575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

鶯に 笑み浮かべるや 道祖神

2020年03月31日 | Weblog


「鶯に 笑み浮かべるや 道祖神」

道祖神は石仏。一見擬人法に思われます。しか
し、道祖神の多くは笑みを浮かべた男女の双体
像です。鶯と道祖神の絶妙な組み合わせに拍手。

道祖神は、紀元前の中国で祀られていた道の神
「同祖」と日本の道の神が融合したといわれて
います。道祖神の呼び名は地方によりさまざま。
道陸神<どうろくじん> や障の神<さえのかみ>
が一般的ですが、今昔物語では賽の神<さいの
かみ>という名で登場します。ところで、道祖
神と俳句の関わりといえば奥の細道。序文に記
されています。しかし、芭蕉はあまり道祖神に
興味がなかったのか以降触れていません。

道祖神の目的は、村の子孫繁栄や厄災の侵入防
止といわれています。しかし、外観を見る限り
子孫繁栄の意味合いが強く、男女の握手や抱擁
など夫婦和合を表した像が散見されます。現在、
長野県安曇野には約400体の道祖神があるとい
われ、その多くは男女が笑みを浮かべた素朴な
双体像。

ところで、名古屋の洲崎神社は道祖神を祭神と
しています。須とは砂浜の意。昔、洲崎神社の
周辺は海浜だったようです。洲崎神社の主祭神
は古事記に登場する建速須佐之男命<スサノオ
ノミコト>。江戸時代、洲崎の天王祭は東照宮
の祭と並ぶ二大祭でしたが、現在は例祭と提灯
祭のみ。洲崎神社へは新洲崎橋バス停下車。徒
歩3分。

「立ちよれば 木の下涼し 道祖神」<正岡子規>

遅足氏の代筆にて駄文お許し願います。<殿>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

だしぬけに ポトリと言って 落椿

2020年03月30日 | Weblog


「だしぬけに ポトリと言って 落椿」

散文のような文体。
中七の擬音も是非がわかれるでしょう。
しかし、下五まで詠み切ってからの余韻が心地よく、
落椿の息遣いまで聴こえるような佳句。

下記は中国の孟浩然が詠んだ漢詩「春暁」です。
4つの句は「絶句」8つは「律句」となり「春暁」は
絶句の5文字なので「五言絶句」といいます。

また、漢詩はリズムが出るように同じ響きの言葉を
句の最後に置きます。
「春暁」では「暁」<Gyou>「鳥」<Chou>「少」<Shou>
となり、これを「押韻」<おういん>といいます。
押韻は、俳句に大きな影響を与えたといわれています。

<白文>
春 眠 不 覚 暁
処 処 聞 啼 鳥
夜 来 風 雨 声
花 落 知 多 少

<口語訳>
春の眠りは心地よく、夜が明けたのも気づきません。
あちらこちらから、鳥の囀りが聞こえてきます。
そういえば、昨夜は雨の音がしていました。
いったい、どれほどの花が散ったのでしょうか。

とまれ、古今を問わず、春は眠気を誘うようです。
そのため、仮寝から幻想を詠み込んだ俳句も多く、
春は、白昼夢の季節なのかもしれません。

「落椿 ほどの深淵 白昼夢」 <高澤晶子>


遅足氏の代筆。駄文お許し願います。<殿>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

縄文の 指しなやかに 蕨摘む

2020年03月29日 | Weblog


「縄文の 指しなやかに 蕨摘む」

「摘み草」
現在は山野草の盗採にも抵触します。
また、若年層にとっては古典文学の語句。

作者は縄文時代にタイムトリップ。
そして、3,000年前の描写を詠みあげています。
発想の飛躍の大胆さと精緻な構成に拍手。
縄文人の体温が伝わる巧みな一句。


4月の題詠は「風光る」です。
風光るとは、春風が光り輝くように感じられ
春の喜びや希望を吹く風に託した語句。
ちなみに「光る風」「風かがやく」「光風」
「風眩し」なども含まれます。

