575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

喪の衣服ととのえてゆく夜は長し  遅足

2015年09月28日 | Weblog
簡素化もあって男女とも喪服は洋服になりました。
それでも、黒いネクタイはどこだった?数珠は?
などとチェックしながら準備をします。
あれこれ故人のことを思いながら・・・

十年ほど前、親戚のお通夜が終わり、外へ。
見上げるとまん丸のお月様が出ていました。
心にあたたかなものが・・・
今夜は十六夜の月です。

          

応答の一日一句  

  十六夜やあぶな絵の書読みにけり   孝

  十六夜やマニュキュアの紅乾く間に  亜子

この後、立待月

  立待の月を背にして妻帰る      孝

  君遅し立待月の伝言板        亜子

さらに居待月

  ゆっくりとワイン酌みけり居待月   孝

  満席の街角カフェー居待月      亜子

そして臥待月

  待ちわびて寝入りしままの臥待月   孝

  枕より抱くものなし寝待月      亜子

4日ほどの旅にでます。目指すは北。
どんな旅になるのかな?       (遅足)


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長き夜や天井の染み動き出す    能登

2015年09月27日 | Weblog
子供の頃に病気でもして一人寝てると、そんな想像もしましたよね。
推理小説ばりの想像を楽しんで、と結宇さん。

お酒に弱い郁子さん。
酔って寝転ぶと、天井が動いていたことを思いだしたそうです。
シミが世界地図に見えたという方も。

布団に入っても寝付けない秋の夜。天井のシミが動いたようです。
目を凝らすと何も変わってはいません。しかし今度はたしかに動いた・・・
天井、とは「天」。
天に映し出された心の動き。時代の不安を映し出しているのかも。

            

応答の一日一句

  名月や今日も芋煮の五つ六つ   孝

  老眼に月二つ見ゆ良夜かな    亜子

今日は中秋の名月。旧暦の八月十五日です。
今は曇っていますが、夜には満月が顔を見せてくれるでしょうか。

日本では月の模様は兎の餅つき。
南ヨーロッパでは大きな鋏をもった蟹。
アラビアではライオン。
お国ぶりというか、民族ぶりがありますね。
ちょっと想定外なのが、東ヨーロッパ。
白黒が逆転し、白い部分が女性の横顔とか。
今夜じっくりと観察してみます。(遅足)
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頁繰り時代をのぼる夜長かな    晴代

2015年09月26日 | Weblog
何のページを繰っているのでしょうか?
作者からはヒントになる情報は与えられていません。
アルバム?歴史の本?日記?家計簿?
みな正解。読み手が何を想像するのか?
なぞかけの句だそうです。

この夜長、あなたなら何の頁を繰りますか?(遅足)

          

応答の一日一句

  台風に各駅停車うろたえず   孝

  台風に骨献上し破れ傘     亜子
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泣いてゐる点滴パック夜長妻   等

2015年09月25日 | Weblog
泣いているのはもちろん奥様でしょうが、
点滴も涙をこぼすような長い病室の夜。
身につまされます、と麗子さん。

点滴のパックは液がすくなくなると「キュッ」と音を立てることが。
それを泣いている、と詠みました。
亜子さんはご主人が入院。付き添ったことがあるとのこと。
夜長はひときわ長く感じらたことでしょうね。

臨終の時に点滴を行うのは普通にみられる光景です。
私の母の時も点滴をしました。
手の施しようのなくなった時、家族からせめて点滴をという声も。
しかし自然に臨終を迎えようとしている人には酷のことにも。
枯れるように死を迎える人に栄養を補給するのは
苦しみを長くすることにつながるとか・・・。

             

応答の一日一句。

  秋風やおみくじ結ぶ寺の道   孝

  露天湯の手桶の香り秋の風   亜子

秋分の日も過ぎ、夜の時間が長くなってきます。
気温が低く風邪気味の方も。
季節の変わり目、要注意です。(遅足)

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七十年戦後史たどる夜長かな    亜子

2015年09月24日 | Weblog

特に考えさせられることの多い今年の夜長、と麗子さん。

七十年という時間の長さ。
明治維新から敗戦までの時間とほぼ同じ。
この七十年、日本人は平和な時代を享受してきました。
戦争への道を歩もうとする人たちも、この70年間、力を蓄えてきました。
ここに来て日本人は大きな選択を迫られています。
作者は、戦後史をそのまま生きた世代。人生がそのまま戦後史。
芭蕉の句をもじって

  さまざまのこと思いだす夜長かな

秋の夜長、時間はいくらあっても足らない・・・

          

応答の一日一句

  束の間の歓喜に似たり流れ星   孝

  星流る曜変天目茶碗かな     亜子

散歩をすれば、彼岸花が咲き、金木犀が匂う。
柿が赤くなる。秋ですね。(遅足)

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夜長さえ友と語るに短くて   すみ

2015年09月23日 | Weblog
中学・高校からの友人。
日頃、会っているのですが、秋の夜長、思う存分おしゃべりを。
楽しい時間は、あっという間に過ぎ去ってしまいます。
「長」と「短」という対照的な文字が句に効果を。
「さえ」が少し気になるという感想も。

この句、男女で感じ方に違いがあるようです。
昼間は気ぜわしくておしゃべりも思う存分には楽しめないと、女性たち。
夜長は、気兼ねなく楽しめる時間だそうです。
一方、男は用件だけすめば話しはオシマイです。
しかし齢をとると病気自慢など、男同士おしゃべりに。

時間という不思議を、分かりやすく詠んだ句です。

            

応答の一日一句

  秋彼岸傘を被りし観音像   孝

  美しき袱紗捌きや秋彼岸   亜子

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亡き人の句を読み返す夜長酒    麗子

2015年09月22日 | Weblog
亡き人は、近時亡くなられた方と想像します。 
きっとお酒が好きだったのでしょうねと、結宇さん。

朱露さんの句を読み返しています。
句は人なり。さまざまなエピソードが蘇ってきます。
朱露さんはお酒が好きでした。
麗子さんも最近、たしなむようになったとか。

一昔前なら、この句の作者は男性と考えられたでしょうね。
酒好きだった友。酒を飲みながら振り返る友の人生。
そして我が人生・・・
境涯句に男女の別はありませんね。

           

応答の一日一句

  言葉なく男二人の月見酒     孝

  銭湯の煙突はるか月見酒     亜子

昨日、敬老の日のお祝いを配りました。
私の町内は75歳以上の方が30%ほど。
全国平均よりかなり高齢社会です。(遅足)

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うかうかとテレビは愉し夜は長し    静荷

2015年09月21日 | Weblog
テレビが面白いので、ついつい時を忘れて見てしまった。
ちょっと時間の無駄使いをしたかな?
いやいや秋の夜は長い。そんなに生き急ぐこともない。
テレビは愉し夜は長し、と「は」のリフレインが楽しい効果をあげています。

自分をちょっと突き放してみている句です。人生の達人の境地でしょうか。
心のままを自在に詠む。静荷さんの達した境地です。

           

応答の一日一句

  取りあえず髭を当たりぬ敬老日   孝

  朝湯などして籠りゐる敬老日    亜子

今日は敬老の日、町内のお年寄りにささやかなプレゼントを。
去年はいただけましたが、今年は経費節減。
配る方にまわります。                遅足

   


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涙して「一茶」聴きいる夜長かな    立雄

2015年09月20日 | Weblog
藤沢周平の「一茶」を聴いています。読書の好きだった立雄さん。
視力を失っても、読書好きは変りません。音のライブラリーを楽しんでいます。
齢のせいか、涙もろくなったようで、聴きながらついつい涙ぐんでしまいます。
夜長という季語に人生の秋を感じます。

句会では、一茶といえばユーモアとかペーソスの人というイメージ。
初句の「涙して」に違和感を、という声も。
最初は

  周平の「一茶」聴きいる夜長さかな

こちらの方が、読者の想像力に訴えるかもしれません。

  一茶にも涙の夜長噺あり

と、すると少し作者の意図にちかづくかも・・・  

人間が母親のお腹のなかにいる時、目はみえません。
しかし耳はもう、ちゃんと母の鼓動を聴いているそうです。
また死の直前まで聞こえているとか。
読書は、まだまだ千年の歴史もありません。
耳からの情報が一番深く心に届くのかもしれませんね。(遅足)

            

応答の一日一句

  新米の膳に新たな塗りの箸   孝

  新米の炊き上がる頃夫帰る   亜子




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9月句会の最終結果です。

2015年09月19日 | Weblog
秋の句会。6人の参加。
ちょっと寂しい感じでしたが、中身は濃い会でした。
朱露さんの追悼句会といった空気。ご覧の結果となりました。

題詠「夜長」
①涙して「一茶」聴きいる夜長かな(立雄)
②うかうかとテレビは愉し夜は長し(静荷)遅足
③亡き人の句を読み返す夜長酒(麗子)結宇・能登・等・郁子・亜子・すみ・立雄
④夜長さえ友と語るに短くて(すみ)静荷・亜子・晴代
⑤七十年戦後史たどる夜長かな(亜子)佐保子・静荷・麗子
⑥泣いてゐる点滴パック夜長妻(等)麗子・すみ
⑦頁繰り時代をのぼる夜長かな(晴代)佐保子
⑧長き夜や天井の染み動き出す(能登)結宇・等・郁子・亜子・すみ・晴代・遅足・立雄
⑨喪の衣服ととのえてゆく夜は長し(遅足)
⑩反故の句も反芻の中(ウチ)夜長かな(結宇)郁子・晴代
⑪北国に一人旅寝の夜長かな(佐保子)能登・等・立雄
⑫黒猫のひそり水飲む夜長し(郁子)結宇・能登・佐保子・静荷・麗子・遅足

自由題
①木戸を開け旅立つ朝の花野かな(能登)
②庭下駄の鼻緒の湿り今朝の秋(亜子)結宇・能登・佐保子・麗子・郁子・すみ・立雄
③内定の知らせようやく草は実に(静荷)晴代・立雄
④蔵王向け茂吉碑に散る百日紅(結宇)
⑤待ってました今年も無事に栗きんとん(すみ)郁子・亜子・遅足
⑥窓を開け風の軽さよ野分晴(麗子)佐保子・等・晴代・遅足・立雄
⑦露草の露の言葉をこぼしける(遅足)佐保子・静荷・麗子・すみ
⑧秋風に身浸し「さて」と問ふてみる(郁子)能登・すみ・晴代
⑨こおろぎに籠の鈴虫遠慮せり(立雄)
⑩「藪医者」の落語でしめる秋の葬(佐保子)結宇・静荷・麗子・等・亜子
⑪花合歓や白鳳仏のしなう指(晴代)結宇・静荷・等・郁子・遅足
⑫覗くまじ風の盆の夜笠のうち(等)能登・亜子

次回は10月21日(水)午後1時   東鮨
題詠は「薄(すすき)」です。

           

応答の一日一句

  書き終えし追悼の文秋の雨      孝

  下駄の緒の千切れしままに秋の雨   亜子

今日から5連休という方も。
お天気にも恵まれて秋を楽しんで下さい。  遅足

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新聞に「強行」の文字露白し     遅足

2015年09月18日 | Weblog
いわゆる安保法案が参議院の委員会で採決。
今日、本会議で可決成立の見通しです。

これまで日本国民の多くは、自国の安全保障について無関心でした。

安部さんの言うようにアメリカと軍事同盟を強化するべきか?
(そうなって、イギリスと同じようにアメリカに対等になれるか、心配ですが・・・)
あるいは、中国との対話の道を選ぶのか?

日本の進むべき安全保障はどうあるべきか?
来年の参院選まで考えてみる時間はあると思います。

安部さんの国会答弁は評判がよくありません。
戦争を平和といいくるめているような感じです。

憲法を変えてから法案を提出するのが民主主義のルールです。
それを無視できないので、丁寧に説明すればするほどオカシクなっていきました。


          /

応答の一日一句

  織りなすは緋鯉真鯉の万華鏡     孝

  餌持たぬわれに寄りくる緋鯉かな   亜子

  

           



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秋雨前線    麗

2015年09月17日 | Weblog
秋雨前線の低気圧からか頭痛が収まらず。残念ながら昨日の句会は欠席させて頂きました。
いろんな夜長の句が集まったようで朱露さんをしのぶ句も多く参加したかったのに残念でした。

私が選句したのは

七十年戦後史たどる夜長かな
泣いている点滴パック夜長妻
黒猫のひそり水飲む夜長し

の三句。黒猫の句は、長き夜と黒猫の静かなたたずまいがよくマッチしていると思いました。猫を飼っている方でないとなかなかこのような句は生まれませんね。

私の今の心境は

    秋雨や恨めし食後バッファリン   麗

こんな感じです。失礼しました。
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9月句会の投句が集まりました。    遅足

2015年09月16日 | Weblog
12人の投句です。夜長の題詠。
時間ということを考えされられました。


題詠「夜長」

①涙して「一茶」聴きいる夜長かな
②うかうかとテレビは愉し夜は長し
③亡き人の句を読み返す夜長酒
④夜長さえ友と語るに短くて
⑤七十年戦後史たどる夜長かな
⑥泣いてゐる点滴パック夜長妻
⑦頁繰り時代をのぼる夜長かな
⑧長き夜や天井の染み動き出す
⑨喪の衣服ととのえてゆく夜は長し
⑩反故の句も反芻の中(ウチ)夜長かな
⑪北国に一人旅寝の夜長かな
⑫黒猫のひそり水飲む夜長し

自由題

①木戸を開け旅立つ朝の花野かな
②庭下駄の鼻緒の湿り今朝の秋
③内定の知らせようやく草は実に
④蔵王向け茂吉碑に散る百日紅
⑤待ってました今年も無事に栗きんとん
⑥窓を開け風の軽さよ野分晴
⑦露草の露の言葉をこぼしける
⑧秋風に身浸し「さて」と問ふてみる
⑨こおろぎに籠の鈴虫遠慮せり
⑩「藪医者」の落語でしめる秋の葬
⑪花合歓や白鳳仏のしなう指
⑫覗くまじ風の盆の夜笠のうち

     

応答の一日一句

  待宵の旧友訪ねし帰り道  孝

  待宵や母の残せし歌の束  亜子
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言葉の置き換え      遅足

2015年09月15日 | Weblog
「俳句は技術である」(平井洋城・著)を読んでいたら
「言葉の置き換え・レトリック」という項目がありました。
例として

   欠伸せる眼中に入る秋の山

   欠伸せる口中に入る秋の山   高浜虚子

荻原先生の受け売りで「言葉をずらす」と言うのも同じ意味です。
なぜ、こうした技術が有効なのでしょう?

出来事を伝えるために、日常に使っている言葉を使わざるを得ません。

  葉桜のなかの無数の葉がさわぐ

これでは説明であり、俳句にはなりません。
つまり、その場に立ち会っている臨場感が感じられません。
ライブ感といったら良いでしょうか。

先生は、また、言葉を見つけ出す前の状態が大切とも。
出来事の現場に立ち会っているように、という意味でしょうか。
有名な句は、こうなっています。

   葉桜のなかの無数の空さわぐ   篠原梵

言葉をずらす、という技術の目的は、ライブ感を獲得することにあるのでしょうか。

             

応答の一日一句

  夕映えの合掌造り柿落葉     孝

  渋柿や餓鬼大将の泣きっ面    亜子

    



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色なくて匂い残れり    遅足

2015年09月14日 | Weblog
能の「井筒」を観てきました。世阿弥・作の夢幻能。
死んだ女の霊が、この世に現れて・・・という作品。

旅の僧が、在原寺の旧跡を訪ねると、女が登場。
シテの井筒の女です。女は業平の物語をして消えます。

僧がうつらうつらしていると・・・シテが、業平の形見の冠と直衣を着て現れます。
恋の舞のあと、女が井筒を覗くと・・・

 昔男の冠、直衣は女ともみえず男なりけり。業平の面影。

井筒に映っているは恋しい男の面影。クライマックスは急転して終局へ。
女の姿は、しぼんだ花の色艶もなく、匂いだけが残るように朧に。
在原寺の鐘の音とともに夜は明けていく・・・僧は夢から醒めたのです。

面影は消えても匂いは残る・・・「色なくて匂い残れり」というフレーズが好きです。
視覚では消えても、嗅覚にははっきりと残っている。
いつか俳句に使ってみたいフレーズです。

古今集の序で、紀貫之が業平の歌をこう評しています。

その心あまりて詞(ことば)足らず、しぼめる花の色なくて匂い残れるがごとし、と。

世阿弥はこのフレーズを見事に借用したのです。

            

応答の一日一句

  残したる腸(わた)山ほどの秋刀魚かな   孝

  先細の箸のよろしき秋刀魚喰ぶ       亜子
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