575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

亀たにし鳴けど帰らぬ拉致の人   等

2019年03月31日 | Weblog

亀鳴く、とともに、田螺も春の季語。
タニシ科の巻貝で、水田や池沼などの泥地に棲んでいます。
冬は泥の中にひそんでいますが、水が温かくなると、
泥の上を這いまわります。
季語に「田螺鳴く」がありますが、鳴くことはありません。
作者は亀だけではなく田螺も鳴かせました。
しかし拉致された人々は、日本へは帰ってきません。

  汚染土はそのままだねと亀鳴きぬ  能登

福島の原発事故から8年。こちらは亀の声を聞いています。
事故による汚染は一向に解消されていません。
亀は本当のことを言います。
ともに作者の希望を亀に託した句です。             

明日、新しい元号が発表されます。平成から新しい御代へ。
しかし、もの言えば唇寒しの時代にならなければ良いですが・・・。
亜子さんからお便りをいただきました。
歌人の永田和弘さんの講演を聞きにいったそうです、
そのなかで心に残った永田さんの一首。

  権力にはきつと容易く屈するだろう弱きわれゆゑいま発言す

亀も人間も自由にものが言える世の中を守りたいですね。(遅足)

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幻想の「 カサブランカ 」 ⑵  竹中敬一

2019年03月30日 | Weblog

 

戦後  、堰を切ったようように入ってきたアメリカ映画。

私のようにあまり映画を見ない者でも「 カサブランカ 」や 「 哀愁  」

は観ています。

「 カサブランカ 」は敗戦の翌年の昭和21年に、「 哀愁 」の方は

昭和24年にそれぞれ、日本で公開されています。

「 哀愁 」 の原題は「 Waterloo  Bridge  」( ウォータール橋 )。

ウイキペディア調べでは、昭和28年に日本で公開された「 君の名は 」

は、このウォータール橋を数寄屋橋に置き換えた作品とか ( 内容は

異なります。また、勿論、今、人気のアニメ映画ではありません 。 )

いずれの映画も戦時下での男女の出会いと別れが描かれています。

その頃、つまり、私が中学か高校の頃 、出会いや別れを歌った日本

の歌謡曲の中に、例えば  「 高原の駅よ さようなら 」

( 昭和 26年)があります。

小畑実の甘い声を今でも思い出します。

  しばし別れの 夜汽車の窓よ

  言わず語らずに  心と心

  またの逢う日を 目と目で 誓い

  涙 見せずに  さようなら

何も言わなくても、心と心、目と目で誓い合い、涙も見せずに ……。

それに比べて「 カサブランカ 」、「 哀愁  」では 、人前で堂々と

抱き合い、キスをしたり、別れの時にはポロポロと涙を流すシーン

を見て、軍国少年だった私たちはショツクを受けました。

アメリカって何て自由なんだろう。

リンカーンの 「人民の、人民による 、人民のための政治 」が行われて

いるパラダイスだと思ったものです。

昭和50年代、私と同じテレビ局の同僚5人と研修旅行でアメリカの

CBSなどテレビ局を訪れて感じたのは、矢張り、アメリカは一歩も二歩も

進んでいるということでした。

また、テレビ局で出会った人たちは誰もが開放的で明るく 、親切で 、

アメリカという国にとても良い印象を受けました。

ところが、その翌年 、アメリカに住む日系一世の方々の生き方を追う

テレビドキュメンタリーの取材でシアトルへ行った時、

ジャップと罵られるなど白人から差別 を受けたこと、

戦時中 に強制収用所に入れられたことなどを嫌というほど聞かされ、

パラダイスは幻想に過ぎなかったことを実感しました。

何事にも感じやすい年頃を軍国少年として育った私たちは戦後、

一気に解放されて、今まで敵国だったアメリカの良いところばかりを

見てあこがれていたように思います。

確かに、今 もアメリカは魅力的であることに変わりはありませんが、

トランプ政権の諸々の発言は、もう一つのアメリカの本当の姿を

あらわしているのではないでしょうか。 

             

