この冬、苺が安いように思う。燃料高騰の最中に、ハウスを温めていただろうにこの値段で大丈夫かなと心配してしまう。2,30年も前に八百屋さんに苺の旬は1月と教えらて驚いたが、今も事情は同じだろう。苺の出荷が一番多いのは1月、クリスマスケーキ用だそうだ。その続きで1月の苺が旬というわけか。
12月、奈良の道の駅でアスカルビーという苺を買った。確かに苺は宝石のように美しい。幼い頃、苺は薄い木の箱に檜の葉をひきその上にならんでいた。緑の上の赤は味より美しさが魅力的だった。 子供のころは、貧しかったこともあったし、今のように果物を食べなかったこともあって,苺はいつも高嶺の花だった。だから味より見た目の印象が残っている。
私達が買う苺はバラ科オランダイチゴ属の多年草の果実。表面のつぶつぶが種子で食べる部分は花床が肥大したもの。草であるから品種改良が進みどんどん新しい品種が店頭に並ぶ。江戸時代末期オランダからやってきて、栽培されてから200年。1980年から90年位の間、三重県で開発された「とよのか」栃木県の「女蜂」が市場を席巻していた。栃木県農業試験場がこの二つを交配させ「とちおとめ」をつくりだして以来、これらや各地に伝わる品種を交配させ新しい苺が売られている。
アスカルビーも「アスカウェイブ」「女蜂」を奈良農業試験場が交配して作り出したもの。 一粒一粒には高度な技術と努力が込められている。
俳句では苺の花が春、苺が夏の季語。露地で普通に栽培すればこの通りになる。 今の日本では夏は苺の端境期。高度な技術も努力も素晴らしいけれど、これでいいのかな。
花の芯すでに苺のかたちなす 飴山 實
幾畝の苺の花の月夜かな 長谷川櫂
岬より帰路は岐れて花苺 古舘曹人