*例句
「風光る サンドウィッチの 耳硬く」 富安風生

上記の富安風生は豊川市の出身で友人の曽祖父。
自宅に観光バスが来るそうです。
句碑や遺稿は数多。しかし、友人は俳句は詠まず
紺屋の白袴といった感。


遅足氏の代筆にて駄文お許し願います。<殿>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

春なれどパンデミックの寒き風  静荷

2020年03月28日 | Weblog


寒き風が冬の季語かと思いましたが、
パンデミックという前代未聞の言葉を入れられたのが
今の世界を表現していると思いました、と麗子さん。

寒さが身に沁みますね。下五の「寒き風」。
寒き、ではなく「風〇〇〇」と感覚的な言葉を考えてみましょう。遅足

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東には雪の御嶽野蒜つみ  千香子

2020年03月27日 | Weblog


兼題は春の季語である摘草
この句は「雪の御嶽」とあって
季重なりに抵抗を感じる方もおられるのでは
ないでしょうか。
ですが、雪の御嶽はあくまで背景描写であり、
主になるのは野蒜をつんでいる作者。
春もまだ浅く、吸い込む大気も冷たさが残る。
そんな空気感と野蒜を見つけた喜びが感じられて
選びました。

野蒜はユリ科ネギ属の多年草。
根元がプクッとふくらんで
ラッキョウのようです。
実は私は食べたことがなく、
機会があればと願っています。
クックパッドにも、酢味噌和えとか卵とじなど
レシピが掲載されていました。

上の句の「東には」も好きです。
「東風吹かば・・」というように春は東からやってきます。
御嶽にかぶった雪も、春の日差しを浴びて
眩しいほどにきらきら輝いていたのではないでしょうか。(郁)



コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

摘草で編んだ冠お姫様  幸泉

2020年03月26日 | Weblog


幼い少女がシロツメクサで編んだ花冠を頭に乗せて遊んでいる情景が目に浮かび、懐かしさとともにこの句を選びました。
花の冠を戴いたかわいいお姫さまの誕生です。
クローバーとして有名なシロツメクサ。私も幼い頃、よく四つ葉のクローバー探しました。

今、新型コロナウイルスの影響で密閉空間でない公園やキャンプ場が人気のようです。
やはり子供は屋外で自然に触れて遊ぶのがいいですね。こんな時は野にでましょう。

ちなみに、クローバーは江戸時代ガラス製品がオランダから献上された時、割れないように緩衝材として敷き詰められていたそうです。
花言葉は「約束」です。  麗子

          

作者は、こう語っています。
家から小学校まで4km近くあり、帰り道はよく道草をした。
田には蓮華やタンポポ、シロツメクサなどあり、
摘み取り冠を作って一時間遅れて家に着いた。
母は外に出てまだ帰らない私を待って、
帰ってきた私を見て「なんと可愛いお姫様!」と言ってくれた。
すっかり道草して遅くなって叱られると思っていたので、・・・・
今でも鮮明に摘草の題とともに甦ってきた。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

早春の伊吹山今動かんとす   麗子

2020年03月25日 | Weblog


冬は雪におおわれ静かだったが春になり雪も溶けて、
今にも動き出しそうな様子がわかる,と幸泉さん。

伊吹山は雪も融け、木々も芽吹きの色、まさにこれからが春の到来です。
大きくドッシリした良句です。等さん。

作者は、こう書いています。
コロナウイルスの勢いは止まらず。大阪へは車で行きました。
母が転院しましたが、コロナの影響で面会もできなくなりました。
いずこもストレスです。今月も粛々と。

素晴らしい詩的センスの句です。
山が動いた。社会党の委員長・土井たか子さんの言葉を思い出しました。
与謝野晶子の詩「そぞろごと」の冒頭「山の動く日来たる」をふまえているそうです。
こんな昔のことを思い出したのはわたし遅足です。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

春告げ鳥乾び(カラビ)ザクロを縁枝(ユカリエダ)  結宇

2020年03月25日 | Weblog


春告げ鳥は、鶯(うぐいす)のこと。
梅の花が咲くころに春を告げるように鳴き声が聞こえてくることから。

 鴬の谷よりいづる声なくば春来ることをたれか知らまし

鴬が谷から出てきて鳴く声がもしないのならば、春の来ることを誰が知るだろうか。
誰も知らないだろう。
古今和歌集の大江千里の歌です。

鶯は梅の枝に止まっている絵も描かれてきました。
作者は、このような伝統的な美意識にヒトヒネリを加えます。
ひからびた石榴の枝に取り合わせたのです。

         

