575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

甘藍の鈴を鳴らして地震(ない)わたる  遅足

2023年06月30日 | Weblog

この句が今ひとつ読み切れなくてという方もいらっしゃいましたが

気になる一句と言えそうです。

 容子さん: 甘藍を大きな鈴に見立てたのでしょうか。カラスよけの鈴?なのでしょうか。わからないですが引かれます。 地震の多い昨今です。

他に能登さん、佐保子さん、私もいただきました。

抗えない荒ぶる自然を感じさせる地震の不安もありますが

玉のキャベツを「鈴」と見たて、大地の震動に鳴っているかのようだとは神さまの視点にも思えますね。

 

  

先日、偶然見たテレビで、奈良県の天河神社を知りました。

ここは神様に呼ばれないとたどり着けないと言われる不思議な神社だそうで、有名なパワースポットなのだそうですね。

拝殿に吊るされた鈴は「五十鈴」(いすず)と呼ばれる神器で、3つの鈴を三角に結んだイメージの独特の形をしています。少し縄文の香りもします。

そこを訪れた打楽器奏者、平井景さんの言葉が印象的でした。

「鈴の音は、心地よい違和感。」「鈴の鳴る瞬間、何かチェンジする予感がある。しかも良い方向に」と。。とても共感を覚えました。

実は私。鈴とリボンが好きすぎて捨てられぬ人です。ま、捨てられぬものはそれだけではないので片付かない家なのですが・・(笑)

世の中がチェンジする瞬間。パラレルワールドへの道が開く瞬間。

チェンジを告げる神様の指パッチンは、神秘的な鈴の音が聞こえるのではないかと思わせました。

 

6月30日。今日で今年もちょうど半分です。

シャーンという鈴の音とともに折り返す。

気の滅入ることの多い昨今。少し良い方向へ向かうことを願いますが 神頼みでは駄目ですね。 郁子

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高原の空気孕んだキャベツかな  麗子

2023年06月29日 | Weblog

キャベツはヨーロッパ原産で明治末より一般に普及したそうです。春キャベツは軟らかくて巻きもゆるいので、長野から来た高原キャベツの「空気孕んだ」という表現にしてみました。

竹葉さん:嬬恋村でしょうか。。高原の空気孕んだが美味しそうでいいですね。

容子さん:温暖な地域だけではなく、高原キャベツもありました。夏でもひんやりした空気を、葉の内に。

晴代さん:空気を孕むと思いがけない視点。

 

ありがとうございました。

そんなキャベツも値上がりしました。

   キャベツ剥ぐていねいに剥ぐ高騰下  晴代

何もかも高騰する物価。キャベツの一枚も無駄にできないと思い丁寧に剥ぐ様子が見えました。

須美さん:「剥ぐ丁寧に剥ぐ」が高騰をより一層感じさせている。

郁子さん:買い物している人ならではの句。キャベツの芯も甘くて美味しいですよね。

亜子さん:野菜が値上がりしている。時事句であり実感がある。

         ★★★

目には見えないキャベツの中の空気と、値上がりという目に見える実感の句。二つをご紹介しました。さて、また長雨で野菜が値上がるかな?キャベツ大好きなんですけど。。。麗子

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ふわり添ふ千切りキャベツ上機嫌  竹葉

2023年06月23日 | Weblog

(キャベツはどうしても料理しか思い浮かべられず、お粗末な句になりました) 

 と投句された竹葉さんですが、何をおっしゃいますか!!

