西行の風景(桑子敏雄・著)を読んでみました。
日本人の生死観に大きな影響を与えた人のようです。
願わくは花の下にて春死なん
その如月の望月のころ
桜の花の咲く空間で、満月の光のさす時間に、死にたい。
多くの日本人の願望の表現ともなっている歌。
空間と時間がはっきりと示されて揺るぎない。
西行が大和言葉によって作り上げた風景。
なぜ、この風景が日本人の心の風景の一つになったのか?
時代は武士の台頭する乱世の始まる頃、
西行は、そんな時代に生まれた。
貴族の世が大きく揺らぎ始めたばかりでなく、
末世と意識され、思想、文化でも転換期。
西行は、この危機を乗り越えるために
日本古来の神々の世界と、外来の仏教を統一したいという
大きな願いを立てた。
しかも仏教という深い普遍的な真理を、
大和言葉という、ローカルな浅い言葉によって表現するという。
西行にとって、歌は真理(仏教)の表現。
願わくは・・・の歌。
桜は日本の神道。
月は仏教を、それぞれ意味している。
西行はローカルな大和言葉の歌によって、
真理を表現することに挑戦、成功したのである。
そして、その願い通りに死を迎えた。
そう理解されたから、西行は当時の人々に多大な影響を与え、
それは今日の我々にまで及んでいる。
ただ、仏教は男女差別の考えを持っていたのか、
女性には、男性ほどには大きな影響を与えなかったような気もします。