ここでクイズです。
春告げ魚。春告げ草。という言い方もあります。
何でしょう?(遅足)




コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

膝をつき草摘む妻や沖に船  等

2020年03月23日 | Weblog


この句は2~3年前、知多半島の師崎の「花広場」に妻と一緒に訪れた時の句である。
「花広場」は海を臨む丘一面に菜の花が咲き”黄色の絨毯”で、彼方に煌めく伊勢湾には、巨大船が往来していた。
腰の痛い妻は膝をついて、”今夜の菜に”と採り放題の菜の花を摘んでいた。
これが句の背景である。しかし私は少し怠けて、中七の「菜の花を摘む妻」では字余りになるからと、
兼題で歳時記にもあった「草摘む」をそのまま頂いてしまった。
これでは「雑草を抜いた」とも取られ兼ねない・・と、気が付いたのは投句の後であった。
歳時記を見ると「菜の花」があり、「花菜」も載っていた。ならばここは「花菜摘む妻」となる。
そうすることで下五の「沖の船」との繋がりも出来、読者にも句の背景が分かって頂けたかと思う。
ただただ手抜きをして、歳時記に「菜の花」を探さなかった私の失敗であり、
写生写生と言って置きながら「菜の花」の存在を見落とした甘さを恥じ入るばかり。

 「膝をつき草摘む妻や沖に船」→「膝をつき花菜摘む妻沖に船」

もう1句。今月の自由題の「吾呼びて水に顔出す池の鯉」の句も失敗だ。
”鯉が水に顔を出すのは当たり前”で、ここも、その折りの情景の描写、写生を効かさなければならなかったと、
反省の句会であった。

 「吾を呼ぶ水に顔出す春の鯉」→「吾を呼ぶガバと口出す春の鯉」(等)?




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

芹摘むと細き流れへ母屈む  佐保子

2020年03月22日 | Weblog


摘み草という私にとっては馴染みのない昔からの風習が
水辺にあるセリ、その細い流れに向かって母が屈むという
光景を描くことで一気に具体性を帯びました。
「細き流れへ」という描写があるだけで屈んだ母の小ささ、
年老いてはかなげな感じも想像して選句しました。

そういえば、
私も母と矢田川の土手で
ヨモギを摘んだことがあったと思い出しました。
草餅をつくってくれたのです。
そのときの母は、何とも頼もしく見えました。
プライスレスで見事に付加価値をつけ
おやつをつくるのですから
さすが、戦中をかいくぐってきただけのことはある。
知多四国のお遍路途中、
野蒜を見つけて道をはずれ、
嬉々として積み草をするお年寄りもしかり
生命力にあふれています。

今の人たちにはちょっと足りないエネルギー、
政府や新型コロナのせいばかりにしていませんか?
        少々反省  郁子









コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

気がつけば暮色の中に草摘めり 亜子

2020年03月21日 | Weblog


春分の日を過ぎて、日暮れも遅くなってきました。
メール句会となり皆様にお目にかかれないのが残念ですが、今は防御の時。安心して参加できるまで無理しないで行きましょう。

私が選句したのは、この亜子さんの句。「暮色」という言葉に魅かれました。
草摘みに没頭していて、時間を忘れ、ふと気がつくと、あたりはすっかり夕暮れに包まれ薄暗くなっている。その情景が目に見えるようでした。幼き日の亜子さんが草を摘んでいた夕暮れの景色でしょうか?

亜子さんはいつもお手紙で投句をされます。どんな風に句を作られるの一度聞いたことがあります。
「真っ白な紙に書いてみるの」とおっしゃられました。丁寧な作風にはいつも頭が下がり、句会での講評も聞き惚れてしまいます。
また亜子さんの感想が聞ける日を楽しみにしています。麗子
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

摘草や 大地に還る 友ありて  殿

2020年03月20日 | Weblog
作者の注釈です。

若菜を摘みます。
大地から去る命。
大地へ還っていく命。
輪廻転生を感じる春。




竹葉さん。  
「大地」という言葉の大きさから
生きてる者はそこから恵みを得、
友もそしていずれ我らもそこへ還ることを
自然の理として受け入れる暖かさを感じました。
という感想。
「大地」という言葉を手掛かりに、
素晴らしい読みです。