高得点の秀句です。メインのお料理をひきたて、お皿の上のキャベツが上機嫌でいるのだなと思うと食卓全体を優しい気持ちで満たしてくれます。

童子さん: 上機嫌が素敵♡

千香子さん: 南極越冬隊の 人気1位のメニューが千切りキャベツということを聞いて キャベツの千切りで 作ろうと思ったのですが 。エビフライのそばに キャベツが あり 子供が 上機嫌で という 様子がうかび 選びました  。

麗子さん: キャベツが上機嫌とは!上五の「ふわり添ふ」の擬人化も面白い。

亜子さん: 千切りキャベツを切る時の楽しさ。メインデッシュの横に盛ってふわっとできた時の嬉しい気持ち。「上機嫌」という言葉が俳句の世界ではあまり出会わないので新鮮だった。

 

その亜子さんは、今回の題詠「キャベツ」の提案者です。「意外に難しかったわね」と軽やかに笑われたそうです。

その亜子さんの句

 刻まれて小さき幸積むキャベツかな  亜子

まな板に積みあがる千切りキャベツの山をご覧になって厨(くりや)仕事の中の小さな幸せを感じたのだとか。

童子さん: 幸積むが素敵♡

晴代さん: 団らんの食卓 幸積むがよい 

「ふわり添ふ」も「幸積む」も作者の優しい眼差しがキャベツの上に注がれています。

 

 千切りに踊るキャベツの狂想曲  郁子

泉さん: 楽しそう。

童子さん: 狂想曲が素敵♡

 

私は、ランチ時のお店の厨房か大慌てでつくる夕餉の支度を思い浮かべました。運動会さながらの高速切りからこんな句もできました。

   千切りはクシコスポスト舞うキャベツ

ストレス解消でひたすら刻むという友人もいました。

切り方で味は変わりそうです。かなり尖った味になるかも。郁子

 

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

渥美路や甘藍うねり波くだく  能登

2023年06月22日 | Weblog

キャベツ句会いかがでしたでしょうか?キャベツが夏の季語で、甘藍という言葉も初めて知りました。身近な野菜ですが俳句にするのは難しかったという声が多かったです。

そんな中見事にトップ賞に輝いたのは、能登さんと童子さんでした。お二人とも甘藍という言葉を使い、大きな景を詠まれました。まず能登さんの句。

渥美半島の名産はキャベツ。キャベツ畑のうねりと太平洋の波の一体化がいいと思いました。

容子さん:キャベツ畑の迫力ですね。外海ならではの激しい波にも負けない風景。

晴代さん:畝を海に見立てて面白い。

須美さん:「うねり波くだく」がキャベツ畑の壮観な様子をよく表している。

泉さん:渥美半島をドライブした時に見たキャベツ畑に感動したのを思い出した。

 

キャベツ畑と海。そしてこちら立山連峰の剣岳です。

     甘藍の畝いく重にも剣岳  童子

富山出身の童子さん。これは実景なのでしょう。こういう句がさらっとできるのはすばらしいですね。

竹葉さん:キャベツ畑の景色、安曇野からは無理だし何処かしら。。。剣岳がいいです。

千香子さん:高原地帯に青々としたキャベツ畑 雄大な景色が浮かびました。

泉さん:高原野菜と山々が浮かぶ。

亜子さん:◎の句。 甘藍の畝が高原のふもとにあるのか。大きな景を詠まれたのが見事。剣岳とキャベツの組み合わせの妙。

 

    ★★★

 

トップ賞二句はどちらも壮観でした。私は一面のキャベツ畑を見たことはないのですが、お二人の俳句から幾重にも重なる波のようなキャベツ畑が目に浮かびました。

明日は視線を手元に写した句をご紹介する予定です。麗子

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

キャベツ句会 結果発表!

2023年06月21日 | Weblog

2023年6月題詠「キャベツ」

  1. 渥美路や甘藍うねり波くだく (能登) 容子 晴代 須美 麗子 遅足 泉
  2. 甘藍の鈴を鳴らして地震(ない)わたる (遅足)  能登 容子 郁子 佐保子
  3. 刻まれて小さき幸積むキャベツかな (亜子)  童子 晴代 
  4. ふわり添ふ千切りキャベツ上機嫌 (竹葉)  童子 千香子 麗子 亜子 郁子
  5. 千切りに踊るキャベツの狂想曲 (郁子)  童子 泉
  6. 房総の初恋キャベツ歯切れよし (佐保子)  竹葉 能登 千香子 遅足
  7. 高原の空気孕んだキャベツかな (麗子)  晴代 竹葉 容子 佐保子
  8. 深みどりキャベツ外葉のままレジへ (千香子)  須美
  9. 甘藍や虫食い後の蝶の舞い (泉)
  10. 腹いっぱいおかわり自由キャベツ盛る (須美)
  11. キャベツ剥ぐていねいに剥ぐ高騰下 (晴代)  須美 麗子 亜子 郁子
  12. 甘藍の畝いく重にも剱岳 (童子)  竹葉 千香子 亜子 遅足 佐保子 泉
  13. 甘藍のシャキシャキクタクタ変化自在 (容子)  能登

 

自由題

  1. 遠山のいよいよ遠く梅雨に入る (亜子)  童子 竹葉 容子 晴代 千香子 麗子 遅足
  2. 梅雨寒や逝きしことしる一年後 (晴代)  竹葉 須美 佐保子 泉
  3. 梅雨の空数独パズル解けぬまま (千香子)  郁子
  4. 姫シャラを散らし荒梅雨通りすぐ (佐保子)  童子 須美 麗子 泉
  5. 十薬のきらわれてなほ美しき (能登)  千香子 遅足 泉
  6. 梅実る君亡き後の我の道 (竹葉)  容子 千香子
  7. 青梅の揺らし落ちるは数知れず (須美)  晴代
  8. 紫陽花の下うずくまる迷い猫 (郁子)  能登
  9. 小さき田や早苗は少し曲がりおり (麗子)  童子 能登 晴代 亜子 郁子 遅足 佐保子
  10. はかなさやあすは無い白沙羅の花 (泉)  亜子
  11. 夕立や逢はぬと決めて猫と居り (童子)  竹葉 能登 容子 須美 麗子 郁子 佐保子
  12. 昇格の叶わぬ 梅雨をやり過ごし (容子)  亜子

 

 6月句会の結果はこのようになりました。お気に入りの句は見つかりましたか?

題詠は  能登さん、童子さん

自由題は  亜子さん、麗子さん、童子さん

童子さんは題詠・自由ともにトップ賞でした。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

キャベツ句会の投句が揃いました。

2023年06月20日 | Weblog

投句が揃いました。どのキャベツが人気でしょうか?明日の結果をお楽しみに!

 

題詠「キャベツ」

①      渥美路や甘藍うねり波くだく 

②      甘藍の鈴を鳴らして地震(ない)わたる 

③      刻まれて小さき幸積むキャベツかな 

④      ふわり添ふ千切りキャベツ上機嫌 

⑤      千切りに踊るキャベツの狂想曲 

⑥      房総の初恋キャベツ歯切れよし 

⑦      高原の空気孕んだキャベツかな 

⑧      深みどりキャベツ外葉のままレジへ 

⑨      甘藍や虫食い後の蝶の舞い 

⑩      腹いっぱいおかわり自由キャベツ盛る 

⑪      キャベツ剥ぐていねいに剥ぐ高騰下 

⑫      甘藍の畝いく重にも剱岳 

⑬  甘藍のシャキシャキクタクタ変化自在

 

 

 自由題

①      遠山のいよいよ遠く梅雨に入る 

②      梅雨寒や逝きしことしる一年後 

③      梅雨の空数独パズル解けぬまま 

④      姫シャラを散らし荒梅雨通りすぐ 

⑤      十薬のきらわれてなほ美しき 

⑥      梅実る君亡き後の我の道 

⑦      青梅の揺らし落ちるは数知れず 

⑧      紫陽花の下うずくまる迷い猫 

⑨      小さき田や早苗は少し曲がりおり 

⑩      はかなさやあすは無い白沙羅の花 

⑪      夕立や逢はぬと決めて猫と居り 

⑫  昇格の叶わぬ 梅雨をやり過ごし

         

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

登美子も見し若狭小浜の漁火の向こうの闇に原発ドーム 竹中敬一

2023年06月18日 | Weblog

今朝の中日新聞 中日歌壇に載った竹中氏の一首です。

このブログにも何度も投稿してくださり、最近どうされていらっしゃるかなと思っておりました。

その思いが通じたかのような新聞掲載。嬉しい限りです!

遅足さん、佐保子さんから教えていただきました。

 

以下 選者である小島ゆかり先生の評です。

 「 故郷の小浜で病床を過ごした山川登美子。一首の展開にはっとさせられる。」

 

やさしい眼差しの中に鋭くひそむジャーナリストの眼は健在ですね。

小浜は私も帰省の際に通ります。原発に事あれば、夫の故郷福知山も多大な被害を受けることは

意外に知られていません。

いろいろな難題山積みのまま、日々流されていくやるせなさを感じます。

竹中さん。また、短歌でも俳句でも当ブログにお寄せください。お待ちしています。   郁子

 

 

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

こしあぶらこごみたらの芽天つゆと 千香子

2023年06月16日 | Weblog

栄養価が高く身体によいとされる植物の芽が勢ぞろいです。リズムもよいですね。

いそいそと食卓を用意する様子が浮かんできます。

 

泉さん: 春の山菜天ぷら,美味しそう!

 

今年、こしあぶらを初めていただきました。山菜の女王と言われているのだそうですね。 ほろ苦さが身体に染み渡るようでした。

「私は断然、塩派です」と言うのは麗子さん。「この句、下五が天つゆでなく(塩でいく)ならとっていました。」 だそうです。(笑)

 

  あじさいの水をあつめてまず一花  遅足 

 

竹葉さん: ぼちぼち紫陽花の花が白っぽいつぼの中に色付いてきたのが一つふたつでてきましたが、それを「水を集めて」とは梅雨の近い感じがしていいと思いました

童子さん、佐保子さん、私もいただきました。まず一花という表現がとても新鮮でした。

投句の頃はちらほらだった紫陽花が今満開です。あれから花数を増やし色を変え静かにまどろみながら雨の雫を受け止めています。

 

  

今月のお題「キャベツ」句も揃ってきました。

気持ちが沈みがちなこの時期.ですが、今日も良い発見がありますように。

季節は確実に進んでいます。 郁子

 

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山若葉赤橙黄緑青藍紫  能登

2023年06月15日 | Weblog

全て漢字のこの句は、色とりどりの春の山の景色そのまま。お見事です。

山若葉のあとは「せきとうおうりょくせいらんし」と読みます。太陽光をプリズムで分解した色=虹の色のことだそうです。

千香子さん:若葉のころのみどりは実に多様で虹のように美しい。漢字だけで最初は読み方もわからずとまどいました。

亜子さん:漢字だけの俳句はなかなか難しい。その意欲に一票を投じました。

 

    山藤に覆いつくされ小山どこ  泉

こちらは藤色に染まる小山です。

いつも見ている小さな山が藤色になっている。その発見を詠まれました。下五の「小山どこ」がもうひとひねりあった方がよかったかも知れませんが、そこがいいという意見もありました。

竹葉さん:山藤ははっと気がつくと目が届かないくらい木の上の方までつるを延ばしています。「小山どこ」というほどの藤を見たことはありませんが、辺り一面藤だらけの感じがよく出てると思います。

須美さん:「小山どこ」が効いている。見てみたくなる。

    ★★★

毎日眺めている山の変化をよく捉えた二句だったと思います。季節は移り「山笑う」から「山滴る」。いよいよ夏山到来ですね。麗子

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

母の日や野良着ばかりの桐箪笥  童子

2023年06月09日 | Weblog

五月句会には母の句が二句寄せられました。

 牡丹散る母の面影よみがえる  麗子

3年前の麗子さんの句  

 白牡丹はらりと落ちて母の逝く  を思い出しました。

介護、闘病の様子をきいていただけに切なく、その時はほぼ全員がとったのを覚えています。

大事にされていた牡丹に今もお母さまが生きていらっしゃるのでしょう。

千香子さん: 実家から 持ってきて 植えた 花が咲くたびに 母のことを思い浮かべます  やはり お母さんの 好きだったボタンなのでしょうか 。

亜子さん: 朝ドラの「らんまん」でも牡丹が出て来た。らんまん効果の句(笑)

