575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

片陰に置いてけぼりの記憶かな    郁子

2015年08月31日 | Weblog
ここで待っているんですよ、と言われたのに帰ってこない母。
迷子になってしまった経験を思いだしたのでしょうか。

作者の意図は、それとは違うそうです。
炎天下、一時避難所のような片蔭。
そこへ逃げ込んで、気持ちを切りかえ、また炎天に。
その時に人は片蔭に自分のなにかを置いていくのでは?
置いてけぼりにされたのは、もうひとりの私? (遅足)

  片蔭に入りてたましい置き忘れ  滝口ろくや

           

応答の一日一句

  憂いもなく独り寝酒の夜長かな     孝

  だぶだぶのパジャマに慣れし夜長かな  亜子

  
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片蔭や人待ちに揺る日傘居り   結宇

2015年08月30日 | Weblog
片蔭。日傘。ふたつの季語のある句です。
この場合は片蔭に重点があります。

日傘をさした人が、片蔭のなかで人を待っています。
とっくに約束の時間はすぎているのでしょうか?
時に炎天のなかに出たりして・・・
日傘の揺れは心の揺れを表しているようです。

日傘居りは、日傘の人が居り、の略ですが、
日傘あり、の方が良いのでは、との指摘。
その通りだと思いました。

句全体に言葉があふれて、少し窮屈です。

  片蔭や揺れて日傘は人を待つ

こうするとスムースにはなりますが、
イライラ感は消えてしまいますね。
片陰のどこを待ち合わせの目印にするのか?

  片蔭の丸石と決め待合はす  東野昭子

         

応答の一日一句

  膨れたる布団取り込む秋の暮   孝

  子の遊ぶ声遠ざかる秋の暮    亜子

先日干した布団。秋雨で・・・湿っぽい。(遅足)

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ビル群の片陰を行く就活生   麗子

2015年08月29日 | Weblog
今年から大学生の就活は8月解禁に。
正確には、企業の面接が始まるのが8月。
黒のスーツに身をつつんだ就活生たちがビルの街に。
ビル群と言いますから、大企業の会社訪問でしょうね。
平成の夏の一齣を切り取った句です。

片蔭を拾って次の面接に急ぐ就活生の皆さん。
サラリーマンとして負け組の私がいうのもなんですが、
失敗しても余り落胆しないように。
人生いたるところに青山あり、です。
ただ一つ条件があります。
それは長生きをすることです。(遅足)

  片蔭を大股に行き振り向かず  畔柳道子

           

応答の一日一句

  秋めいて日記楷書で記しけり   孝

  秋めくや少女の会釈大人びて   亜子
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片蔭の一つだに無き上田城  等

2015年08月28日 | Weblog
時は天下分け目の関ヶ原の合戦直前。
徳川秀忠率いる東軍の主力は、信州・上田城を囲みます。
守るのは真田親子。戦術に長けた真田軍は東軍の足止めに成功。
西軍に貢献しました。
しかし関ヶ原で西軍は負けてしまいます。
真田親子は城を追われて・・・。

今は、櫓や城門の一部が残っているだけの上田城。
炎天下、片蔭のひとつもありません。
歴史の持っている厳しい一面を感じさせる句です。

  片蔭といふもののなし基地の街  沢木欣一

            

応答の一日一句

  ごまだれの冷やし中華や夏惜しむ  孝

  老いの肩組んで寮歌の夏惜しむ   亜子

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片蔭に出会いました。    麗

2015年08月27日 | Weblog
先日の句会の前は完全に夏ばて状態で、頭の中で作った俳句になってしまいました。
ここへ来てようやく体調も戻り(手術から無事に一年経過しました)出かける気力も出てきました。

久しぶりに訪れた馬籠宿。石畳を登っていくと、まさに片蔭参上!(笑)
風鈴の涼やかな音とともに、肩蔭には人慣れした猫がゴロンと横たわり。片蔭の風が気持ちよかったです。

江戸時代、参勤交代などで中仙道の宿場町として栄えた馬籠宿。
幕末には皇女和宮様も通られたのかな?