紅さんも。
輪廻転生の発想に驚きました。
心情がこもっていると思いました。
作者の心にそった読みです。

       

お医者さんへ行ったら「ナトリウム不足」
そのまま救急外来へ
入院は避けられましたが、通院でダウン。
愚足さんら亡くなった友が急に身近に・・・遅足



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

4月句会の兼題は  遅足  

2020年03月19日 | Weblog

「風光る」です。
殿様からこの句とともに提案がりました。

「鮎汲みが 濡らせし岩や 風光る」碧朗




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3月句会の結果です。   遅足

2020年03月18日 | Weblog
コロナウイルスのためメール句会の2回目。
だんだん要領が分かってきました、とは言えませんが試行錯誤中。
ごらんの結果となりました。

題詠「摘草」
①初めての摘草をする小さな手(狗子)亜子
②摘草やマニキュアの指黒く染む(すみ)能登・竹葉・等
③摘み草や名無しの鳥の夕餉まで(結宇)千香子
④膝をつき草摘む妻や沖に船(等)麗子・千香子・亜子・遅足
⑤気がつけば暮色の中に草摘めり(亜子)麗子・郁子・晴代・狗子・すみ
⑥あの土手へ一足飛びや土筆摘み(竹葉)殿・静荷・紅・遅足
⑦東には雪の御岳野蒜つみ(千香子)郁子・能登・結宇
⑧摘み草を 飾る酢飯の 宴かな(紅)竹葉・殿・幸泉
⑨摘草で編んだ冠お姫様(幸泉)麗子・等
⑩芹摘むと細き流れへ母屈む(佐保子)郁子・静荷
⑪摘草や 大地に還る 友ありて(殿)能登・結宇・竹葉・狗子・佐保子・紅・遅足
⑫図鑑ずしり摘んだ草の名小花の名(晴代)結宇・狗子・亜子・すみ
⑬フクシマの野の蓬摘み何時のこと(能登)千香子・佐保子
⑭摘草の土手の少女の笑い声(麗子)幸泉・晴代
⑮摘草の年寄り土手に生き生きと(郁子)幸泉・等・晴代・静荷・佐保子
⑯縄文の指しなやかに蕨摘む(遅足)殿・紅
⑰摘草を思えどカラスのエンドウばかり(静荷)すみ

自由題
①癖のある文字の葉書や春深し(晴代)郁子・結宇・幸泉
②春寒し猫いっぴきの通学路(千香子)結宇・晴代・狗子・佐保子・すみ・遅足
③吾呼びて水に顔出す春の鯉(等)殿・佐保子・紅
④風花を飛びつつ鵯の啄めり(佐保子)千香子
⑤だしぬけにポトリと言って落椿(狗子)郁子・殿・幸泉・亜子・すみ・紅
⑥早春の伊吹山今動かんとす(麗子)竹葉・幸泉・等・晴代・遅足
⑦春の宵暗くて深い河渡る(能登)麗子
⑧ウイルス禍洗う手より春流れゆく(竹葉)能登・静荷
⑨鶯に 笑み浮かべるや 道祖神(紅)殿・狗子・佐保子
⑩春の音コロナに消され寂しかな(幸泉)
⑪駆け足で落ちる点滴春夕焼け(遅足)結宇・竹葉・狗子・千香子
⑫ミシン止め 眠気誘<いざな>う 初音かな(殿)紅
⑬眼下には不穏な地上春愁(すみ)
⑭春告げ鳥乾び(カラビ)ザクロを縁枝(ユカリエダ)(結宇)遅足
⑮白ブルーピンク混じりてモネの春(郁子)麗子・能登・等・静荷・亜子
⑯草萌えや転び上手の襁褓(むつき)の子(亜子)能登・竹葉・等・晴代・千香子・静荷・すみ
⑰春なれどパンデミックの寒き風(静荷)麗子・郁子・亜子

次回は4月15日(水)です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

毎年よ彼岸の入りに寒いのは  子規

2020年03月17日 | Weblog
明治二十六年の春のお彼岸。
俳人の正岡子規が、母に向かってこうつぶやいた。
「彼岸というのに、寒いね」

母の答えは、
「毎年よ、彼岸の入りに寒いのは」
それがそのまま俳句になったものです。

今日は彼岸の入り。寒いです。遅足


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする