575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

紫陽花や色集まりて花手水  須美

2022年06月30日 | Weblog

異例の早さの梅雨明け、そして耐え難い猛暑となっています。紫陽花もこの猛暑でひからびて来た感じです。皆さま、水分とって熱中症にご注意くださいね。

さて、高得点を獲得した須美さんの美しい句。「花手水というものを知りました。色鮮やかな紫陽花で埋め尽くされてとても美しいです」とコメントがついていました。

私も最近この「花手水」に出会いました。名古屋の城山八幡宮を訪れた際、手水に色とりどりの花が浮かべられていました。それを花手水というのですね。今流行りの「映える」ようです。紫陽花ならさぞかし、瑞々しく美しいと思いました。さまざまな色を持つ紫陽花の花手水。それを「色集まりて」という言葉で表現されました。上五は切れ字ではなく「紫陽花の」としてもいいかな?と思いました。

では、皆様からの選句コメントです。

郁子さん:手水にお花を浮かべているのでしょうか。それともよくよく見たら紫陽花が映っていたのでしょうか。色とりどりのあじさいの花が印象的に描かれている。

結宇さん: 手水を使おうとしたら、花筏のようになってるといったところでしょうね。

女性の句のようなやさしさを感じます。

泉さん: 私が幼い頃見た紫陽花とは違い、今はいろんな色や形が違い美しい。

 

遅足さん、佐保子さん、健太さんも採られています。

              ★★★

コロナ禍で神社の手水も水が使えなかったり、情緒なく細い管から出てきたりと残念に思っていましたが、「花手水」という新しい文化がインスタ映えとともに根づいて来ています。ホテルのロビーなどでも流行っているようです。暑い夏、おうちの中でも花手水を楽しめるといいですね。麗子

 

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私のみた『方丈記』(4) 

2022年06月27日 | Weblog

鴨長明が鎌倉初期、晩年に書いた『方丈記』を

88歳の自分と重ねながら読んでいます。

 

『方丈記』第11項目「わが身、父方の祖母の家を伝えて」では、

50歳で出家した動機などを述べています。

 鴨長明は下鴨神社の禰宜(ねぎ)の次男として生まれ、

 父方の祖母のお屋敷を受け継ぎ恵まれた環境で暮らしています。

 その間、和歌や管弦に通じて、後鳥羽上皇の招きで和歌所職員にもなっています。

 しかし、それらの経緯は『方丈記』には何も書かれていません。

 

『方丈記』には

父方の祖母のお屋敷を受け継いだが、30歳の頃、自分の思いとして

一つの庵を最初は賀茂川の河原近くに建てたという。

この庵は以前の住まいに比べて10分の1とのこと。この記述に続いて、出家の動機を述べています。

  大地震や火災、平家滅亡など大変な世を我慢しながら過ごし、

「心を悩ませる30年なり。その間、折々のたがひめ(不本意なこと)おのづから招き運を悟りぬ。

すなはち、50の春を迎へて、家を出で世を背けり。もとより、妻子なければ、

捨てがたきよしがもなし。」

こうして、50歳で出家した長明は大原、最後は日野(京都市伏見)に隠棲。

日野の棲家は一丈(約3メートル)四方。これまでのように召使いもいない一人暮らしが始まります。

 

『方丈記』の後半部分は私のような高齢者の行き方にも参考になりそうです。

『方丈記』第16項目「それ、人の友とあるものは」より

「もし、なすことあらば、すなはち、おのが身をつかふ」

「常に歩き、常に働くは、養生なるべし」

 

 私も一人暮らし。家事など一切を一人でこなしています。

しかし、たまに娘が来ると、日頃、自分で出来ることでも、つい頼んでしまって、反省してます。

身体に障害のある人や病気をかかえている人は別にして、高齢者に気遣って、

なんでも手助けしてあげるのは、はたして、ご本人のために良いことなのでしょうか。

少し酷でも、出来ることは高齢者の手助けはしない方が、かえって養生につながるのではないでしょうか。

高齢の身で2、3日入院でもしょうものなら、たちまち足の衰えを感じます。

せめて、一日2000歩位は歩くように心掛けていますが、なかなか実行できていません。

そんな時は『方丈記』を思い出して頑張ろうと思います。   竹中 敬一

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紫陽花や揺れる心の昨日今日  亜子

2022年06月24日 | Weblog

寒気と暖気が押し合いへし合い、梅雨どきの不安定なお天気の中に

ひときわ目立つ紫陽花は七変化とも言われ、移ろう色に心象が重なります。

昨日今日という下句がいいですね。

 

竹葉さん: 紫陽花は七変化だから心が揺れるにあってますが、それ以上に花の房が大きいからゆさゆさよく揺れる光景も浮かび好きな句です。

等さん: 紫陽花の色自体「変わる」そうですが、絶えず揺れているのも作者の心でしょうか

晴代さん: 何が心を揺らしているか気になりますね。

千香子さん: いつまでたっても四十にして惑わずとはならないです。

泉さん: 心の変化がよくあらわされていて紫陽花の色の変化とあっています。

     

作者にうかがいました。

「決めなきゃいけないことは毎日いっぱいあるのよ。

でも今日決めたことが明日になったら変わるかもしれないと思うと心が揺らぐの」

 

まわりがうらやむおしどり夫婦。

どんなことでも話し合い、投句をする際もどの句にしようかと、生前の夫君に相談していらしたという作者・・

今はひとりで決断されています。

心細く揺れる思いと、今も埋められない心の穴のようなものが紫陽花に集約されているようです。 郁子

 

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静寂ごと白磁に生ける額紫陽花  郁子

2022年06月23日 | Weblog

紫陽花は大きく分けて、「テマリ咲き」と「ガク咲き」に分かれるようです。

紫陽花句会では郁子さんが、楚々として可憐、静謐な雰囲気を持つ額紫陽花を捉えられ、見事トップ賞に輝きました。おめでとうございました!

まずは皆さんのコメントからご紹介します。

等さん:白磁の花瓶に白い紫陽花、全てが静寂を感じます。

能登さん:静謐な空間と、活けられた花と花器が、眼に浮かびます。素敵な句ですね。

結宇さん:静寂も“まとめて”ということでしょうね。 白磁の器がさえます。

晴代さん:静寂事生ける・・・凛とした姿勢がうかがえます。

竹葉さん:山のように賑やかに咲く紫陽花も一輪花瓶に生けると静かな雰囲気になりますが、「静寂ごと」にあうのは日陰でひっそり咲く額紫陽花だと思いました。

亜子さん:◎の句。「静寂ごと」を「しじまごと」と読みました。額紫陽花の色が白か紫かわからないが、白磁がしじまを思わせる落ち着いた花器であり、よく似合う。

須美さん:静寂ごと生けるの表現が好き。白磁と額紫陽花ともよく合う。

 

千香子さんも採られています。

             ★★★

作者の郁子さんに句の背景をうかがいました。

2匹の猫を飼っておられる郁子さんのお宅では、猫が邪魔してなかなかお花を活けられないそうです。今年、お庭では額紫陽花が見事に花をつけたとのこと。そこで、青く美しい額紫陽花を一輪切り取り、白い花器に入れてお玄関に活けたそうです。すると。。。その瞬間、お玄関に静けさが広がり「静寂」という言葉が浮かんだそうです。「白磁」でもなんでもないのよ~と謙遜されていましたが、静かな空間を写生した見事な一句でした。

ちなみに読み方は「せいじゃく」で作られたそうですが、亜子さんの言われるように「しじまごと」と読んでも素敵ですね。そして、いたずら好きの猫ちゃんもなぜか大人しくしているそうです。麗子

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6月「紫陽花」結果発表!

2022年06月22日 | Weblog

 

  1. 紫陽花や色集まりて花手水 (須美) 麗子 郁子 結宇 遅足 佐保子 泉 健太
  2. 無人駅客われ一人手毬花  (等) 郁子 千香子 泉
  3. 紫陽花や揺れる心の昨日今日 (亜子) 竹葉 等 晴代 千香子 遅足 泉
  4. 紫陽花や群青の水丸くだき (晴代) 麗子 能登 須美
  5. 紫陽花や雨滴に弾む青と青 (竹葉) 郁子 健太
  6. 紫陽花の青に頑固な気配あり  (遅足)
  7. 色あせぬ青あじさいの絵を飾る  (健太) 麗子 能登
  8. 静寂ごと白磁に生ける額紫陽花 (郁子) 竹葉 等 能登 結宇 晴代 千香子 須美 亜子
  9. 紫陽花や藤井五冠の巻き返し (麗子) 竹葉 佐保子
  10. 紫陽花の切り口を焼き活けし母  (佐保子) 亜子
  11. 托鉢僧うつむき加減あじさい花 (結宇) 等
  12. あじさいや性別欄に「その他」あり (千香子) 晴代 遅足 須美 亜子 健太
  13. 鮮やかに我もまねたい七変化 (泉)
  14. 紫陽花の水滴の内萬(よろず)棲む (能登) 結宇 佐保子

 

自由題

  1. 泪して白き紫陽花揺れ止まぬ (等) 遅足
  2. 青と黒空半分の走り梅雨 (竹葉) 麗子 等 能登 結宇 千香子 泉
  3. 梅雨入りや全ての重み抱え込み (麗子) 等 郁子 結宇 佐保子 須美 健太
  4. あじさいいろとはみずいろのこと  (遅足)
  5. 相生山四人で観たり姫蛍   (佐保子) 麗子 千香子 亜子 健太
  6. 山寺に絵馬の音のみ草むしり (結宇) 竹葉 晴代 泉
  7. きっかけは友の訃夏のクラス会(郁子) 能登 晴代 遅足
  8. ひまわりと平和行進青い空 (千香子) 竹葉 佐保子
  9. 捕らわれし兵の童顔梅雨寒し (亜子) 竹葉 能登 千香子 遅足 佐保子 須美
  10. 石の陰滴るキラリ苔青し (泉) 郁子 健太
  11. 樹々たちがよろこび謳う青嵐 (能登) 結宇 泉
  12. アマリリスモデル歩きの女子高生 (晴代) 麗子 等 須美 亜子
  13. 夏至近し夕餉の用意気が乗らず (須美) 郁子 晴代 亜子

 

 トップ賞 兼題は 郁子

  自由題は 竹葉 麗子 亜子 でした

 

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紫陽花句会の投句が集まりました。

2022年06月21日 | Weblog

梅雨空が続きます。雨に濡れたしっとりとした紫陽花はとても美しいです。いろんな紫陽花が咲き競いました。どの紫陽花が人気でしょうか?明日の結果をお楽しみに。

 

兼題「紫陽花」

①      紫陽花や色集まりて花手水 

②      無人駅客われ一人手毬花  

③      紫陽花や揺れる心の昨日今日 

④      紫陽花や群青の水丸くだき 

⑤      紫陽花や雨滴に弾む青と青 

⑥      紫陽花の青に頑固な気配あり  

⑦      色あせぬ青あじさいの絵を飾る  

⑧      静寂ごと白磁に生ける額紫陽花 

⑨      紫陽花や藤井五冠の巻き返し 

⑩      紫陽花の切り口を焼き活けし母  

⑪      托鉢僧うつむき加減あじさい花 

⑫      あじさいや性別欄に「その他」あり 

⑬      鮮やかに我もまねたい七変化  

⑭      紫陽花の水滴の内萬(よろず)棲む 

 

自由題

①      泪して白き紫陽花揺れ止まぬ 

②      青と黒空半分の走り梅雨 

③      梅雨入りや全ての重み抱え込み 

④      あじさいいろとはみずいろのこと  

⑤      相生山四人で観たり姫蛍   

⑥      山寺に絵馬の音のみ草むしり 

⑦      きっかけは友の訃夏のクラス会

⑧      ひまわりと平和行進青い空 

⑨      捕らわれし兵の童顔梅雨寒し 

⑩      石の陰滴るキラリ苔青し 

⑪      樹々たちがよろこび謳う青嵐 

⑫      アマリリスモデル歩きの女子高生 

⑬      夏至近し夕餉の用意気が乗らず 

 

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私のみた『方丈記』(3)

2022年06月20日 | Weblog

 

『方丈記』の著書、鴨長明は伝記によると、京都の下鴨神社の禰宜(ねぎ)の出だという。

因みに、徒然草の著書、吉田兼好の先祖も京都の吉田神社の社家だそうです。

鴨長明が『方丈記』を書いたのは晩年の57歳の頃のことです。

 『方丈記』の2項目「安元の大火」では記者のような眼で記述しています。

ところが、9項目「また、同じことかとよ」で取り上げた「元暦の地震」では、

安元の大火のようなリード部分もなく、いきなり、地震の有り様から始まっています。

 記者の眼から随筆家の眼に。

全体の文脈をみると、どうやら地震の怖さを見聞きした具体例を挙げて、忘れがちな災害に警鐘を鳴らしているようです。

 「元暦の地震」は元暦2年(1185)、都でおきた大地震のこと。

私は若い頃、覚えたこの1185年という年号が何故か今も記憶に残っています。

1185年という年の3月24日、壇ノ浦の戦いで平家が滅亡、鎌倉時代が成立しています。

平安時代から鎌倉時代へ(1185年を覚えておくと何かと便利です)。

そして、この僅か4か月足らず後の7月9日、 元暦の地震が都を襲っています。

鴨長明は30歳の頃、

このような歴史の大きな転換期を生き、災害や飢餓を目の当たりにしています。

平家物語にも 元暦の地震について同じような記述があります。

例えば、『平家物語』(巻第12)より

「…鳥にあらざれば、空を翔(か)けり難く、龍にあらざれば雲にも上り難し。…」

『方丈記』では

「…羽なければ空をも飛ぶべからず。龍ならばや、雲にも乗らむ…」

 

『方丈記』は鎌倉初期、一方『平家物語』の原形は鎌倉中期といわれているため、

『平家物語』の方が『方丈記』を参考にしてると思われます。

『方丈記』ではこの大地震の記述の最後は

「…月日重なり、年経にし後は、ことばかけて言ひ出づる人だになし。」

   と、災害は忘れた頃にやってくると警告しているのに対して、

『平家物語』では

「…平家の怨霊にて、世の失すべき由、申しければ心ある人の嘆き悲しむは、なかりけり。」

   と、無常観を込めて詠嘆調で終わっています。

『方丈記』は、18項目あるうち、私が目を通した限り、無常観を詠嘆調に述べた箇所は見当たらず

一見、淡々と述べていますが、それが、かえって、心に残ります。

 

前回、掲載した拙文について、とても、教養豊かな「文科系」さんから

コメントをいただきました。この方からは以前にもコメントをいただき、

励まされたのを覚えています。

鴨長明の著書『方丈記』『発心集』を読んでいるばかりか、賀茂神社に

再現された庵も見ておられるとのこと。恥いるばかりです。

琵琶の名手でもあった長明。音楽の力、美の力について述べて

おられます。ありがとうございました。

                   竹中 敬一  

 

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宇宙食開発したる我が母校作りし子らの瞳かがやく 竹中敬一

2022年06月19日 | Weblog

今日の中日新聞、中日歌壇

 母校の誇りが、いまや宇宙へと拡がる  と選者の小島ゆかりさんのコメントです。

 

佐保子さんが、さっそく竹中さんに電話をしてお話をきいてくださいました。

「少し前に投稿されたものとか。ニュースで若狭高校水産科の後輩たちが、寒鮒の水炊きの缶詰を作ったというニュースをみて、

その時、この先輩たちがかって考えた鯖缶が宇宙食のことも紹介されていたので、詠まれたそうです。おめでとうございます!」

 

 

 

 

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うねうねと鮎串を打ち炙る叔父  須美

2022年06月17日 | Weblog

(叔父は鮎釣りが趣味で上手に串を打って炭火で焼いてくれました)という須美さん。

ということはもちろん!鮎は天然ものですね

鮎は香魚と称されるように独特の香りがあるようで、スイカ、キュウリを思わせる夏の香りなのだとか・・うーん嗅いでみたい。

清流を泳ぐ鮎の姿そのまま、うねうねがきいています。

 

 結宇さん:鮎の時期ですね。おいしそうで、うらやましい。

 千香子さん:釣りたての鮎のイキイキ生きているような姿がうねうねに表現されていると思いました。

 泉さん:そろそろ鮎の季節、いかにも おいしそう。

 遅足さん、健太さんも一票投じました。

 

ところで

この句の最後「叔父」はいるのだろうかという指摘がありました。

「炙りをり」で終わったほうがいいのではという提案です。

ですが、鮎の姿は見えますが、誰が炙っているのか少し曖昧になります。

作者は、鮎を食べさせてやろうと自ら釣って串を打ち焼いてくれる「叔父さんの気持ち」が嬉しかったのだと思います。

野趣あふれるその光景は小さなお子さんがいらしたら記憶の財産になったことでしょう。香りもセットで刻まれたにちがいありません。

香ばしく美味しそうに焼ける鮎と、とりまく人の思いも浮かんでくる一句と思いますがいかがでしょうか  郁子

                  

 

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緑さすカンバスの筆新たなる  竹葉

2022年06月16日 | Weblog

「緑さす」は初夏の若葉のさわやかな緑。五月らしい気持ちのいい一句だと思いました。。緑色を描く新しい絵筆。どんな美しい絵画が仕上がったのでしょうか?

作者の竹葉さんにどんな状況を詠まれたのかうかがってみました。

以前、お孫さんが公園の写生をしていたのを横から「もっと色んな色があるのを見たら!」と言ってつい筆を取ってしまったことがあるそうです。毎年5月の新緑後は、ちょっとした公園も木々が緑に生い茂り、この色々な緑を句にしたいと思ったそうです。その時浮かぶのが、あの時のパレットで、なんとか「パレットに作る万緑」にしたかったとのこと。実際にカンバスに絵を描いたことはないそうですが、カンバスに次々に新たな緑を描くという句にすると、色んな緑が出来上がってしっくりしたそうです。

             ★★★

カンバスという表現もおしゃれですね。選句された郁子さん、須美さんも5月らしいさわやかな句という感想をお持ちでした。私もさまざまな緑色をカンバスに描いてみたくなりました。  麗子

 

 

 

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私のみた『方丈記』(2) 

2022年06月13日 | Weblog

 

『方丈記』の2項目「予、ものの心を知れりしより」にある平安末期、

安元3年(1177)に都でおきた大火についてお伝えします。

この文章の初め、リードの部分の原文を紹介します。

 

「去ぬる安元三年四月二十八日かとよ。風激しく吹きて、静かならざりし夜、

戌の時ばかりに、都の東南より、火出で来て、西北に至る。

果てには朱雀門、大極殿、大学寮、民部省まで移りて、一夜のうちに、塵灰となりき。

火元は、樋口富小路とかや。舞人を宿せる仮屋より、出で来たりけるとなん。」

 

このリード部分だけで、安元の大火の概要がわかります。

私は若い頃、民放局のラジオニュース課にいて、新聞社や共同通信から

送られてくるニュース原稿を放送用にリライトしていた経験があります。

昭和30年代の頃ですが、当時を思い出してリライトしてみます。

 

「安元3年4月28日の夜8時頃、都の東南、富小路あたりから出火しました。

折りからの強い風に煽られて、火はみるみるうちに都の西北へと燃え広がりました。

火の手は皇居近くの官庁街まで燃え移り、この辺り一帯は一夜にして焼け野原となりました。」

この後、火災の状況を述べて最後に

「火もとは、富小路近くの芸人を寝泊まりさせる仮小屋からとみられています。」

 

以上ですが、デスクから「リード部分はもっと短く」と言われるでしょう。

もちろん、私のリライトした味気ない文章と違って『方丈記』の記述は

客観的とはいえ、文学的表現が随所に見られます。

このリード部分の後に続く火災の様子を描写した場面、

例えば「火の光に映じてあまねく紅なる中」

夜中、一面に燃え広がる様を「あまねく紅」とは見事。

また、強風に「吹き切られたる焔、飛ぶが如くして一、ニ町(1町は約110m)を超えつつ移りゆく」という表現。

火事場をまるで動画を観ているかのようにリアルに目に浮かんできます。

司馬遼太郎の「翔ぶが如く」はひょっとしてここからかも。

 

 同じ災害でも、安元の大火は記者の目で、

 次回お伝えする元暦の大地震については随筆家の目で記述しています。

                      竹中敬一

 

 

 

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かの夏や壕で読みたる方丈記  鍵和田秞子

2022年06月12日 | Weblog

昨日6月11日は鍵和田秞子の2年前に亡くなった日でした。

私の愛読しているふらんす堂編集日記にこの記事が紹介されていました。

藤田直子著「鍵和田秞子の百句」より。

      かの夏や壕で読みたる方丈記    『光陰』 平成6年

「かの夏」は戦時中の夏である。女学生だった秞子は家族と共に平塚に居た。空襲警報が鳴る度に防空壕に入ったが、戦況が激しくなった頃、壕の中でいつも読んでいたのは鴨長明の『方丈記』だったと言う。無常観に貫かれた『方丈記』をその齢で正しく理解していたかどうかは分からないが、と回顧している。しかし、平安末期の大火や地震や飢饉等の災害の中で無常観に至り、閑居の楽しみを見出した長明の思いや生き方は、戦争という不条理の只中に立たされていた者にとって一条の光明であっただろう。

秞子が文学を志す契機の一書が『方丈記』であった。

               ★★★

ふらんす堂の短歌日記、俳句日記もおすすめです。  佐保子



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祈るしかなきこと祈り梅雨の星  亜子

2022年06月10日 | Weblog

この句に多くの共感が集まりました。

連日報道されるウクライナ侵攻の状況に大勢の方が心を痛めています。

 

能登さん:祈るしかないことが多すぎる昨今、心に沁みます。

等さん:戦争が早く終わるようにと、皆が星にお祈りをささげるほかありません

千香子さん:具体的なことは何も言っていないけれど、それだけにそれぞれの人が納得できて面白いと思いました。今なら戦争とめて 

誰しもが思う、理不尽で不条理なこの状況を打開するためには祈るしかできないのでしょうか。

すがる思いで見上げるお星さまも梅雨空に泣いているようです。

 

 

ところで「星に願いを」という歌もありますが

流れ星に願い事をするという風習は欧米はじめアジアなど多くの国々にあるようです。

これには理由があります。

星が流れるのは、神様が地球の様子を覗くために「天の扉」をすこしだけ開いたときに漏れる光だというのです。

その瞬間に神様と繋がることができ、願い事を叶えてくれるのだとか。神社で手を合わせるのにも似ています。

ただ、星の流れる短い間に願い事を三度繰り返すのは、余程の早口でないと難しいかもしれません。

アメリカでは「マネー、マネー、マネー」と叫ぶのだと聞きました。さすが合理主義の国 (笑)

 

今度流れ星に遭遇したら 『平和』 と三度唱えることにします。

一番叶えて欲しい願いです。   郁子

 

 

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白南風にましろき妻をとられけり  健太・遅足

2022年06月09日 | Weblog

5月30日に郁子さんが自由題のトップ賞としてご紹介くださいましたが、コメントをいただいていたのでいくつかご紹介したいと思います。

郁子さん:実はよくわからない光景なのに魅かれてとりました。南風は南風でも黒南風では重くて妻はさらえません。嵐の唄う「夏疾風」を思い出しました。

結宇さん:今一つ、想像力欠如で“しろき妻”というものが描けません。 でも、印象がさわやかな感じがして。

須美さん:色白の妻が日焼けして行くという事でしょうか?「とられけり」に妻への愛情を感じました。

私もいただきました。白南風は梅雨明けの頃に吹く南風。「ましろき妻」という表現がなまめかしくも新鮮な感じを受けました。白南風に嫉妬する感じが、妻をいとおしく思う気持ちとして伝わって来ます。

新しく仲間入りされた健太さん。奥様がポリ袋を風に飛ばされて追いかけて行く様を詠みたいと思われました。佐保子さんが「白南風」という季語をみつけ、遅足さんがまとめ上げた、いわば三位一体の句です。「ましろき妻」という表現が遅足さんらしいですね。

遅足さんのリハビリに来て下さる健太さんの登場で、お二人の生活に俳句が触媒となり活気や刺激を与えていることと思います。

       白南風に乗って何かが変わりおり  麗子

 

 

 

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私のみた『方丈記』(1) 竹中敬一

2022年06月08日 | Weblog

 

平安末、鎌倉初期に書かれた鴨長明の『方丈記』について

大抵の辞書には「枕草子、徒然草と並び随筆文学の傑作、無常の思想を格調高い文章にまとめたもの」とあります。

これを見ただけで、とてもついていけない、それに古文も苦手というのは私だけでしょうか。

教科書で冒頭の有名な「ゆく河の流れは…」を学んで以来、読んだことはありませんでした。

 

ところが、88歳の今、

インターネットで調べたいことがあって検索中、偶然『方丈記』に出会いました。

そこには、原文とその現代語訳が載っています。

全文は18の項目に分かれており、それぞれ簡潔な短い文章でまとめています。

その前半部分は、当時おきた天災や飢餓の様子を客観的に記述していて、興味深く引き込まれました。

特に、2項目「予、ものの心を知れりしより」に書かれた平安末期にあった安元の大火についての記述は、まるで新聞記者のような目で書かれています。

新聞や放送の記事で最初に一番、伝えたいことを短く書くことをリードと言いますが、『方丈記』にも見事なリードの部分がありました。

「いつ」「誰が」「どこで」「何を」といった記事の基本が要約されています。

それだけではなく、後半部分には、私のような高齢者が一人になった時、如何に生きていけばよいか。

無常観などという難しい話ではなく、衣食住について具体的に述べていて、参考になります。

 

次回から3回に分けてお伝えします。

 

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