天白川沿いの土手が私のいつもの散歩道 。黄色いチョウが遅い足どりの私を促すように前に来てくれて、

いつの間にやら野方神明社へ 。 毎春、神さびた神社の小さな森の前に咲く枝垂れ桜を楽しみにしています 。

 今年は例年より少し早くもう散りかけていました 。(3月29日 撮影)

 

 

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亀いつ鳴く日差し和らぐ神の池   結宇

2019年03月29日 | Weblog

「亀鳴く」という題詠。さまざまな句ができました。
この句は、鳴くのを待っています。
どんな状況なら鳴いてくれるのでしょうか?
場所は「神の池」です。
時間は日差しの和らいだ昼下がりでしょうか。
いかにも亀が鳴きそうですね。

  亀鳴くや手足伸ばして首伸ばす  すみ

こちらも鳴く前を詠んだ句でしょうか?
さあ、そろそろ鳴いてみるか!と準備体操でしょうか。
いや、鳴いた後を詠んだ句かもしれません。
一声鳴いた亀は手足を伸ばし、さらに首をのばしました。
きっと気持ちが良かったんですね。

鳴くことのない亀だから出来る句です。
でも、もし鳴いたら、どんなことが起るのでしょうか?(遅足)


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ブラレイコ 三島編 麗

2019年03月28日 | Weblog
夫の退職を記念してブラリ
三島、湯河原の旅。三島駅から富士山が見えました。駅から徒歩15分ほどのところに三嶋大社があります。途中、町のあちこちに水路があり玄関先に家々ごとに橋がかかっているのにびっくり。

正岡子規も

面白やどの橋からも秋の不二

と詠んでいます。
三島水辺の文学碑を読みながら進みました。小さな橋におばあさんが二人腰かけておしゃべり。なんともぜいたくな井戸端会議です。

富士山の噴火の名残の溶岩があちこちにありますが、富士山からの伏流水の豊かなこと。心が洗われました。

退職を祝う富士山春列車  麗子
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よもぎ餅練りこむ鉢の青臭さ  殿

2019年03月27日 | Weblog

香りとか美味しいとか、とかく情緒に流れそうな題を
冷静に観察し、特に“良いかおり“とされる匂いの素を
”青臭い“と感じ表現したことは良いと思います、と等さん。

殿さまからは。
「よもぎ餅」は白玉と蓬を使用。
しかし平安時代は蓬ではなく、春の七草の御形<ごぎょう>を使用。
御形の別名は「母子草」<ははこぐさ>。
そのため、江戸時代になると、母子を一緒に煮るのはよくないと
験を担ぎ蓬になったといわれています。

落語の「蛇含草」<ジャガンソウ> 。餅の食べ過ぎがあらすじ。
強力な消化能力の薬草で、身体まで溶けてしまうというちょっと怖い話。
ちなみに、蓬の薬草名はガイヨウで、ゲンノショウコ、センブリと同じ胃腸薬。
しかし甚平を着て餅の食べ過ぎにはご注意。
その理由は落語でお楽しみください。

https://rakugonobutai.web.fc2.com/231jagansou/jagannsou.html

遅足の蛇足です。
平安時代の歌人・和泉式部の歌集には、
手筥(てばこ)にくさもちひ(草餅)入れて奉る、と前書きして

  花のさと心も知らず春の野に いろいろつめるははこもちひ(母子餅)ぞ

という歌があります。
この「ははこ餅」が草餅ですね。砂糖が普及するのは江戸時代以降。
和泉式部が食べた草餅は、どんな味だったのでしょう?
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一天をあふるる枝垂れ桜かな   遅足

2019年03月26日 | Weblog

我が家から歩いて30分。もっとかかるかな?
昭和区川名山町の香積院にある桜。
樹齢100年を超える枝垂れ桜です。
開花宣言が出る頃が見頃とのことで24日に行ってみました。
写真のように満開でした。

香積院は、江戸時代に名古屋の豪商・味岡次郎九郎が
一人娘の菩提を弔うために建立したもの。
当時は家一軒ない山のなかでしたが、いまでは住宅地。
そのなかにある一本の枝垂れ桜。
だんだん知名度もあがり、近郊から車で訪れる人も。

  一本の天より枝垂れ桜かな

どちらが良いかな?

