575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

春寒や晩学の書を積むばかり  亜子

2019年02月27日 | Weblog

歳はとっても勉強したいことも読みたい本も沢山あります。
しかし若い頃の様に早くは読めません。
前読んだのを忘れて戻ったり、なかなかはかどりません。
ちょっと侘しい句ですが、勉強しようとする
素敵な方と思いました、とすみさん。

「知之者不如好之者、好之者不如楽之者」
「物事を知っている人も好んでいる人には及ばない。
物事を好んでいる人も楽しんでいる人には及ばない」
という孔子の論語を思い出しました。とまれ、学成りがたし。
一瞬の光陰を軽んじ、学問が楽しみに至らなかった私。
他人事には思えず選句しました、と殿様。

春寒という季語。暖かくなる春の方に力点を。

  晩年の今が晩年書を求む  遅足
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

天の原無音デシベル梅香る  殿

2019年02月26日 | Weblog

雲一つない広々とした春の空。静寂の梅園。
梅の香りがふわりと漂います、と作者。

デシベル。
音の大きさを表す単位。
主に騒音の測定単位として使われている、といいます。

目・耳・鼻の感覚を100%生かした句。
写真とのコラボもすばらしいですね。(遅足)


コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

斑雪野や友逝きし地に我生きむ  能登

2019年02月25日 | Weblog

班雪野(はだれの)。
まだらに降り積もった雪の野。春の季語です。
春の兆しはみえるものの、まだ雪の残った野。
春を迎えることなく亡くなった友への挽歌です。

亡くなったのは能登さんの友人。
詫間電波高校(香川県)の同期生。
外国航路の通信士として世界中を訪問。
ガン発症、数回の大手術。数年前より夏井いつき組に投句。
その彼より久しぶりのメールで

「遺骨拾い戻る車列に波の花」 波恋治男(友の俳号)

が、夏井いつきのHPの載ったとの連絡。
返事を出す前に逝去の報。2月5日の早朝のこと。
弔電で送った句

「波恋ふと旅立つ友のわすれ雪」

この句が下敷きになって今回の句になりました、と能登さん。

波恋さんは、四国遍路を経て、句集「一寺一句」を出版されたそうです。
こころからご冥福をお祈りします。遅足
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

春寒や歩みゆるめて欄干へ  晴代

2019年02月24日 | Weblog

欄干への歩みは、春の冷たい風に晒され、
橋や城など高所への恐怖に耐える必要があります。
歩みをためらう作者の身体と気持ちの変化を
俯瞰するように描写。
最後尾の助詞も印象的、と殿様。

逡巡する作中人物の心理。
春と冬の間を行きつ戻りつする季節。
この大小ふたつの世界が響き合う。
あとは読者に委ねた俳句らしい一句です。遅足
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「 みんぺーさん 」のこと ~ 竹中敬一