牡丹は華やかで品格のある花。そこから母の面影を感じられる作者は幸せだと思う。 

泉さん: 華やかなお母さんだったのでしょうね。

 

そしてもう一句は自由題で堂々トップの表題の句です。

 母の日や野良着ばかりの桐箪笥  童子

 

以下絶賛のコメントです。

竹葉さん: お母さんへの感謝を「野良着ばかり」で表すとは素晴らしいと思いました。

能登さん: お母さんの人柄、笑顔が浮かんできます。

晴代さん: 外出もあまりせず働くことを苦にせず1~2代前の母親たちの姿がうかびます。

千香子さん: 桐ダンスは 晴れ着、訪問着 など を連想しますが いつの間にか 働き者のお母さんの野良着に変わっていた と 読み取れ 野良着と桐ダンスの対比が面白いと思いました 

須美さん: 働き者のお母様の表現が素晴らしいと思います。

容子さん: 「野良着」と「桐箪笥」の対比が良いと思います。 

亜子さん: 桐ダンスには上等の絹の着物が入っているイメージがあるが、働き者のお母さんが野良仕事をする時の服が入っているという意外性。

麗子さん: 桐箪笥には美しい着物と思いきやそれが野良着ばかりとは。。。母の日に桐箪笥の引き出しを開けてみると働き者のお母さまの姿がそこにあったのでしょう。せつなくも思い出あふれる母の日

遅足さんはどちらの母の句もとられました。

 

    

野良着には畑を耕す土のイメージがあります。

作者は兼題「燕」でも土の匂いを感じる秀句を詠まれました。

育った土地柄か環境なのか。上手く言えませんがこういう有機的な句はなかなか詠めず憧れます。

昨日の容子さんとともに新たに加わってくださったお二人には大いに刺激をいただけそうです。  郁子

 

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

喉元に哀しみのいる五月かな  容子

2023年06月08日 | Weblog

ほぼ二十年ぶりに俳句を作ったという容子さん。575の会に復帰してくださってありがとうございます。

お仕事が忙しく俳句とはご無沙汰だったそうですが、なんのなんの。この自由題の句には度肝を抜かれました。

5月という一年で一番いい季節だからこそ人には言えない哀しみというのがあるのでしょう。「喉元にいる哀しみ」とは想像するだに辛いですが、それがこの世にはあるのもまた事実。それでもなんとか踏ん張って皆生きていくしかありません。

作者の容子さんに句の背景を伺ってみました。すると、

「この春、実家にいる妹が体調を崩し、仕事を休んでいます。

シングルマザーで要介護の母の面倒も見ながら働いている彼女からは、

この10年ばかり厳しい言葉しか受けておらず、苦しい思いです。

言いたいことを飲み込む気持ちを表しました。

まずは少しでも元気になってもらいたく、最近、家の掃除を手伝ったり、母の相手をしています。

そんなことから自然と句を作りたくなりました。」ということでした。

私と同世代の容子さん。喉元にいる哀しみは介護にまつわるものでした。

いただいた選句のコメントをご紹介します。

郁子さん:喉元にじゅっと水っぽいものがこみ上げてくる子どものときの感覚を思い出させられた。小さいときは思い切り声をあげて泣けばいいが、大人になると押し込めてその感覚とともに日々を過ごすのですね。

能登さん:喉元に哀しみのいる この表現に脱帽。

童子さん、遅足さんも採られています。

          ★★★

1997年に出した575の会の句文集「馬耳薫風」の中に容子さんの俳句が見つかりました。

   なぜだろう降りかかる雪のあたたかき  

 また、2001年の晩餐句集2の中には、こんな句も。

   春時間恋の時計のねじを巻き

   埋められぬ隔たりあるや送り梅雨

 

どれもいいですね~。25年前にこんな素敵な俳句を作っておられた容子さん。安田屋さんでの夜の句会、懐かしいです。半世紀の沈黙を破ってこれからどんな俳句を作ってくださるか、とても楽しみです。麗子

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

泥粒を咥えつばめの喉赤し  童子

2023年06月02日 | Weblog

タキシードを着たようにおしゃれな燕、高速で飛び高貴なほどに胸をはる燕。

そういうスマートな姿でなく、巣作りのために地道に泥を運ぶつばめの喉元に作者の目が寄せられます。

 

晴代さん: 泥を集めるのも大変でしょうね。

容子さん: ディテイルの描写が魅力的です

亜子さん: 燕は泥や小枝など色んなものを咥えて来て巣を作る。そのリアルな姿が感じられた。ただ口の中が赤いのは外からも見えるのかそれを聞いてみたい。

他に遅足さん、私もいただきました。

アッというまに通り過ぎるのでわかりづらいかもしれませんが

燕を実際の写真で確認すると、嘴から下の喉元が赤茶色をしていました。

そういえば、ヤクルトスワローズのマスコット「つば九郎」は、ほっぺから赤かったですね。

 

「それにしても「泥粒」という言葉はなかなか出ませんよ!」と麗子さんも称賛します。

確かにお椀状の巣は、何度も往復する中で一粒一粒、泥粒を口から出して固めたもの。

精魂こめて作った巣に宝物のような卵を産むのですね。こんなに小さな生き物でも命の尊さを知っているのだと教えられます。

喉元の赤は燕のひたむきさの象徴ともとれそうです。

   

 

 雨もよい尾羽を二本みせ燕  晴代

 この句も燕の一部をクローズアップしています。先がふたつに割れているスーツを燕尾服とはよく名付けたものです。

 梅雨にはいりました。しかも台風まで。

 二本の尾羽からしずくを落としながら子育てに奮闘している燕にエールを送りたいです。 郁子

 

 

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

はしる影つばめの雛の声の降る  遅足

2023年06月01日 | Weblog

燕の親子の姿を影と声で切り取った遅足さんの秀句。

すっと黒い影がよぎりはっと上を向くと雛の声がする。この句のポイントは下五の「声の降る」だと思いました。

皆さんのコメントです。

竹葉さん:親燕の速さを「はしる影」とは素晴らしいし、親と言わなくても雛が察知して餌をおねだりする声で表すとは本当に感心しました。

能登さん:走る影 声の降る すばらしい。

晴代さん:③の廃校の句とセットのような二句ですね。

千香子さん:影がさっと通り過ぎたと思ったら ツバメの雛の声が 聞こえてきた 降るという表現が 面白いと思いました。

 

さて、「燕」は春の季語。「燕の子」は夏の季語です。

    燕の子口はひし形命咲く  郁子

こちらは巣の中の燕の子の口をクローズアップした句です。「口はひし形」とずばっと言い切ったところがすばらしいと思いました。「命咲く」という表現が評価が分かれるポイントと思いましたが、作者の郁子さん曰く、「雛が大きく口を開けている様子が花のアレンジフラワーのように見えた」ので敢えて「命咲く」という表現にしたそうです。

千香子さん:ひし形の口をして、というのは 当たり前のような気がしたのですが、咲くというので 菱の花 を連想し、 花が咲くように、命が生まれたと表現しているように思って、美しさ、 新鮮さを感じました。

須美さん:口はひし形命咲くが素敵。

亜子さん:◎の句。燕の子の口が「ひし形」であることを発見し、はっきり言い切ったところがよい。また「命咲く」という表現が燕の子の生命力を感じさせる。

童子さん:燕の大きく開けた口を『命咲く』と表されたところが大好きです♡

      ★★★

今年はまだ燕の子の姿を見ていませんが、あのひし形の黄色の口の中が見えるようなまさに生命力あふれた夏の句だと思いました。かわいい雛の姿早くみたいんな~。麗子

 

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする