575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

決まり文句は・・・・     遅足

2012年11月30日 | Weblog
歌人・小島ゆかりさんの短歌を一日一首、
紹介している「ふらんす堂の短歌日記」今日の歌は、

  ストーブと猫ゐる部屋にすわりたりストーブのごとく猫のごとく

そして、こんなコメントが。

「可及的すみやかに」とか「粛々と」とか、
政治家の決まり文句は発言全体をだめにする。
歌と同じだ。

なるほど!俳句も同じと感心しました。






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母の死のととのってゆく夜の雪   井上弘美

2012年11月29日 | Weblog
句友のIさんから頂いた「井上弘美句集」のなかの一句です。

私の母は「死ぬのも一仕事」と言っていました。
確かに生まれることと、死ぬことは人生の最初と最後の仕事。
「おぎゃー」という産声は、肺呼吸を始めるための大仕事。
もちろん死もそれに負けないほどの大仕事ではと想像しています。

もう数日前から母の危篤状態が続いている。
呼びかけに応える回数も少なくなってきている。
母は確実に死への道を進んでいる。
死に向かって心や体が準備をととのえている・・・、
私は、そんなことを感じました。

この句の「死のととのってゆく」は、どう読んだら良いのでしょうか?
作者は、母の死を看取り、死後のセレモニーが目の前で進行していく。
母の死は、遺されて人々によって整えられていく、その様子を詠った句でしょうか?
あるいは、葬儀も終り、作者が母の死をしずかに受け入れようとしている。
そんな気持ちでしょうか?
多分、そのすべてを「死のととのってゆく」と詠まれたのでしょう。

夜の雪が、作者と母を包みこんで静かに降っています。

                          遅足

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京の町上下左右としぐれけり    遅足

2012年11月28日 | Weblog
京の紅葉を尋ねて旅をしました。
まず朝の散歩をかねて粟田神社へ。
途中、家の前で、箒と塵取りを持って
掃除している姿をあちこちで見かけます。
古都ならではの風景です。

昔の京都の交通の要衝・粟田口にある神社。
急な坂を上りきると全くの静寂の中に。
紅葉にはもう遅いようでしたが、
朝の紅葉は、また美しいものでした。

神社からは北を見ると、紅葉の名所・金戒光明寺も。
帰ろうとすると、時雨が・・・
京には時雨がよく似合うようです。


  


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しぐるるや  鳥野

2012年11月27日 | Weblog
11月は「時雨」の相応ふ月。その11月も残り少なです。

時雨は冬の初めに降る通り雨。「降りみ降らずみ」という趣が、古来、文人に愛され、
季語としても数限りなく登場しています。

その情緒も最近はさっぱり。降れば豪雨、止めば乾燥に注意の気象続きです。

若者に尋ねたところ「知ってるよ、お茶漬けにぴったりだね」の答え。

 朝時雨、夕時雨、小夜時雨、時雨傘、・・・死語になってしまっては
 大変です。
                
   ・ しぐれ来る予感手鏡の薄曇り  鳥野

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軒下の雨をみている京の冬      遅足

2012年11月26日 | Weblog
京都に来ています。昨日は北の鯖街道から車で京へ。
大原のあたりから大変な渋滞でした。
今朝は朝から雨。しかもかなりの強い降り方です。

さて、これからどうしたものか?
傘のいらない観光地は?と雨をみつめています。




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尾張の国に残る芭蕉の足跡    遅足

2012年11月25日 | Weblog
先日、メナード美術館へ行く途中で、小さな石碑を見つけました。
場所は名古屋空港の東側、航空自衛隊の横を走っている道路脇。
小さな神社の境内の一角です。
車を止めて見ると、芭蕉の句碑でした。

  いざともに穂麦(ほむぎ)くらはん草枕

この句、野ざらし紀行の最後の方に出ていました。
琵琶湖から水口へ。有名な句、

  命二つ中にいきたるさくらかな

と、詠まれた後、伊豆の僧と二人、尾張の国へと向かった折の句。
麦秋の折、畠の穂の出た麦でも食べる覚悟で、ともに貧しい旅を続けよう、
という意味だそうです。

解説の立て札によれば、この神社近くの農家で食事をした時に詠まれたとか。

尾張には芭蕉の弟子が多く、足跡もあちこちに残っているようです。
これからも見つけたら紹介して行きたいと思います。
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真鶴の鰤網偲ぶ多米の山     朱露

2012年11月24日 | Weblog
     鰤も鰤網も冬の季語と書き涙だ。
     父の在所の真鶴に疎開した戦中。
     半世紀以上ご無沙汰続きの真鶴。
     もはや浦島太郎だからこのまま。


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11月句会の最終結果です。      遅足

2012年11月23日 | Weblog
冬帽子の句会、10人の参加でした。
立雄さんの句に風が集まりました。


題詠「冬帽子」

①駆け抜けるきりり少女の冬帽子(えみ)智恵・能登・亜子・麗子・朱露
②眠る児の顔半分に冬帽子(晴代)鳥野・童子
③書庫出でて知の火照りあり冬帽子(結宇)智恵・遅足・亜子・静荷・童子
④冬帽の眼までむずかる背ナのやや(静荷)結宇・郁子
⑤陽に干すや去年の匂い冬帽子(朱露)智恵・能登・結宇・すみ・えみ
⑥バスツアーどっと乗り込む冬帽子(立雄)鳥野・能登・狗子・静荷・郁子・麗子・朱露
⑦口笛の少年老いぬ冬帽子(亜子)えみ
⑧人間に倦むや目深き冬帽子(遅足)晴代・亜子・静荷・麗子・立雄
⑨生まれくる子にピンクの冬帽子(麗子)
⑩冬帽子犬猫パンダ手を引かれ(すみ)狗子・郁子
⑪シケ続き白髪頭に冬帽子(能登)すみ・晴代・えみ
⑫冬帽子かぶり直して秘密あり(童子)鳥野・遅足・狗子・すみ・晴代・立雄
⑬じいちゃんの昔語り聴く冬帽子(郁子)童子・立雄
⑭せせらぎにぽっかり浮かぶ冬帽子(智恵)結宇・遅足

自由題    

①櫨の実の豆菓子散らす落ち葉風(能登)えみ・立雄
②手袋のひとつ落ちたる信号待ち(すみ)能登・結宇・遅足・童子
③晩秋や母に会いたくなりにけり(麗子)えみ
④生り年の渋柿仰ぐ日々仰ぐ(静荷)鳥野・遅足・すみ・晴代・郁子
⑤片恋の砕けて釣瓶落しかな(亜子)能登・結宇・狗子・静荷・朱露・立雄
⑥塩分は血圧の敵甘納豆(朱露)鳥野
⑦戒名は雪の光とありにけり(遅足)狗子・亜子・郁子・麗子
⑧落葉掻く昨夜の雨の重さかな(立雄)智恵・遅足・晴代・静荷・郁子・童子・麗子・朱露
⑨飛鳥仏柿に過ぎしは何(なん)の朱ぞ(結宇)亜子
⑩ほとばしりしたたり洗車鰯雲(晴代)智恵・朱露
⑪冷えてきた熱い吐息と根深汁(えみ)すみ
⑫約束の時すぎひとり冬銀河(童子)能登・狗子・すみ・晴代・静荷・麗子・立雄
⑬枯れ蔓(かずら)抜けば末期の高笑い(郁子)智恵・鳥野・亜子・えみ・童子
⑭流れ星言の葉ならず手温もり(智恵)結宇

次回は12月19日(水)午後1時 東鮨  
題詠は「十二月」です。
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顔洗う山も団地も冬の雨      朱露

2012年11月23日 | Weblog
    多米で目立つのは山脈と団地だ。
    団地で目立つのはブラジル人だ。
    彼らはポルトガル語で生活する。
    子供らはバイリンガルで学校へ。


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冬帽子句会   麗

2012年11月22日 | Weblog
今年はまだ暖かく冬帽子をかぶっての参加者は少なかったようですが
久しぶりに童子さんの参加で華やかな句会となりました。

色んな冬帽子が集まりました。
少女の帽子、赤ちゃんの帽子、知性派の帽子、去年の帽子、バスツアーに参加する元気なおばちゃんたちの帽子、その昔口笛を吹くのが上手だった人の帽子、少し人生に疲れた帽子、元気な子供たちの耳当て帽子、漁師の帽子、秘密ありげな帽子、昔語りのじいちゃんの帽子、せせらぎに浮かぶ帽子などなど。

赤ちゃんが生まれる前から人生の晩年まで人は帽子とつきあうのですね。
あだやおろそかにはできません(笑)

トップ賞は立雄さんの

   バスツアーどっと乗り込む冬帽子

でした。にぎやかなバスツアーに乗り込むおばちゃんたちの帽子。色合いはどれも似ていそうです。どっと乗り込むという表現がいいですね。元気なおばちゃんたちをうまくとらえています。

立雄さんは毎日、遅足さんの句集「そして」の句を一句づつ奥様と読み、感想を言い合うのだそうです。
ご病気で句会には参加できなくなってしまった立雄さんですが新たな心境の変化が見られ一同絶賛でした。

自由句でも立雄さんの

   落葉掻く昨夜の雨の重さかな

でやはり高得点。雨の重みを実感できる秀句でした。
継続は力なり。私も遅足師匠の俳句を読み返し精進します。

余談ですが亜子さんの

  口笛の少年老いぬ冬帽子

から最近の子供は口笛を吹かないという現象が判明。「子供たちはなぜ口笛を吹かなくなったのか?」身近にいつも音楽がありイアフォンで常に音楽が聴ける現代っ子にはもはや口笛はいらなくなってしまったようです。一方で口笛コンサートというすばらしい口笛を聞けるコンサートもあるとか。
俳句から時代の移り変わりがわかりこれもまた句会のおもしろさですね。

来月早くも今年最後の忘年句会。お題は「12月」です。口笛を吹きながら作ってみましょう。麗
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「冬帽子」の句が集まりました。    遅足