2019年02月23日 | Weblog


今年の1月中旬、愛知県の渥美半島を車で一周 、一足早く春を満喫

してきました。

特に半島の東側、遠州灘に面した街道の風景に魅了されます。

特産のシラスなどの魚介類を食したいところですが、腎臓病のため、

それは諦めて、かねてから尊敬していた " みんぺーさん " の蔵書が

あるという田原市の渥美図書館へ行ってみました。


杉浦明平 ( 1913 ~ 2001 )は、田原市の生まれ 。

地元にしっかり根を下ろし、小説家、随筆家として、独自の見解を発信

し続けました。

また、町会議員を務めたり、畑仕事をするなど常に行動する人でもあり

ました。

明平さんからの寄贈を受けて、渥美図書館の2階には特別の部屋があり、

約9000部が、また1 階の閲覧室にも約8000部 と 合わせ1万7000部

を公開、閲覧できるようになっています。

夏目漱石、森鴎外、萩原朔太郎らの初版本から群書類従などの歴史書と

多岐にわたっています

明平さんが残した業績が広範囲に及ぶため、私が読んだ「 ノリソダ騒動記 」

( 未來社 )、「レオナルド・ダ ・ヴィンチの手記 」( 岩波文庫 )だけに

ついて、触れておきます。

私は昭和39年から44年にかけて、テレビ草創期のドキュメンタリー番組

「 カメラルポルタージュ 」 ( 30分 TBS 系 )で計 18作品を手がけました。

様々な話題を取り上げましたが、いつも、そのネタ探しに苦労しました。

そんな折、読んだのが ルポルタージュ文学の先駆けともいうべき「 ノリソダ騒動記 」

ノリ養殖の利権をめぐって 「 地方ボス 」と明平さんら共産党の地区細胞

との闘争を時には、ユーモラスに描いた作品でした。

この手法をテレビに取り入れるてみようと思いました。

昭和41年放送の「 密漁 ~ かなしき沿岸漁民 ~ 」は、漁場を失った愛知県の漁民が

三重県の漁場に入り込み、密漁で捕まるまでを追いながら、なぜ、隣同士の同じ漁民が

争わなければいけないのか、追われいく姿を描いた作品です 。

明平さんの作品をヒントに企画 、制作したものでした。

また、昭和 43年、列車トイレのタレ流しによる黄害をルポした「 列車糞尿譚 」

( 日本民間放送連盟 金賞 )も意識はしていませんでしたが、今から思えば、

明平さんの作品の影響を受けていました。


平成7年、愛知県美術館で開かれた 「 レオナルド・ダ ・ヴィンチ人体解剖図 」展に

合わせて、テレビ番組制作の際は、杉浦明平の翻訳 「 レオナルド・ダ・ヴィンチの手記 」

( 岩波文庫 )を参考にさせてもらいました。

杉浦明平の履歴 ( 田原市博物館 ) によると、東大文学部を卒業後、昭和13年、

原典によるルネサンス研究を志し、東京外国語学校 ( 東京外大 )に一年間

通ってイタリア語を取得。戦時下でダ・ヴィンチやミケランジェロなどルネサンス文学

の翻訳、研究に取り組む中で 「 レオナルド・ダ・ヴィンチの手記 」を翻訳 しています。

昭和29年 岩波文庫として 上巻、4年後に下巻を出版しています。

この中に人体解剖のことも書かれていています。

愛知県美術館で展覧会が開かれた当時、ダ・ヴィンチの人体解剖図に関して、日本語で

書かれた美術書は見当たりませんでした。

明平さん訳の 「 レオナルド・ダ ・ヴィンチの手記 」だけが手がかりでした。

何しろ、ダ・ヴィンチはモナリザなど絵画で有名であるばかりでなく、建築家、天文学、

解剖学などにも詳しく、万能の天才と言われているだけに、その全体像を知ることは

難しいようで、それぞれの分野で専門家がいます。

人体解剖図については 、これを所蔵している英 ウインザー城 王立図書館で医学博士の

称号を持つ学芸員の方に解説してもらいました。

ダ・ヴィンチが残した様々な業績について研究するには、今でも明平さん訳の

「 レオナルド・ダ ・ヴィンチの手記 」が役立っていることと思います。


写真は愛知県南部の渥美半島、 半島の東側 遠州灘に面した所から撮る 。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2月句会の結果です。   遅足

2019年02月22日 | Weblog
ようやく暖かくなってきました。8人の出席。ごらんの結果となりました。

題詠「春寒」あるいは「牡丹の芽」
①春寒や古き良き邸更地なり(能登)幸泉・結宇・すみ・郁子
②春寒を独り舞台の幕間かな(結宇)能登・等・静荷
③獅子舞うや明日大輪の牡丹の芽(晴代)
④天の原無音デシベル梅香る(殿)晴代
⑤風を受け何やら秘める牡丹の芽(麗子)幸泉
⑥獣(じゅう)の爪やがて見参牡丹の芽(等)殿・遅足・静荷・亜子・郁子
⑦人知れぬ老女の覚悟牡丹の芽(郁子)佐保子・すみ・遅足・晴代・千香子・麗子
⑧春寒や引越し荷物山高し(すみ)幸泉・結宇・狗子・等
⑨料峭を楽しみペダル踏む親子(佐保子)千香子
⑩春寒の路上にふたりパンを売り(千香子)佐保子・遅足・亜子
⑪海からの風に濡れたる牡丹の芽(遅足)能登・麗子
⑫春寒や晩学の書を積むばかり(亜子)殿・すみ・静荷・狗子・等・晴代
⑬春浅し 寒さの中に つぼみあり(幸泉)
⑭花の名を思ひ出せずに春寒し(静荷)佐保子・殿・能登・狗子・亜子
⑮稚児の舞う五十鈴神楽の春寒し(狗子)結宇・千香子・郁子・麗子

自由題
①春寒や歩みゆるめて欄干へ(晴代)殿・すみ・遅足
②錬成の声まず先に寒げいこ(結宇)すみ・晴代・狗子
③斑雪野や友逝きし地に我生きむ(能登)佐保子・静荷
④春寒や門扉にかかる置き土産(麗子)佐保子・結宇・遅足・晴代・狗子・亜子
⑤水俣のみかん農家のみかん着き(千香子)佐保子・麗子
⑥晩年の父のステッキ春を待つ(亜子)幸泉・能登・結宇・静荷
⑦午(ひる)までの日射し忘れず福寿草(佐保子)等・千香子・麗子
⑧寒空や子規の俳句に酔いしれる(幸泉)殿
⑨独り居の老のハミング春よこい(静荷)能登・すみ・郁子
⑩防護服脱いで椿を吐きだせり(遅足)等・亜子
⑪建て替わる家に変わらずの梅ひらく(郁子)狗子・静荷
⑫太陽の子を抱きたる冬牡丹(等)殿・幸泉・遅足・郁子・麗子
⑬浦山風白檀かをる極楽寺(殿)等・郁子
⑭薄氷の急流に出て水の精(狗子)幸泉・千香子・亜子
⑮鰰のお腹ぷっくり海遠し(すみ)能登・結宇・晴代・千香子

次回は3月‎20日(水)午後1蒔20分 愛知芸文センター12階会議室C
題詠は「亀鳴く」あるいは「草餅」です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ひと口感想です。   遅足

2019年02月21日 | Weblog
恒例のひと口講評、今回はピンチヒッター。よろしくお願いします。

①春寒や古き良き邸更地なり・・・○○邸と呼ばれたお屋敷も更地に。季節も世代も移り変わるのは常とは言え・・・。

②春寒を独り舞台の幕間かな・・・作者は舞台を観ているのか?舞台に立っているのか?その幕間は春寒の頃。

③獅子舞うや明日大輪の牡丹の芽・・・連獅子。子が舞う姿を観て大輪に、と願うココロ。牡丹の芽ならではの一句。
                
④天の原無音デシベル梅香る・・・空は真っ青。音もなく静寂。梅の香が。視覚・聴覚・嗅覚を動員した一句。中七の「無音デシベル」この斬新な表現!

⑤風を受け何やら秘める牡丹の芽・・・まだまだ小さな芽ですが、おおきなものを秘めています。明日はどんな姿?

⑥獣(じゅう)の爪やがて見参牡丹の芽・・・あの強い獅子も虫には弱い。牡丹によって守られているという。

⑦人知れぬ老女の覚悟牡丹の芽・・・人はそれぞれ心に秘めたものを持っています。もう一花咲かせる夢でしょうか?

⑧春寒や引越し荷物山高し・・・子供の旅立ち。山のような引っ越し荷物。さみしい親心・・・

⑨料峭を楽しみペダル踏む親子・・・こちらは、まだ小さな子供。ともに冷たい空気を切ってペダルを。

⑩春寒の路上にふたりパンを売り・・・ひとりではなくふたり。その暖かさ。

⑪海からの風に濡れたる牡丹の芽・・・心象風景でしょうか。

⑫春寒や晩学の書を積むばかり・・・日差しも長く、暖かくなったら読書三昧。気持ちがよくてつい居眠り・・・

⑬春浅し 寒さの中に つぼみあり・・・中七の「寒さ」を推敲したら良い句に。

⑭花の名を思ひ出せずに春寒し・・・名前が出てきません。イメージは右脳、名前は左脳が担当。左脳よガンバレ。

⑮稚児の舞う五十鈴神楽の春寒し・・・鈴の音は神様にこちらを見て下さいという合図。可愛らしい子供の舞う神楽。春はそこまで。


次回の題詠は「亀鳴く」あるいは「草餅」です。

                 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2月句会の投句が集まりました。 遅足

2019年02月20日 | Weblog

題詠は「春寒」あるいは「牡丹の芽」です。
力作が勢ぞろい。選ぶのに一苦労です。

題詠
①春寒や古き良き邸更地なり
②春寒を独り舞台の幕間かな
③獅子舞うや明日大輪の牡丹の芽
④天の原無音デシベル梅香る
⑤風を受け何やら秘める牡丹の芽
⑥獣(じゅう)の爪やがて見参牡丹の芽
⑦人知れぬ老女の覚悟牡丹の芽
⑧春寒や引越し荷物山高し
⑨料峭を楽しみペダル踏む親子
⑩春寒の路上にふたりパンを売り
⑪海からの風に濡れたる牡丹の芽
⑫春寒や晩学の書を積むばかり
⑬春浅し 寒さの中に つぼみあり
⑭花の名を思ひ出せずに春寒し
⑮稚児の舞う五十鈴神楽の春寒し

自由題
①春寒や歩みゆるめて欄干へ
②錬成の声まず先に寒げいこ
③斑雪野や友逝きし地に我生きむ
④春寒や門扉にかかる置き土産
⑤水俣のみかん農家のみかん着き
⑥晩年の父のステッキ春を待つ
⑦午(ひる)までの日射し忘れず福寿草
⑧寒空や子規の俳句に酔いしれる
⑨独り居の老のハミング春よこい
⑩防護服脱いで椿を吐きだせり
⑪建て替わる家に変わらずの梅ひらく
⑫太陽の子を抱きたる冬牡丹
⑬浦山風白檀かをる極楽寺
⑭薄氷の急流に出て水の精
⑮鰰のお腹ぷっくり海遠し

一体、どの句が風を集めるのでしょうか?



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

冬の月ドビュッシー聴く無重力  殿

2019年02月19日 | Weblog

ドビュッシーはフランスの作曲家。
代表曲は「月の光」。
冴え渡る月の光の中。
流れるやわらかな旋律に身を委ねるとふわりと浮遊。
私の密かな幸せのひとつ。
と、作者。

今日は雨水。暦通りに雨。
雨があがれば、今夜、満月が見られるそうです。
満月の夜。音楽の宇宙遊泳を楽しみたいですね。遅足
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

適温に揺れて湯豆腐眠き味   郁子

2019年02月18日 | Weblog

鍋の中で揺れ動く豆腐を見つめる作者。
主張のない豆腐の味。
ゆったりとした時の流れる夕餉の光景が、
白い湯気の中からゆらゆらと浮かび上がります。
下五の「眠き味」が絶妙、と殿様。

作者と湯豆腐が一体化したような不思議な句ですね。

豆腐は中国で生まれ、日本に伝えたのは遣唐使という説、
室町時代の僧とする説など定かではありませんが、
やがて僧侶の精進料理として広まっていきました。

庶民の間で食べられるようになったのは江戸時代。
豆腐料理のレシピ本『豆腐百珍』には
「湯奴(ゆやっこ)」が紹介され
「浮かび上がれば、はやかげんよろしからずや」とあり、
豆腐の温め加減が大切だと書かれているそうです。

湯豆腐はいまや庶民の冬の定番。
すっかり定着して俳句の世界でも活躍しています。
我が家は蟹のあとは湯豆腐でした。(遅足)

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大皿の波に乗りたるズワイガニ  遅足

2019年02月17日 | Weblog

冬の味覚、越前ガニをお腹いっぱい食べてみたい。
ここ数年来の夢をかなえるバスツアーに行ってきました。

永平寺の門前で精進会席の昼食のあと、
福井市にある名勝・養浩園の庭を見学。
幕末の藩主・松平春嶽公も愛した泉水屋敷です。(写真)
今年は雪も少なくて過ごしやすいとのこと。

この後、あわら温泉へ。
露天風呂を楽しんだあといよいよ夕食。
まず、ズワイガニの洗い。(あまり美味しくなかった)
お待ちかねのタグ付きのズワイガニ。
タグには「三国港」と水揚げされた漁港の名。
茹で上がったカニまるまる一匹。奥さんと二人で食べ始めます。
甲羅をはがしてカニ味噌。足の肉をカニ酢で。
しばらくは二人とも無言。
さらに焼いたカニが。もうお腹いっぱいです。

タグのついたカニが登場したのは最近のこと。
蟹の品質や原産地を保証する表示だとか。

  タグ付けて大皿に咲くズワイガニ

それにしても冥途の土産の旅。バスも17人で定員。
ちょっと豪華で高価な旅でした。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

まんぷくラーメン チベットへ行く ~ 竹中敬一

2019年02月16日 | Weblog


今 放送されているNHKの朝ドラ 「 まんぷく 」を観ていて、ヒロインの

夫がインスタントラーメンを開発した日清食品の創業者 、安藤百福

( ももふく )氏であることを知り、私の記憶が蘇ってきました。

昭和 52 年 ( 1977 ) のことです。

名古屋のCBCテレビに在職中でした。標高4000メートル級のチベット高原に取材に

行った時、百福氏から現地の人の試食用にインスタントラーメンを持っていくよう

依頼されたのでした。

私たちが行っのは、「 西チベット 」と呼ばれる辺境の地です。

正しくは、インド領カシミール州ラダックといいます。

この地域は中国、パキスタンと国境を接しており、帰属問題をめぐって、

紛争の絶えないところで、長い間、外国人は入れませんでした。

派遣されたのは私とカメラマンの二人。

現在の藤田医科大学の医療チームに同行したもので、西チベットが外国の

報道関係者に公開されたのは、これが初めてでした。


この海外取材を聞きつけたCBCテレビ大阪支社の営業マンがスポンサー筋

でもある安藤百福氏にチベット行きの話を雑談の中で伝えたのだと思います。

私は現地に向かう少し前、その営業マンに呼び出されて、一緒に大阪の日清食品を訪れ 、

安藤百福氏に初めてお会いしました。

百福氏からは インスタントラーメン30袋ほどを持って行って、現地の人

たちに試食してもらい、食べた感想を後で聞かせてほしいというものでした。

百福氏にお会いしての印象は今、どうしても思い出せません。

ウイキペディア調べの履歴から、私がお会いした昭和52年 、百福氏は66歳 。

日清食品 の社長でした 。


私が依頼を受けたのはチキンラーメンでした。 ( チキンラーメンは昭和33年 、

カップヌードルもすでに昭和46年に開発されていますが … )


私たちが拠点としたレーという小さな町には、当時、清涼飲料水などは

なく、インダス川の源流から引いた簡易水道の施設が一ヶ所あるだけでした。

この生水を飲もうものなら、現地の人は別として 、下痢は間違いなし。

現地の人たちの一日の仕事はまず 、この簡易水道の水を大きな容器に

入れて 、我が家へ持ち帰ることから始まります。

しかし 、この水を沸騰させるとなると、面倒です。

乾燥した家畜の糞を材料に火を起こすわけですが、酸素が薄いため、

絶えず羊の皮で作ったフイゴで風を送ってやらなくてはいけないのです。

この地方では沸騰させた湯のことを「 ガラン・パニ 」と言って貴重品扱いです。

レーの町中だけ 、夕方六時から二時間だけ、自家発電による電気がきていました。

この間に私たちは撮影機材の充電や持参した携帯用電気湯沸かし器で湯を

つくっておくのですが、高所のため沸点が低い上、電圧が一定しておらず、

せいぜい70度位の ぬるま湯 状態 。

こんなわけで、 チキンラーメンに湯を注いでも、麺はやわらかくならず、

それに、特殊な水質のせいか、ラーメンの味からは程遠く、現地では誰も

食する人はいませんでした 。

私たちも、いざという時はこのチキンラーメンを当てにしていたのですが、

結局 、一週間程の滞在期間中、ミルクティーと蒸したジャガイモで過ごしました。

そのジャガイモもよく茹であがっておらず、妙な味がしました。

私たちも用心していたのですが、鼻血や下痢に見舞われました。


西チベットから帰国後すぐ、私は大阪支社の営業マンに電話で以上のような

現地の状況を細かく報告 。

このまま、包み隠さず安藤百福氏に伝えるよう頼んでおきました。

後日、営業マンの話では、百福氏はこの報告を " やっぱり、そうだったか "

とうなずきながら、静かに聞いていたといいます。

ここで諦めないのが安藤百福氏。

ウイキペディアによると、2002年頃から宇宙食ラーメン 「 スペース ・ラム 」を開発。

スペースシャトル内で給湯可能な70度で調理できるようにするなどの工夫が施されたという。

そして、2005年、「 スペース ・ラム 」は、アメリカが打ち上げた 「 デスカバリー 」

に搭載され、宇宙飛行士 野口総一氏によって食されたそうです。

( もっとも、私が西チベットで体験した報告が直接、宇宙食ラーメンにつながったかどうかは、

確証はありませんが…… )


写真は標高4000m 級のチベット高原 。昭和52年 ( 1977 ) 筆者 撮影 。
即席ラーメンなど受け付けない厳しい環境 。
禿山に所々、うす紫や黄色の山肌が見え、この世とも思えぬ世界 。
私のメモ書きに" チベットの手にとるような流れ星 " 。高所で、空気が
澄み切っているため、星や月が手にとるよう見えました。
















コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

草紙洗(さうしあらひ)といふ名の椿まだ咲かず  佐保子

2019年02月15日 | Weblog


殿様の評を紹介します。

草紙洗。能の演目です。シテは小野小町。ワキは大伴黒主。
二人は歌会で競うことになりました。
勝ち目がないと思った大伴黒主は一計を案じます。
小町の歌を盗み聞きして、歌会に臨みます。
当日、小町が歌を詠むと、黒主は、万葉集からの盗作であるといい
加筆しておいた草紙(万葉集)を示します。

その草紙をじっと見ていた小町。水を張った銀の盥に投げこみます。
すると加筆された文字は水に流れ消えてしまいます。
嘘がばれた黒主は自害しようとしますが、小町は嘘は水に流れたと
寿ぎ、美しい舞いを披露するという一番です。

この句、読み手が想像の羽を広げれば、椿を小野小町とし
「小野小町の舞いは、まだみれぬ」とも解釈できます。
奥深い句として評価。
とまれ、作者が小野小町の一差しを楽しめるのはしばらく先のようです。

           

すばらしい読みですね。
草紙洗、という椿。どんな花なんでしょう?遅足
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

牡丹の芽   麗

2019年02月14日 | Weblog
来週の句会のお題は「牡丹の芽」あるいは「春寒」です。
今年の目標はこれまで使ったことのない季語にチャレンジする決めたので「牡丹の芽」を選びました。
ところが牡丹の花は見たことがありますが、牡丹の芽はどんなものか分からず。
そんな折、郁子さんが徳川園の牡丹の芽の写真を送って来て下さいました。

枝からいきなりろうそくの炎ような赤い芽です。これは葉になるのでしょうか?
頭の中でイメージしていた芽と違いました。
寒風吹きすさぶ中、ちゃんと芽を出し季節の移ろいを感じさせます。

数年前、島根県に旅行したとき牡丹の花で有名な大根島に行きました。お土産にシャクヤクの苗鉢を買って帰りました。数年後の四月下旬に見事な大輪の花を咲かせてくれましたが、それはなんと、牡丹の花でした。
それから毎年咲いていたのですが、3年くらい前から咲かなくなってしまいました。

花が咲いた時だけ愛でるのではなく、ちゃんと芽を出した時から見てあげなくてはいけなかったと反省しています。
また庭に牡丹を植えようと思います。
俳句の方は難しかったけど、写真を見て作りました。郁子さんありがとうございました。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2月句会が近づいてきました。  遅足

2019年02月12日 | Weblog

今回の題詠は「春寒」あるいは「牡丹の芽」です。

♪春は名のみの風の寒さや 谷のうぐいす歌は思えど
「早春賦(そうしゅんふ)」という歌曲。
まさに季語の「春寒」を歌ったものです。
というか、明治になって新しく歌をつくる時、
伝統的な美意識を基礎にして作詞していたからでしょうね。
                           
「春寒」は、暦の上では春になっても、まだ寒いこと。
「余寒(よかん)」と同じ意味です。
余寒が寒さに力点を置くのに対し、春寒は春に想いを置いています。

  春寒や竹の中なるかぐや姫  日野草城

「牡丹の芽」も春の季語。
牡丹は寒さに強く、早春には芽が膨らみます。
朱色の芽からは生命力を感じさせ、春の到来を告げているようです。
  
  人ごゑの遠巻きにして牡丹の芽  岸田稚魚

どちらか一つを選んで下さい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする