思うだけでなぜか心が救われます。麗子

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秋立つや夫の主治医の転勤す  佐保子 

2024年09月06日 | Weblog

何に秋の到来を感じるでしょうか。人それぞれと思います。

風であったり雲であったり、草花や虫、水や何かに触れたときの感触であるかもしれません。

思いがけないものや出来事が季語と合わさり、相乗効果で共感を呼び、一句の味わいがぐっと深まります。この句もたくさんの票を集めました。

 

竹葉さん:良い知らせでないけれど暑さが終わりこれからの季節に期待する感じの「秋立つ」の季語がよく合ってると思いました。

容子さん:秋立つや夫の主治医の転勤す→私の経験では淡々としたものでした。手術など経ていると思いも深いでしょうね。 

千香子さん:転勤に不安な気持ちがよく出ていると思いました 

童子さん:主治医が変わるのはとても不安なもの。秋立つやにその心情が上手く表されている。

須美さん:夫の主治医の転勤に伴う不安、心細さが伝わる。

 

詠み手はさらりと「転勤す」と言っているだけなのに、味わう側は作者の心情や背景など多くのものを想像させられます。

季節も春でなく、夏でなく、冬でもない。なんとなく物寂しくなる秋。

「秋立つ」がピタリとはまる良句と思いました。

 

日本列島の上空、大陸の方からようやく秋の空気の存在が増してきました。

貴重な季節になりそうな秋 気持ちを切り替えて楽しみたいものです。  郁子

 

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ややこしき話のあとや胡瓜もみ  晴代

2024年09月05日 | Weblog

自由題で圧巻のトップ賞だった晴代さんの句です。

どんなややこしい話があったのでしょう?悶々とした気持ちをキュウリの塩もみをしながら反芻している様子が想像できました。

能登さん:手慣れた作業がモヤモヤを解決。しかし、胡瓜もみは、意外、新鮮。

竹葉さん:胡瓜もみの「もみ」がややこしい話になんか呼応してる感じでいいと思いました。

容子さん:対比が素晴らしいです。

郁子さん:俳句のお手本のようです。何か気持ちを整理したり、無心になれる台所仕事はいろいろあると思いますが「きゅうりもみ!」それがあったね!と思わせる秀句と思います。

童子さん:ややこしき話…なんなのか。「胡瓜揉み」と、気持ちをサッパリと切り替えている様子、または切り替えようとしているのが面白い。胡瓜が良い。茄子じゃダメ。

泉さん:ややこしい話を聞いて心を発散させたい、その時のきゅうりもみは最高。

    ★★★

この夏、何度も酢の物に、ポテトサラダ用にと胡瓜の塩もみをしました。薄くスライスした胡瓜に塩をしてしばらくおいてきゅ~と絞って水分を出し。少し歯ごたえが残るくらいが私は好きです。さっぱりした胡瓜もみ。心は乱れていても手作業に集中すると心が整っていくようです。それは一種の「カジュアル瞑想」かも知れません。

それを俳句にされた作者はやっぱり達人だと思いました。ややこしい話は前進したでしょうか?

ようやく朝だけはクーラーつけずに過ごせるようになりました。でもまだまだ日中の猛暑は続きます。今夜も胡瓜しましょうか。麗子

 

 

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