稲畑汀子<いなはたていこ> 1931年横浜生
まれ。幼少期は鎌倉で過ごし祖父である高
浜虚子より俳句を学びます。聖心女子の専
攻科を病いにより中退したことを機に、虚
子の秘書のような仕事を始め、俳人として
の道を歩み始めます。
1979年に「ホトトギス」の主宰を父親で俳
人「高濱利尾」<たかはまとしお>をより継
承。1987年、日本伝統俳句協会を設立し会
長に就任。「ホトトギス」の主宰を「稲畑廣
太郎」<いなはたこうたろう>に譲ります。ち
なみに、廣太郎は汀子の息子で虚子の曾孫に
あたります。
汀子は虚子より幼少より俳句を学んでいます。
しかし、虚子の指導法はいつも漠然と褒める
のみ。結局、作句に近道はなく、感性を磨き
自らの力で道を切り開くしかないようです。
汀子は敬虔なカトリック信徒。あくまで私見
ですが、聖書や福音書の影響を受けたと思わ
れる視点が散見される気がします。また、世
界的な自然保護活動にも従事していたことか
ら、日本の自然風土に捉われない俳句を国際
俳句シンポジュウなどで提唱しています。
「神みそな はせたまへとて 風薫る」<汀子>
現在、89歳となった汀子の居宅は、芦屋の平
田町にある「稲畑邸」。75年の時を経た重厚
な洋館で「虚子記念文学館」に隣接していま
す。敗戦後にカトリックの教会となり古い祭
壇が残されています。
「咲き満ちし 花に祈りの 深かりし」<汀子>
「虚子記念文学館」阪神芦屋駅から徒歩15分。
眼前には芦屋の海が望めます。汀子は幼い頃
過ごした鎌倉の海を思い出すのでしょうか。
写真と文<殿>