題詠「風船」
①濡れ縁に毒消し売りと紙風船(朱露)亜・立・鳥
②小さな手ゆれて風船放れけり(狗)遅
③風船やまた下の名で呼べるなら(童子)遅・狗・麗・静・亜・郁
④思索する風船ひとり青き空(郁子)朱・麗
⑤嬉々として風船回す車椅子(立雄)
⑥風船を買わなくなる日青が散る(麗子)童・晴・郁
⑦風船を引き止めてゐる梢かな(亜子)朱・狗・晴・静・郁・立
⑧ゴム風船ねじる数ごとひろがる輪(晴代)愚
⑨あくる朝大事な風船しぼみけり(能登)
⑩ワンパンチ幼子空振り紙風船(愚足)朱
⑪抽出しに折り目正しき紙風船(静荷)童・鳥・遅・狗・亜・愚・立
⑫風船をひとつ自由にして帰る(遅足)童・鳥・晴・麗・静・愚
自由題
①鳥曇抜き菜両手にあまるほど(晴代)遅・静・郁・愚
②掘割りの鯉のうのうと花の下(立雄)童・鳥・亜
③その不幸買いますという花の闇(静荷)童・朱・遅・狗・麗
④一本のチューリップ咲く空き屋かな(麗子)鳥・立
⑤使者として桜の中を帰りけり(遅足)狗・麗・亜・郁・愚
⑥描きかけの絵に入り日さし桜降る(郁子)晴・立
⑦ホームレス雀卓囲み花吹雪(能登)朱・静・郁・立
⑧蹲の龍居眠りて花筏(愚足)遅・狗・静
⑨春嵐つり鐘少し揺れてをり(狗)童・鳥・晴・亜
⑩身のうちに湧き立つものや花吹雪(亜子)朱・晴・麗・愚
⑪ダンロップシューズ暁天の朧月(朱露)
今回の句会では、麗子さんのおっしゃるとおり風船十色。
さまざまな風船が詠まれました。
懐かしい紙風船。
富山の薬屋さんが濡れ縁で家の人と世間話。
大切な情報源でもあった薬屋さん、そのお土産の紙風船。
子供にとっても眩しい町のシンボルだったのでしょう。
その懐かしい紙風船を買って孫と遊ぶ姿も。
夜店で買った大切な風船。
ふっと気を許すと、手を離れて、空へ。
大切に持ち帰った風船が、翌朝には、しぼんで部屋の隅っこに。
自由で破裂しやすい風船は、美しいはかなさから、青春の象徴にも。
風船に己のこころを託しもします。
そして風船を買わなくなる日がやってきます・・・
現代の風船も詠まれています。
風船のいのちの儚さをもてあそぶところに
大道芸人の芸が成り立っています。
風船が捻られていくたびに、見物の子供たちは半身を引いていきます。
お年寄りのリハビリのなかにも風船は姿を見せました。
手から手へ渡る風船は、人と人の心をつないでいくようです。
最高点は静荷さん。
抽出しに折り目正しき紙風船
紙風船がひとつの時代を表現しているようでした。
(写真は金沢美術館の作品のなかから見た空です。)