かつては長野県木曽郡山口村でしたが、今は岐阜県中津川市に編入されています。
以前来た時より駐車場も整備され、新しいお店も入っていました。
(それでも3時過ぎに閉店しているところが多いのにびっくり!あまり商売っ気がありません。)



    片蔭に風鈴の音馬籠宿

    片蔭に猫横たわる馬籠宿

    片陰の馬籠の宿にポスト立つ

    片陰にひっそりとある道祖神

色々できました。秋にはみんなで吟行などしたいですね。
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片蔭のなかより監視カメラの眼  遅足

2015年08月26日 | Weblog
いつの間にか全国に普及した防犯カメラ。
ケータイ電話(今はスマホか?)とともに日常生活のなかに。
もう意識することなく馴染んでいます。

今回の寝屋川の事件でも、カメラの映像が犯人逮捕に役だちました。
ニュースでは、事件の他、事故の映像も放映されます。
カメラに監視されるのが当たり前の世の中。
プライバシーの侵害を心配する声もありますが・・・

防犯カメラのなかった時代、人の眼がひかっていました。

  片蔭の家の奥なる眼に刺さる  西東三鬼

          

応答の一日一句

  相向きてゆるりのけぞる西瓜かな    孝

  裂け目より割れんばかりの西瓜かな   亜子

台風は日本海へ。今朝は雨は降ったり止んだり。
庭になにやら赤いモノが・・・
じっと見たらキツネノカミソリが一輪。秋ですね。
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片陰の窓よりピアノの音こぼる   佐保子

2015年08月25日 | Weblog
日射しを避けて入った片陰。こぼれるように聞こえたきたピアノの音。
ちょっとほっとした作者の気持ちが伝わってきます。
エアコンの効いた部屋で、少女が練習をしているのでしょうか。
曲はクラシックかな・・・

先日、名古屋の宗次ホールのランチタイム・コンサートに。
空席はあるだろうと、高をくくって行ったら満席。
キャンセル待ちで、辛うじて入場できました。
理由は、入場券が1000円という安さにもあるようです。
宗次ホールでは、毎日のようにコンサートが。
名古屋ではあり得ないと思っていましたが・・・奇跡のようです。

  片蔭に入るや琴弾く母の声   永田耕衣

          

応答の一日一句

  踊り子の跳ねてニッポンど真ん中      孝

  踊る輪の母に付きゆく襁褓(むつき)の子  亜子

強い台風が九州に上陸。まもなく日本海へ。警戒が必要です。

                      (遅足)

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片蔭や山陽道の写真館    立雄

2015年08月24日 | Weblog
作者の生まれ故郷は尾道市。家は山陽道に面していました。
少し離れたところに写真館が。
戦争が激しくなっていった頃、親族そろって写真館へ。
一枚の写真を撮り、数日後、揃って尾道駅へ。
列車に乗った叔父さんに、写真を渡すためです。

兵隊さんを一杯乗せた列車は真夜中に到着。
停車時間はあっと言う間に過ぎ、列車は出発。
写真を手渡すことは出来なかったそうです。
ただただ、眠たかった、と作者。

  片蔭の町に古りゆく写真館 稲村

戦後五十年の時に、出征兵士を取材しましたが、
必ず写真が遺されていたことを思いだしました。(遅足)

            

応答の一日一句

  デパートのマネキン淡き秋を著る  孝

  マネキンの解体されて秋暑し    亜子
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片蔭を園児の列に譲りけり  亜子

2015年08月23日 | Weblog
お揃いの黄色い帽子の園児の列がやってきます。
片蔭には十分な広さがありません。思わず蔭を譲りました。

「けり」は、気付いていなかったことに気付くことを示す助動詞。
片陰を譲ったのだな、と過去の出来事を詠んだ句になります。
作者は、譲った時は何も意識していなかったのでしょう。
「片蔭」と言う言葉が、記憶から引きだした景ではないでしょうか。

こちらは目の前のことを詠んでいます。

  片蔭を主に譲り盲導犬  岡田智彦

          

応答の一日一句

  秋澄みて古刹の大屋根黒々と  孝

  橋多き町に十年秋澄めり    亜子

空気も澄んで、ようやく秋らしい朝晩ですね。(遅足)

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片蔭や多分二人はあの二人  静荷

2015年08月22日 | Weblog
日の当たりところにいた作者が、ふと片蔭に目をやると・・・
あれ?あの男女の二人は・・・見覚えがある。
多分、二人はあの二人だ。
中七、下五と、心のうごくままに言葉に。
それが句に生気を与えているようです。
また、二人はあの二人、というリフレインも効果的です。
作者は、この二人にちょっとヤキモチを焼いているのかも。

  片蔭に寄り添っている二人かな   渡辺美晴

二人は男女と読みましたが、それ以外、親子などと読むことも。

                          (遅足)
                    

応答の一日一句

  風渡るコスモスの海波やさし   孝

  背嚢に般若心経秋桜       亜子


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8月句会の最終結果です。    遅足

2015年08月21日 | Weblog
10人が出席。賑やかな句会となりました。

題詠「片蔭」
①片蔭や多分二人はあの二人(静荷)能登・等・郁子・すみ
②片蔭を園児の列に譲りけり(亜子)能登・狗子・静荷・晴代・すみ・立雄
③片蔭や山陽道の写真館(立雄)佐保子・遅足
④片蔭の窓よりピアノの音こぼる(佐保子)
⑤片蔭のなかより監視カメラの眼(遅足)等・静荷・亜子・立雄
⑥片蔭の一つだに無き上田城(等)佐保子・静荷
⑦ビル群の片陰を行く就活生(麗子)狗子・郁子・晴代・立雄
⑧片蔭や人待ちに揺る日傘居り(結宇)麗子
⑨片陰に置いてけぼりの記憶かな(郁子)佐保子・等・結宇・亜子・遅足
⑩図書館を出れば片陰伸びており(晴代)能登・遅足・結宇・狗子・亜子・郁子・麗子・すみ
⑪耐えかねて鳩も逃げ込む片陰り(能登)
⑫片陰や縦一列に身を潜め(すみ)結宇・晴代・麗子
⑬夏陰の中は戦場トリトリトリ(狗子)

自由題  
①森を吹くサイダー瓶の中の風(等)能登・遅足
②傷跡にそっと手をやる晩夏かな(麗子)結宇・亜子・晴代・すみ
③禅堂や夏陽直下(ジキゲ)の瓦射(シャ)す(結宇)
④蝉開眼(かいげん)今黎明の鬨の声(郁子)佐保子・等・狗子
⑤紺朝顔つつましやかに暮らしおり(晴代)能登・等・郁子・麗子・すみ
⑥鰯雲誰がために引く昇降舵(能登)遅足
⑦暑気あたり母の食卓おままごと(すみ)結宇・麗子
⑧法師蝉己が命愛しめり(静荷)
⑨馬もまた息絶えて浮き原爆忌(亜子)佐保子・等・静荷・立雄
⑩昨日より鏡のなかにいるらしい(遅足)狗子・郁子
⑪秋立つや暮れて葉擦の音高し(佐保子)遅足・静荷・亜子・晴代・立雄
⑫国敗れあの日天まで赤とんぼ(立雄)能登・結宇・狗子・静荷・麗子・すみ
⑬老兵のポツリと語る敗戦忌(狗子)佐保子・亜子・郁子・晴代・立雄

次回は9月16日(水)午後1時  東鮨。
題詠は「夜長」です。

今回の題詠は、新しい風を感じさせる句が生れませんでした。
まだまだ、力が足らないことを痛感しました。
次回、頑張りましょう。

          

応答の一日一句

  秋草や石の男根峠道   孝

  抱擁の野仏隠す秋の草  亜子






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片蔭句会    麗

2015年08月20日 | Weblog
曇天で片陰のない昨日、片蔭句会が行われました。夏ばて気味か、男性陣4名がいずれもお寿司のハーフセットを注文。女性の食欲が頼もしいですね。


さて、片蔭という季語があることすら知らず。季語の場合は「片蔭」で、くさかんむりのある蔭という字。炎暑の日中、道の片側にのみ、樹木や家の日陰が」できること。
くさかんむりのない「片陰」は日光の当たらない日陰を指すようです。知らなかった!

句会でも字が混同していました。
そして、片陰のイメージに引きずられ類想句が多くなる難しいお題でした。
石田さんの言われる新しい発見はなかなか大変です。

では一言講評です。

1,どういう二人か気になる二人。小説の世界?
2,園児に道を譲る大人の優しさ。そんな日中、子供を歩かせるなという声もあり(笑)
3,懐かしい昭和の風景。幼少期を尾道で過ごした作者ならではの山陽道の片蔭
4,どんなピアノ曲でしょう?クラシックでしょうか?
5,世相句。時代を表すスリル感があります。
6,上田城に吟行に。来年の大河の舞台。片蔭さえない守りの城。秀忠のお話まで。
7,真夏の就職活動。内定はまだなく肩を落として日陰を行く。「片陰を行く」に一考を。
8,片蔭で日傘が揺れています。「日傘居り」に一考を。
9,どこかノスタルジックなぼんやりとした記憶。作者もぼんやりしながら片陰に記憶をおいていったよう。
10,図書館で過ごした時間の経過をうまく切り取りトップ賞。ちなみに選んだ図書は「失われた時間」プルーストでした!
11,「耐えかねて」と「逃げ込む」がやや重複?
12、いつもは元気な小学生も縦一列に日陰を歩いていました。「身を潜め」に一考を。
13,暗号「トラトラトラ」をもじった?

来月はちょっと早い気もしますが「夜長」と決まりました。どんな斬新な俳句が集まるか、こうご期待!
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8月句会の投句が集まりました。    遅足

2015年08月19日 | Weblog
8月句会の題詠は「片蔭」です。
13人から様々な片蔭の句が集まりました。

題詠「片蔭」
①片蔭や多分二人はあの二人
②片蔭を園児の列に譲りけり
③片蔭や山陽道の写真館
④片蔭の窓よりピアノの音こぼる
⑤片蔭のなかより監視カメラの眼
⑥片蔭の一つだに無き上田城
⑦ビル群の片陰を行く就活生
⑧片蔭や人待ちに揺る日傘居り
⑨片陰に置いてけぼりの記憶かな
⑩図書館を出れば片陰伸びており
⑪耐えかねて鳩も逃げ込む片陰り
⑫片陰や縦一列に身を潜め
⑬夏陰の中は戦場トリトリトリ

自由題  
①森を吹くサイダー瓶の中の風
②傷跡にそっと手をやる晩夏かな
③禅堂や夏陽直下(ジキゲ)の瓦射(シャ)す
④蝉開眼(かいげん)今黎明の鬨の声
⑤紺朝顔つつましやかに暮らしおり
⑥鰯雲誰がために引く昇降舵
⑦暑気あたり母の食卓おままごと
⑧法師蝉己が命愛しめり
⑨馬もまた息絶えて浮き原爆忌
⑩昨日より鏡のなかにいるらしい
⑪秋立つや暮れて葉擦の音高し
⑫国敗れあの日天まで赤とんぼ
⑬老兵のポツリと語る敗戦忌

       

応答の一日一句

  ベランダに半円だけの銀河かな        孝

  北に来て幣舞橋(ぬさまいばし)の銀河かな  亜子

   




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泉の底に一本の〇〇夏了る

2015年08月18日 | Weblog
飯島晴子さんの句です。〇〇は漢字で一字です。
なにが入るでしょうか?

私には難解な句の多い作者。
著書のなかで目指すところをこう記しています。

一句が究極に目指すのは、
句の表に書かれている言葉通りではないがしかし、
その言葉以外の言葉では表現できない時空が、
その裏に、奥に、確かに在るーということである。
表と裏とは微妙に、しかし全く違う。
一句がこういう二重構造になっていなければ
俳句であることの甲斐がない。

写生を越えたものを追及する作者。
〇〇は匙でした。

 泉の底に一本の匙夏了る  飯島晴子

一見、意味の通りやすいこの句。
匙は食事の道具。日々の象徴でしょうか。
どんな二重構造になっているのでしょう?(遅足)

         

応答の一日一句

  置物のやうに鎮座すメロンかな   孝

  新婚のドアそっと押すメロン提げ  亜子

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英霊も忠魂もただ露の石   山田弘子

2015年08月17日 | Weblog
作者は、兵庫県出身の俳人。高浜年尾、稲畑汀子に師事。
2010年に亡くなった方。

人は想いを永遠に残したいと、石を刻みます。
明治以降、大日本帝国のために数多くの命が捧げられました。
護国の礎となった英霊。天皇に忠義を尽くした人々。
その功績を忘れないために石に名を刻んだのです。
そして、切れを入れて、ただ露の石、と詠みました。
中七から下五への切れ。読者はどう埋めて読むのか?

英霊も忠魂も・・、しかし、今は、ただ露に濡れた石、だが・・・

と作者の想いを後に残して読んでみました。
露という季語が伝統をいかして見事に詠まれた句です。(遅足)

                          

応答の一日一句

  夜明けまで飲んで語りし敗戦忌   孝

  十歳でありし少女の敗戦忌     亜子
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