私はこの桜の散る姿が好きです。

  両の手にあふるる妻の落花かな

  両の手をあふるる妻の落花かな

うーん?なかなか難しい・・・
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中日歌壇!

2019年03月25日 | Weblog
今朝の中日新聞
中日歌壇 小島ゆかり選に宗匠の歌が掲載されています。


お日さまのひかりを抱く冬牡丹 百あつまりて百の静けさ


{評}
  「ぼうたんの百のゆるるは湯のように」(森澄夫)をはじめ
  俳句の魅力的なテーマでもある<百の牡丹>を、さりげなく
  うまく歌のなかに生かした。一字空けからの下句の調律に
  力がある。


先月の句会で「牡丹の芽」に挑戦させてもらい、その芽を
探して歩きました。
花ひらきゆれるぼたんを今度はぜひ見たいと思います。
おめでとうございます。郁子

 
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ふるさとの土手で摘み取る蓬かな  幸泉

2019年03月24日 | Weblog

私にとって、幼い頃から蓬を摘み取ることは草餅をつくることでした。
今でも春に若い蓬を見ると故郷の景色が浮かびます、と幸泉さん。

ある年齢から上の世代には懐かしい風景です。
私も母に連れられて蓬を摘んだ記憶がよみがえってきました。
あの大きな、田舎風の草餅・・・

  老健に少女訪なひ母子餅  千香子

こちらは、今の子供たちを詠んだ句。
お店で買った草餅が手土産ですね。
きっと、お祖母さんのお気に入りの店のもの。
おしゃべりをしながら、春の味を楽しんだことでしょう。
昔は、草餅のことを母子餅と言ったようです。
この句の場合、少女・母・祖母という女系を連想。
季語が生きていると思います。(遅足)

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鎮魂の 「 カサブランカ 」 ⑴ 竹中敬一

2019年03月23日 | Weblog

私と同じ大学の文学部を出て、同じテレビ局に入った同僚のT君が最近、

亡くなりましたが、彼が晩年、自身のブログで過去に見た映画のことを

回想して書いています。

彼は演劇科を専攻していただけに、かなりの映画通でした。

思い出の映画の中の一つが「 カサブランカ 」。

第二次世界大戦の始まった翌年の1942年( 昭和17年 )に公開された

ハリウッド映画。

モロッコのカサブランカを舞台にしたラブロマス映画ですが、日本での

公開は敗戦 間もない1946年 ( 昭和21年 )のこと。

昭和8年生まれの私たちの世代なら中学か高校時代で見たという人が多い

と思いますが、私は大学時代になってやっと見たように記憶しています。

私とちがってT君は高校時代から何度も見ているようで、彼の脳裏に焼き

ついた映画の各シーンが次々と浮かんできて、そのブログは物語の細部に

まで及んで中々 、終わりません。

私の愛読書「 マイ・ラスト・ソング ~ あなたは最後に何を聴きたいか ~ 」

(文春文庫 ) の中でも著者の久世光彦が矢張り「 カサブランカ 」を取り上げて

います。

「 … もしかしたら、私は「 カサブランカ 」の絵コンテを空で完璧に描けるかもしれない。

それくらい、この映画を観に通った。

あるいは 、「As Time Goes By 」を聴きにいった。」


私はといえば、ストーリーの方はウロ覚えで、最初の方の場面のナイトクラブで

黒人( ドゥリー・ウィルソン ) が歌う、つぶやくような「 As Time Goes By 」

だけは今も不思議に時々 蘇ります

久世氏は「 マイ・ラスト・ソング 」の中でこの歌詞の原文と自らの訳を載せてます。


You must remember this 忘れないでね

A kiss is still a kiss 私たちが交わしたほんのひとときき

口づけも、

A sigh is just a sigh ふと漏らした溜息も、それはなん

でもないこと

The fundamental things apply  のようだったけど、時が過ぎてい くにつれて

As time goes by とても大切なものになっていくのね

And when two lovers woo この先、私たちはどんな風になっ

ていくのか、

The still say I love you それは誰にもわからないけど、好き ー


On that you can rely 人の世で、すがることができるのは

       