2012年11月21日 | Weblog
すっかり冬らしくというか、冬ですね。
遠くに雪をかぶった山が見えるようになりました。
冬帽子の出番です。
今回も良い句が集まりました。

題詠「冬帽子」

①駆け抜けるきりり少女の冬帽子
②眠る児の顔半分に冬帽子
③書庫出でて知の火照りあり冬帽子
④冬帽の眼までむずかる背ナのやや
⑤陽に干すや去年の匂い冬帽子
⑥バスツアーどっと乗り込む冬帽子
⑦口笛の少年老いぬ冬帽子
⑧人間に倦むや目深き冬帽子
⑨生まれくる子にピンクの冬帽子
⑩冬帽子犬猫パンダ手を引かれ
⑪シケ続き白髪頭に冬帽子
⑫冬帽子かぶり直して秘密あり
⑬じいちゃんの昔語り聴く冬帽子
⑭せせらぎにぽっかり浮かぶ冬帽子

自由題
   
①櫨の実の豆菓子散らす落ち葉風
②手袋のひとつ落ちたる信号待ち
③晩秋や母に会いたくなりにけり
④生り年の渋柿仰ぐ日々仰ぐ
⑤片恋の砕けて釣瓶落しかな
⑥塩分は血圧の敵甘納豆
⑦戒名は雪の光とありにけり
⑧落葉掻く昨夜の雨の重さかな
⑨飛鳥仏柿に過ぎしは何(なん)の朱ぞ
⑩ほとばしりしたたり洗車鰯雲
⑪冷えてきた熱い吐息と根深汁
⑫約束の時すぎひとり冬銀河
⑬枯れ蔓(かずら)抜けば末期の高笑い
⑭流れ星言の葉ならず手温もり


どの冬帽子が先頭を切ってゴールするのでしょうか?
楽しみです。
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塩引きを炙って   鳥野

2012年11月20日 | Weblog
夕陽の美しい温泉、という呼びかけに誘われて、越後・村上市の「瀬波温泉」を訪れてから
何年になるだろうか。

石油ボーリングの時に発見されたといい、湯量は豊富。日本海を目の前にした風景も
申し分ありません。

村上のもう一つの魅力は、三面(みおもて)川を遡上してくる「鮭」。
古語そのままに、イヨ、ボヤと呼んで親しみ、博物館の「イヨボヤ会館」は、
鮭の生態や文化を学ぶ場です。

秋、大挙して押し寄せる鮭。その村上ながらの保存方法が「塩引き」です。

最盛期のオスを裂いて塩で洗い、日本海の寒風に晒して引き締めます。
腹を割くのに、中鰭の辺りを2センチほど残すのが、秘法。
武士の切腹を嫌った城下町の名残と言います。

塩引きは、焼いてよし、日本酒に浸すもよし。レシピは百余りと聞きました。

  ・ 塩引きを炙って夜を独り汲む  鳥野

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晩秋の多米山麓の「新世界」     朱露

2012年11月19日 | Weblog
   ドボルザークの「新世界」を毎朝聴く。
   私にとっての「新世界」は多米だった、
   と、誰にも分からない涙を流している。
   では「旧世界は何処だ」。言いません。



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なんとなく神よと思う冬の月   池田澄子

2012年11月18日 | Weblog
日頃は神様や仏様とは無縁の生活ですが、
ふっと神様!?、と思う時があります。
人間を超えた存在を感じたりすることも。
そんな感じは、すぐに忘れてしまいますが、
作者は、俳句に掬い上げました。

なんとなく、という上五は、川柳?と
いう意見もありそうですが、
冬の月という季語が俳句を主張しています。

これまで俳句が余り取上げてこなかった
日常生活の心の動きを詠んだ句。
私には、時には難解ですが、刺激的です。

                   遅足




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愛日(あいじつ)や林縁に出て終る丘     三橋敏雄

2012年11月17日 | Weblog
昭和の名句集100冊より。
愛日とは、冬のありがたい太陽のこと。
出典は中国の古典「春秋左伝」「冬日愛すべし、夏日畏るべし」。
夏の熱くていやな太陽は、畏日(いじつ)。

僅か17文字の俳句を豊かにする方法の一つは、
使いこなせるコトバの数を増やすことですが、なかなか増えてくれません。
愛日とは、良い表現ですね。

三橋敏雄さんは1920年に生まれ戦争中は海軍に。
戦後は、遺骨収集に従事していました。
戦争を引き起こした日本社会に鋭い批評眼を持ち続けた人。
2001年に亡くなっています。

 当今(とうぎん)の昔赤子や冬霞

当今は現天皇のこと。この句の場合は昭和天皇を指します。
明治憲法では、国民は、みな「天皇の赤子(せきし)」とされました。
「赤子」に「あかご」と「せきし」の両方の意味を込めていると思います。
冬の霞が、厳しい時間の長さを象徴しているようです。

 会社には大小あれど夏終る

こんな句、初めて読みました。
天皇を頂点とした上下関係が世の中を規定していた時代。
戦後もこんなところに同じ構造がありますよ、と。
この夏終るという季語には明るさも感じられます。

                       遅足
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