No matter what the future brings それだけなのよ。

As time goes by


私も映画にスーパーされる日本語訳の字幕などを参考にこの原文を訳そう

と試みましたが、とても難しく、矢張り「 カサブランカ 」のことを知り

尽くした久世氏ならではの名訳だと思います。

久世光彦 ( くぜ てるひこ ) は、私より二つ年下。東大美学美術史卒後 、TBSに入り、

「 時間ですよ 」など数々のテレビドラマの演出家として、又 、小説家 、随筆家としても

知られています。

平成18年 、70歳で亡くなっていますが、「 マイ・ラスト・ソング 」は亡くなる

四年前に書いたエッセイで、副題に 「 あなたは最後に何を聴きたいか 」

とあるように、死に際に一曲だけ聴きたいといたら、どの曲を選びますかというテーマで、

歌謡曲など25曲について書いています。

( クラシックの名曲が入っていないところが面白い )

「 カサブランカ 」の最後の方でこう述べています。

「 ……通俗の歌詞ほど、胸の中で長く尾を曳く。どの歌にも、その向うに、もう帰ることの

できないあのころの自分が見えるのだ。

大切なことはどんどん忘れていくのに、思い出しても仕方がないことまで思い出させる。

歌といものは厄介なものだ。……」

私たち昭和一桁代の世代の気持ちを代弁するかのように言い残して、

久世光彦はこの世を去っていきました。 (つづく)

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3月句会の結果です。

2019年03月22日 | Weblog
題詠は「亀鳴く」が12句。「草餅」が3句でした。
ごらんのような結果となりました。(遅足)

題詠
①亀たにし鳴けど帰らぬ拉致の人(等)能登・幸泉・亜子・静荷
②よもぎ餅練りこむ鉢の青臭さ(殿)等・結宇・すみ
③亀いつ鳴く日差し和らぐ神の池(結宇)幸泉・晴代
④亀鳴くや父から母へのラブレター(麗子)能登・等・佐保子・すみ・遅足・静荷・郁子
⑤気の利いた言葉は消えて亀の鳴く(郁子)遅足・麗子
⑥亀鳴くや再建匂ふ中金堂(晴代)智恵・麗子
⑦汚染土はそのままだねと亀鳴きぬ(能登)幸泉・佐保子・亜子
⑧石庭に心乱れて亀鳴きぬ(狗子)殿
⑨亀鳴くや手足伸ばして首伸ばす(すみ)能登
⑩亀鳴くやひとが地獄をつくりし日(遅足)智恵・佐保子・結宇・殿・静荷・千香子・狗子・亜子・麗子
⑪ふるさとの土手で摘み取る蓬かな(幸泉)
⑫水底に黄泉(よみ)の入口亀鳴けり(亜子)智恵・等・結宇・殿・遅足・千香子・狗子・晴代・郁子
⑬亀啼けば酒を呑ませて堀に返す(静荷)
⑭老健に少女訪なひ母子餅(千香子)すみ・晴代
⑮亀鳴くよ傘寿むかへて句をはじむ(佐保子)千香子・郁子

自由題
①ほつれ毛をかき上げる指春の色(能登)等・結宇・殿・静荷・狗子
②春炬燵たたんだ後はやせがまん(狗子)幸泉・すみ
③陽炎につまずいているご老体(晴代)能登・等・すみ・遅足・狗子・亜子・郁子
④長毛の犬全身で春駆ける(郁子)すみ・狗子・晴代・麗子
⑤通院後草餅二つ選びおり(麗子)千香子
⑥沈丁花目を閉じ寄るか一人っ子(結宇)郁子
⑦春かなし館なき跡迷い猫(殿)幸泉・結宇
⑧かぎろへば来し方行く末定かならず(静荷)佐保子
⑨けごろもを脱ぎ深呼吸紫木蓮(佐保子)智恵・幸泉・晴代
⑩春寒や回り舞台を押す奈落(等)智恵・佐保子・結宇・遅足・晴代・亜子・麗子
⑪車座に犬も鎮座の草の餅(亜子)佐保子・殿・遅足・麗子・郁子
⑫キャッスレスどこ行く小銭春風と(幸泉)
⑬山門を抜けて少女は初蝶に(遅足)能登・等・静荷・千香子
⑭亀なくや辺野古の海に杭要らぬ(千香子)静荷・亜子
⑮咲き急ぐ花悲しくて花祭り(すみ)智恵・能登・殿・千香子


次回は4月17日(水)午後1時20分。愛知芸文センター12階。
題詠はちょっと変則ですが、新元号を詠み込んで下さい。
新元号か、あるいは「落花」です。

どんな新元号なんでしょうね。これは関心を持たざるを得ませんね。
  
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鳴かぬなら鳴かせてみよう亀句会   麗

2019年03月21日 | Weblog
一気に春の陽気になった昨日。鳴くはずもない亀も思わず鳴き出してしまいそうな良いお天気でした。兼題は「亀鳴く」か「草餅」でした。
15句のうち難しい季語「亀鳴く」にチャレンジした方が多くどんな時に亀が鳴くのか想像力をふくらませてのチャレンジ句会となりました。

では一言講評です。

題詠「亀鳴く」「草餅」

①亀たにし鳴けど帰らぬ拉致の人

亀もタニシも鳴き声を聞いたことはありません。そんな亀やたにしが鳴いたのに、いまだ拉致された方々が帰国できず。拉致されている方やそのご家族に思いをはせました。

②よもぎ餅練りこむ鉢の青臭さ

情緒におぼれず、冷静に観察し「青臭さ」と表現したところが新鮮でした。

③亀いつ鳴く日差し和らぐ神の池

亀はいつ鳴くのでしょうか?神の池にいる亀なら、鳴くはずもない亀も鳴きそうです。

④亀鳴くや父から母へのラブレター

オスの亀がメスを慕って呼ぶような説もあるとか?施設に入所している母への父からの慰めの手紙。父の精一杯の愛情表現でした。

⑤気の利いた言葉は消えて亀の鳴く

気の利いた言葉なら言わない方がよかったと後悔することもあります。言葉より思い亀の鳴き声。

⑥亀鳴くや再建匂ふ中金堂

半年前に興福寺の中金堂が新しくなりました。鮮やかな丹塗りの赤色に鳴沢池の亀も思わず鳴いてしまったかも?


⑦汚染土はそのままだねと亀鳴きぬ

福島の汚染土は未だ手つかず。コントロールはされていません。真実を亀の鳴き声に託しました。

⑧石庭に心乱れて亀鳴きぬ

禅の公案。石庭を前に座禅を組んでも、目を閉じても心は乱れます。亀が答えをくれたような??


⑨亀鳴くや手足伸ばして首伸ばす

ぽかぽか陽気に甲羅干し。そう、こんな日に亀は心身を解放して鳴くのかも知れません。


⑩亀鳴くやひとが地獄をつくりし日

こんな衝撃的な句ができあがるとは!!作者の本領発揮です。原爆、原発事故。ひとが作った地獄です。地獄はあの世にではなく、この世にこそあるのです。そんな日に亀が鳴きました。

⑪ふるさとの土手で摘み取る蓬かな

素直な一句。懐かしい故郷の景色が浮かびます。

⑫水底に黄泉(よみ)の入口亀鳴けり

黄泉の入り口は水底にあるのかも知れません。童話的でもあり亀がここが黄泉への入り口と教えてくれるのかも?そんなこともあるかも知れないと思わせる、これまた渾身の一句。


⑬亀啼けば酒を呑ませて堀に返す

亀を生け捕りにしたらお酒を飲ませて帰してあげるといいという言い伝えがあるそうです。作者は名古屋城のお堀に亀を帰してあげた思い出があるそうです。下五の字余りが残念!

⑭老健に少女訪なひ母子餅

「老健」とは介護老人福祉保険施設の略称です。「年をとっても健康なこと」という意味でとられた方もいました(笑)少女を連れて行けば草餅作りもにぎわいます。ちなみにうちの母も老健でお世話になっています。

⑮亀鳴くよ傘寿むかへて句をはじむ

ほのぼのとした一句。俳句はいつからでも始められますね!亀もびっくり?応援しています。

いかがでしたでしょうか?亜子さんが先月の句会で、一度、鳴くはずのない「亀鳴く」という季語を使ってみたい。みなさんがどんな俳句を作られるのか楽しみ!とおっしゃいました。
皆頭をフル回転させてがんばりました!

句会を終えて亜子さん曰く。「大変満足です!!ありそうでなさそう、なさそうでありそうな場面が詠まれこの季語を選んでよかった」とのこと。

本当に難しい季語でしたがいろんな亀の鳴くシチュエーションを想像して鳴くはずのない亀を鳴かしてみせました。
できることなら地獄ではなくうららかな日に鳴いて欲しいですね。

さて、来月は新元号も発表になっていますので、新元号を詠み込んで一句。あるいは「落花」という季語でもOKです。

次回は4月17日(水)午後1時20分。愛知芸文センター12階。
皆様のご参加をお待ちしています。新元号、どんなかな~?麗子  


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3月句会の投句が集まりました。

2019年03月20日 | Weblog
題詠の亀鳴くは難しかったという声が・・・
ごらんのような句が集まりました。
どの句が春風を集めるのでしょうか?  遅足


題詠「亀鳴く」あるいは「草餅」

①亀たにし鳴けど帰らぬ拉致の人
②よもぎ餅練りこむ鉢の青臭さ
③亀いつ鳴く日差し和らぐ神の池
④亀鳴くや父から母へのラブレター
⑤気の利いた言葉は消えて亀の鳴く
⑥亀鳴くや再建匂ふ中金堂
⑦汚染土はそのままだねと亀鳴きぬ
⑧石庭に心乱れて亀鳴きぬ
⑨亀鳴くや手足伸ばして首伸ばす
⑩亀鳴くやひとが地獄をつくりし日
⑪ふるさとの土手で摘み取る蓬かな
⑫水底に黄泉(よみ)の入口亀鳴けり
⑬亀啼けば酒を呑ませて堀に返す
⑭老健に少女訪なひ母子餅
⑮亀鳴くよ傘寿むかへて句をはじむ


自由題

①ほつれ毛をかき上げる指春の色
②春炬燵たたんだ後はやせがまん
③陽炎につまずいているご老体
④長毛の犬全身で春駆ける
⑤通院後草餅二つ選びおり
⑥沈丁花目を閉じ寄るか一人っ子
⑦春かなし館なき跡迷い猫
⑧かぎろへば来し方行く末定かならず
⑨けごろもを脱ぎ深呼吸紫木蓮
⑩春寒や回り舞台を押す奈落
⑪車座に犬も鎮座の草の餅
⑫キャッスレスどこ行く小銭春風と
⑬山門を抜けて少女は初蝶に
⑭亀なくや辺野古の海に杭要らぬ
⑮咲き急ぐ花悲しくて花祭り

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薄氷の急流に出て水の精  狗子

2019年03月19日 | Weblog

良い句ですね。薄氷はもともと水。やはり水にかえって・・・

  落椿われならば急流へ落つ 鷹羽狩行

この句を思い出しました。
下五の水の精。これは賛否が分かれると思います。
水の精といわずに、行方は読者の想像に委ねて

  うすらいのつつつつと出て急流へ  遅足




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浦山風白檀かをる極楽寺  殿

2019年03月18日 | Weblog

極楽寺は鎌倉の小さな寺。お堂に佇むと微かな海風。
そして白檀のお香が流れます、と作者。

浦山風。海辺に近い山から吹きおろして来る風。
この句、阿仏尼著の「十六夜日記」の歌が背景にあるのでは、と郁子さん。

  しらざりし浦山風も梅がかは都ににたる春のあけぼの

訴訟のために京を離れ、鎌倉への旅をした阿仏尼。
梅の香りに都を偲んだ歌です。

この句には、春のあけぼの、梅の香が隠されているんですね。(遅足)
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水俣のみかん農家のみかん着き   千香子

2019年03月17日 | Weblog

およそ50年程前、水俣病で海を奪われた漁師さんたち。
陸に上がり、甘夏みかんを作り始めました。
しかしミカン農家にも農薬の害があることに気づき、
無農薬のみかんの栽培をめざします。
そして「水俣だからこそ安心安全」と言われるまでに。
見事、マイナスをプラスに転じました。

その水俣のみかんが今年も届きました。
頭韻がみな「み」です。軽やかな印象を与えてくれます。(遅足)
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